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新延命装置タケノコ  作者: 空羽 叶
第四章 新田 晶
28/38

6ー4

 僕がオレンジジュースを持って医務室に入ると、聞き覚えのある医療機器のけたたましい音が響いていた。


 その音は、心室細動を起こしている時のものだ。


「戻って来て、ナナミ。あなたはまだ若いのよっ」


 ドクターの声が必死で、僕の身体はそこで止まってうまく足を前に出せないでいた。


 ほんの数分、来るのが早かったら、渚さんはオレンジジュースを飲むことができただろうか?


 いや、難しかったかもしれない。


「ナナミ!! しっかりしなさいっ」


 ドクターの声が機械音を消すように響いた。


 そして――。


 ピッという再生の音がする。


「戻った? ナナミ、ナイスファイトだよ」


 その声に僕の目から大量の涙がこぼれた。


 生きてる。


 これが、命の音。


 僕の胸は高鳴った。もしかしたら、このオレンジジュースを飲んでもらえるかもしれない、そんな予感に包まれている。


 だけど現実は、渚さんはそのまま深い眠りについてしまった。


 仕方がないので、持ってきたオレンジジュースをドクターに渡すと礼を言われた。


「本当はナナミに飲ませたかったのよね?」


 軽くからかわれたけれど、今はそれどころじゃない。


「渚さん、よくないんですか?」

「ん〜。なんて言うのかな」


 ドクターはオレンジジュースを一口飲んでから。


「今は本当に危なかった。骨にヒビが入ったことも、元々の病気もまじえて、あまりよくない現状だよね」

「……僕、ゼロナナに乗ってもいいのかを渚さんに聞きに来たんです」

「そっか。アキラがそれを望むなら、彼女はいいって言うと思うよ。だけど――」


 じゃあ彼女はどうやって地球に戻るの? と問われて返事ができなかった。


「まさか、ゼロナナに乗せて地球に運ぶつもりなんですか?」

「その予定なのよ。でも一方では即戦力となるべき改造も始まっているの。どっちになるかわからないけど、今彼女を07(ゼロナナ)に乗せても体力が持たないんじゃないかな?」


 じゃあ、渚さんはこのままこの艦で息をするしかないのか?


「僕は元気になれたのに、なんだか不平等ですね」

「本当ね。ねぇ、アキラ。あなた、ナナミになにかあっても07(ゼロナナ)に乗る勇気ある?」


 すぐには答えられなかった。それは、渚さんが死んでしまった場合を考えろということか?


「それしか道がないのなら、乗ります」

「ふぅ〜ん? 少しは強くなれたみたいね」


 そうして僕は、シューティングブースでの成果をドクターに話していた。


 だけど、頭の中では、渚さんが死にかけていた状況がぐるぐると渦巻いていた。


     つづく

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