4ー3
クリーンユニバースの目的はわかった。
僕はドクターの意見を聞きながら、少しずつ身体を鍛え始めた。
とは言っても、宇宙で筋力をこれ以上落とさないようにするためのものだ。金魚鉢みたいなヘルメットをかぶっていると、運動ができるからうれしい。
案外すぐに地球に帰されるのかと思っていたけど、クリーン・ユニバースはまだ宇宙にとどまるという。
と、いうのもオーロラ号の目的がはっきりしていないからだ。
もし、オーロラ号の目的が宇宙ではなく、地球に対する攻撃だとしたら。その時は各国からよりすぐりの軍人を宇宙に配置することになっていると教えてもらった。
さらに、石原 由理という名前の女性は存在していないことになっていることもわかった。
だけど、なんのために?
クリーン・ユニバースのみんなは名前は記号みたいなものだと言っていたけれど、それだと石原 由理という人の名前も偽名なのだろうか?
さらに、僕はついにゼロナナの搭乗者である渚 奈々美さんに会えることになった。
彼女もヘルメットのおかげで命を取り留めることができたのだ。
でも、地球に戻ったらどうなるのだろう?
もうヘルメットはかぶれないかもしれないし、一時的にでも自由が満喫できたのはうれしいけれど、それを取り上げられてしまうことがさびしち。
「はじめまして。渚 奈々美です」
黒髪の美少女である渚さんを前にして、僕は固まってしまった。
こんなにかわいい女の子だと思っていなかったのだ。
「はじめまして。新田 晶です。ゼロゴーの搭乗者です」
僕が自己紹介をすると、まだベッドの住人である渚さんが、あら、ゼロゴーの、と復唱した。
「生き残っているのがわたしと新田くんだけなんて不思議な気がするわね」
渚さんはそう言って、さみしそうに微笑んだ。
面会に同行しているドクターとミヤさんが顔をしかめた。
特に、ミヤさんはわたしも悔しいわと涙声で伝えてくれた。
「06の搭乗者を助けようとしたマイクは、共に燃え尽きてしまったの。だから、大気圏突入がどんなに大変か……」
ミヤさんは思い余って泣き出してしまった。
ドクターはそんなミヤさんを慰めながら。
「マイクはミヤの恋人だったからね。それで、勢い余って渚を攻撃しちゃったのよ。ごめんね」
「いいえ。わたしの方こそ、ちゃんと取扱説明書を読んでいなかったから、マニュアルに切り替えることができなくて、すみませんでした」
普通に話をしているけれど、それでも会話の一つ一つから渚さんの疲労感が伝わってくる。
「まだ本調子じゃないみたいね」
ドクターはそう言うと、僕たちを追い出すような形で医務室に戻って行った。
いつも優しいミヤさんの恋人が亡くなったことを知っていたら、僕はもう少しミヤさんに優しくできたのかな?
つづく




