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起床

衝突した。それでも止まらない

はなびの部屋は、暗かった。

障子だけが開かれている。

外の光が細く差し込んでいた。


にわびは引き戸を開ける。

朝に置いたご飯を、手に取る。

皿を見た。

少し、減っていた。


——きっと、動物だ。

はなびは外が好きだった。

だから、開けている。

そういうことにしている。


夜ごはんを、枕元に置く。

いつもの場所に。

「……待ってるよ」

ひと言だけ、落とす。

返事は、ない。


立ち上がる。


にわびは静かに扉を閉めた。

静かになった部屋には、誰かの家の笑い声が届いていた。



すみが、目元を拭う。

「一緒に来る?」

リースが言う。

すみは何も言わない。

目だけが、わずかに逸れる。


「リース、少し落ち着きなさい」

てんがリースの腕を引いた。

それから、すみの方へ向き直る。

「すみ。問題が解決したら——一緒に来てくれるかい?」

少し間があった。

「……もちろん」

すみが、小さく答える。

「解決すれば、行きたいです」

カナマの口元が、ほんのわずかにゆるむ。

てんも、同じだった。

目が、合う。


「じゃあ——解決しないとね」

てんが、静かに言う。

「一旦、はなびって子のお見舞いに行くのはどう?」

カナマが続ける。


「行く」

リースが即答した。

「いや、あんたじゃなくて」

てんがすかさず返す。

「まだ、お見舞い行けてなさそうだし」


カナマは、すみの方を見た。

すみは、下を向いていた。

畳の目を、数えるように。

誰も、急かさない。

時間が、ゆっくりと過ぎる。

「……行き、たいです」

すみが、小さく言った。

「はなびが今、どうなっているのか——知りたい、です」

てんは、すみを見た。

「じゃあ、夜中にこっそり行こうか」

一拍。

「私たちも、気になることがあるし」



ミツキが寝室へ向かい、家が静かになった。

深夜二時。

虫の声だけが、やけにはっきり聞こえた。

リースは、少しだけワクワクしていた。

四人は、はなびの家へ向かった。


「ちょっと、別行動するね」

てんが立ち止まる。

「えっ?」

「大丈夫、すぐ戻るよ」

それだけ言って、てんは国の入口の方へ向かった。


三人は、坂を上った。

石畳の音を、一歩ずつ殺しながら。

他の家の灯りは、もう消えている。

一段登るたびに、心臓の音が大きくなっていく。


——紅葉が風に揺られる。


「ちょっと待って」

「ほら、早くー」

振り返りもしない。

「見てみて」

ぴょん、と飛ぶ。

「五段飛ばしー」

足が、引っかかる。

二人して、こける。

「あんたらバカじゃない」

はなびが弾けて笑っている。

「すみちゃん、大丈夫?」


——世界が、黒に戻る。


石畳が、足の裏に戻ってくる。

虫の声だけが、続いていた。

登り切ると、大きな玄関が見えた。

「こっちです」

獣道だった。

三人は、その隙間をたどる。


庭に出た。


障子が開かれていた。

外から、部屋の中が丸見えだった。

布団が一つ、真ん中にある。


——誰も、いない。

「どうかされましたか?」

隣から、声がした。

振り返る。

白い浴衣。

顔の右側に、火傷の跡。



すみの口が、震えている。

「……はなび」

声が、削れて出た。

ご愛読ありがとうございました。

はなびの起床それが示す先とは

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