5ー1
「馬鹿野郎っ!!」
ブリッジにたどり着くと、ヘルメットを脱ぐなり、いきなりトラオさんに横っ面を殴られた。
「俺たちはなぁ、おまえの姉弟喧嘩に付き合ってるわけじゃねぇんだぞっ」
後ろからミヤさんに支えられて、呆然としていた。
殴られたのなんて、生まれて初めてだったから。どう思えばいいのかまったくわからない。
「俺たちは命をかけて戦ってるんだ。姉ちゃんの説得したいだけなら、戦場に出てくるんじゃねぇ。あんな女、俺ならすぐにやっつけてやれるんだ。それをおまえはなぁっ」
「トラオ。そのくらいにしなよ。アキラくんの気持ちもくんであげなよ」
嫌だね、とトラオさんが声を荒げた。
「俺はもう、仲間が死ぬ場面を見たくないんだ。それに自分の命も大事なんでね」
あらためてトラオさんに胸ぐらをつかまれる。
「いいか? おまえはもう05には乗るな。相手の戦力もわからないのに足手まといはごめんだ」
だけど……、と僕は静かに囁いた。
「ゼロゴーに乗れるのは僕しかいないでしょう?」
「だからだ。こんなの、プログラムを変えれば誰が乗ってもおなじになるんだ。自分だけが特別だと思わないことだな」
それでもまだ、言い足りないと見えて、トラオさんは息を吐き出す。
「とにかく、おまえは懲罰房行きだ。ヘルメットをかぶったらテリーに懲罰房へ連れて行ってもらえ」
くそっ、と乱暴に吐き捨てると、トラオさんはシャワールームの方へ足早に去って行った。
「アキラくん」
ミヤさんが僕を見ている。
「お姉ちゃんと戦えるって言ったわよね? だからわたし、あなたにマイクのこと話したのに」
ミヤさんにまで吐き捨てられた。
「そんじゃま、懲罰房へ行くとするか」
スーツを脱ぐよりも早く、ヘルメットをかぶり直した僕を、テリーさんは懲罰房へと連行した。
だって、お姉ちゃん弱かったから。すごく普通の女の子みたいだったから。
だから、説得できると思っちゃったんだ。
それなのに叱られるだなんて。
あのままだったら、お姉ちゃんはトラオさんにやっつけられてしまっただろう。
そんなの、見ていられない。
「ほれ、入れよ」
僕は薄暗い懲罰房に入った。中には便器とベッドがあるだけだった。
バタンと乱暴にドアが閉められ、鍵をかける音がする。
これが、懲罰房か。
初めてのことがたくさんあるのに、こんなのはごめんだ。
確かに、今回は犠牲者が出なかった。だけど、でも。じゃあ僕にお姉ちゃんを殺せって言うの?
僕をタケノコに乗せてくれたお姉ちゃんを裏切れと?
だけど、わかってもいるんだ。
お姉ちゃんは宇宙に僕を捨てたんたってことを。
そのことをしっかり考えなくちゃいけないってことも。
つづく




