4ー4
「ミヤさん」
僕は失礼だとわかっていても、マイクさんのことをどうしても聞きたかった。
「ああ、アキラくんか。泣いてたのトラオたちには秘密ね」
「はい。あのっ」
「うん、マイクのこと聞きたいよね?」
「ごめんなさい」
「いいよ」
ミヤさんは胸の奥から深いため息を吐いた。
「マイクはね、大気圏突入の時に原形をとどめないタケノコを見るのがつらかったの。彼の妹さんは早くに亡くなっていたから、誰よりも人の死に敏感だった。わたしはそんなマイクが大好きだった。守りたくて、でも守れなかった」
人の死に敏感、か。僕もマイクさんのことは言えないかもしれない。
「だから、06機が大気圏突入の際に誰よりも早く飛び出していたの。そして、タケノコを守ろうとして、一緒に燃え尽きちゃった」
こんな時、大人だったら葉巻を吸うか、お酒を飲んだりするのだろう。
でも僕は子供で、お酒も葉巻も飲まない。
ミヤさんはあたらしくこぼれてきた涙を指ですくった。
「ずるいよね。地球に戻ったら結婚しようって約束していたくせに」
だから、とミヤさんは話をつづける。
「07機を発見した時、手加減できなかった。あなたたちが生きる手段を使ったために、マイクは死んだんだっていう思いに取り憑かれていたから。結果的にナナミちゃんを殺すところだったよ。わたしって馬鹿だなぁ」
「そんなことないです。僕だって、僕のせいでみなさんに迷惑をかけてしまいましたし、お姉ちゃんにも嫌われてしまったのですから」
「お姉ちゃんと戦えそう? 有人機を自分の意思で攻撃するのは初めてなんでしょう?」
「それを言ったら、ここにいることのすべてが初めてのことだらけです」
「そうよね」
あははっと乾いた笑いはミヤさんをより悲しく見せた。
「だから、勝手ながらアキラくんの存在はわたしの希望なの」
「そんな。希望だなんて」
そこでけたたましいブザーが鳴り響く。
《敵機接近! 敵機接近! 搭乗者はブリッジに集合せよ》
「僕、行かなくちゃ」
「いいのね? アキラくん」
「……はいっ」
僕はブリッジまでなるべく早足で歩いた。そこをトラオさんにお姫様抱っこされてしまう。
「ついでだから、アキラは走れないから俺が連れて行ってやるぜ」
「そんな、ありがとうございます、トラオさん」
「いいってことよ」
初めて人の目の高さで抱えられた。恥ずかしくて、胸がどきどきしている。でも、発作は起きない。これもヘルメットのおかげかな?
「トラオさん、このヘルメットをかぶったままゼロゴーに乗ったら、はじき出されちゃったりしますか?」
「わからん。アキラがやりたいようにやってくれていいよ。俺の一号機は整備が終わってるから、一緒に戦おうな」
「はいっ!!」
おっと、と驚いてトラオさんが前方のテリーさんにあいさつする。
「四号機はダメかい?」
「いや。一緒に出るぞ」
「そりゃ心強いや」
テリーさんも出られるってことは、やっぱりマニュアルで戦わなくちゃいけない。
「僕に実戦を教えてください」
気づいたらそんなことを口走っていた。
つづく




