6ー4
僕がオレンジジュースを持って医務室に入ると、聞き覚えのある医療機器のけたたましい音が響いていた。
その音は、心室細動を起こしている時のものだ。
「戻って来て、ナナミ。あなたはまだ若いのよっ」
ドクターの声が必死で、僕の身体はそこで止まってうまく足を前に出せないでいた。
ほんの数分、来るのが早かったら、渚さんはオレンジジュースを飲むことができただろうか?
いや、難しかったかもしれない。
「ナナミ!! しっかりしなさいっ」
ドクターの声が機械音を消すように響いた。
そして――。
ピッという再生の音がする。
「戻った? ナナミ、ナイスファイトだよ」
その声に僕の目から大量の涙がこぼれた。
生きてる。
これが、命の音。
僕の胸は高鳴った。もしかしたら、このオレンジジュースを飲んでもらえるかもしれない、そんな予感に包まれている。
だけど現実は、渚さんはそのまま深い眠りについてしまった。
仕方がないので、持ってきたオレンジジュースをドクターに渡すと礼を言われた。
「本当はナナミに飲ませたかったのよね?」
軽くからかわれたけれど、今はそれどころじゃない。
「渚さん、よくないんですか?」
「ん〜。なんて言うのかな」
ドクターはオレンジジュースを一口飲んでから。
「今は本当に危なかった。骨にヒビが入ったことも、元々の病気もまじえて、あまりよくない現状だよね」
「……僕、ゼロナナに乗ってもいいのかを渚さんに聞きに来たんです」
「そっか。アキラがそれを望むなら、彼女はいいって言うと思うよ。だけど――」
じゃあ彼女はどうやって地球に戻るの? と問われて返事ができなかった。
「まさか、ゼロナナに乗せて地球に運ぶつもりなんですか?」
「その予定なのよ。でも一方では即戦力となるべき改造も始まっているの。どっちになるかわからないけど、今彼女を07に乗せても体力が持たないんじゃないかな?」
じゃあ、渚さんはこのままこの艦で息をするしかないのか?
「僕は元気になれたのに、なんだか不平等ですね」
「本当ね。ねぇ、アキラ。あなた、ナナミになにかあっても07に乗る勇気ある?」
すぐには答えられなかった。それは、渚さんが死んでしまった場合を考えろということか?
「それしか道がないのなら、乗ります」
「ふぅ〜ん? 少しは強くなれたみたいね」
そうして僕は、シューティングブースでの成果をドクターに話していた。
だけど、頭の中では、渚さんが死にかけていた状況がぐるぐると渦巻いていた。
つづく




