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新延命装置タケノコ  作者: 空羽 叶
第三章 新田 晶
18/36

5ー1

「馬鹿野郎っ!!」


 ブリッジにたどり着くと、ヘルメットを脱ぐなり、いきなりトラオさんに横っ面を殴られた。


「俺たちはなぁ、おまえの姉弟喧嘩に付き合ってるわけじゃねぇんだぞっ」

後ろからミヤさんに支えられて、呆然としていた。


 殴られたのなんて、生まれて初めてだったから。どう思えばいいのかまったくわからない。


「俺たちは命をかけて戦ってるんだ。姉ちゃんの説得したいだけなら、戦場に出てくるんじゃねぇ。あんな女、俺ならすぐにやっつけてやれるんだ。それをおまえはなぁっ」

「トラオ。そのくらいにしなよ。アキラくんの気持ちもくんであげなよ」


 嫌だね、とトラオさんが声を荒げた。


「俺はもう、仲間が死ぬ場面を見たくないんだ。それに自分の命も大事なんでね」


 あらためてトラオさんに胸ぐらをつかまれる。


「いいか? おまえはもう05(ゼロゴー)には乗るな。相手の戦力もわからないのに足手まといはごめんだ」


 だけど……、と僕は静かに囁いた。


「ゼロゴーに乗れるのは僕しかいないでしょう?」

「だからだ。こんなの、プログラムを変えれば誰が乗ってもおなじになるんだ。自分だけが特別だと思わないことだな」


 それでもまだ、言い足りないと見えて、トラオさんは息を吐き出す。


「とにかく、おまえは懲罰房行きだ。ヘルメットをかぶったらテリーに懲罰房へ連れて行ってもらえ」


 くそっ、と乱暴に吐き捨てると、トラオさんはシャワールームの方へ足早に去って行った。


「アキラくん」


 ミヤさんが僕を見ている。


「お姉ちゃんと戦えるって言ったわよね? だからわたし、あなたにマイクのこと話したのに」


 ミヤさんにまで吐き捨てられた。


「そんじゃま、懲罰房へ行くとするか」


 スーツを脱ぐよりも早く、ヘルメットをかぶり直した僕を、テリーさんは懲罰房へと連行した。


 だって、お姉ちゃん弱かったから。すごく普通の女の子みたいだったから。


 だから、説得できると思っちゃったんだ。


 それなのに叱られるだなんて。


 あのままだったら、お姉ちゃんはトラオさんにやっつけられてしまっただろう。


 そんなの、見ていられない。


「ほれ、入れよ」


 僕は薄暗い懲罰房に入った。中には便器とベッドがあるだけだった。


 バタンと乱暴にドアが閉められ、鍵をかける音がする。


 これが、懲罰房か。


 初めてのことがたくさんあるのに、こんなのはごめんだ。


 確かに、今回は犠牲者が出なかった。だけど、でも。じゃあ僕にお姉ちゃんを殺せって言うの?


 僕をタケノコに乗せてくれたお姉ちゃんを裏切れと?


 だけど、わかってもいるんだ。


 お姉ちゃんは宇宙に僕を捨てたんたってことを。


 そのことをしっかり考えなくちゃいけないってことも。


     つづく

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