「明けない冬に雪解け」
――粗目が死んだ。
受け入れられないまま葬式が行われ参列したが、目の前の現実を直視できなく、最後の挨拶だと言うのにろくに思考が回らずそのまま葬式も終わった。
今となって後悔している、ちゃんとお別れを言えば良かった、送り出してやるべきだった、あの世に……そう悔やむがあの時の俺はそう簡単に切り替えられるほど現実的ではなかった。
そうして春が来た。粗目と歩くはずだった桜の道、この先何年も何十年も歩いて一緒に笑うはずだったのに……。
俺は未だに粗目に囚われてしまっていた。
それは悪いことじゃないと思う、確かに粗目が見ていたら『何してるの? 早く前に進んでよ!』と言いそうだが、俺は例え粗目にそう言われても粗目が好きな気持ちは変わらない。
これからどうしたらいいのか分からない、だけどこのままじゃいけないのも分かってるし、一番辛いのは粗目の家族達なのに、俺がこんなんだといつまでも粗目の家族達も前に進めないと焦りもするが、結局またどうしたらいいのか分からないに思考が戻ってくる。
そんな事を引きずりながら気付いたら大幅に遅刻して学校に着いてた。
今日から高校三年生の授業が始まるが粗目が居ないのに……何の意味があるのだろうか……。
そうやって人気のない校門の前に立ち尽くして居ると声をかけられる。
「あの……大丈夫ですか……?」
「え……?」
「いや、涙を流しているみたいだったから……」
そう言われて目を擦ると涙を流していることに気がつく。
「あ、あぁ……その桜が綺麗だったから感動してさ……はは……」
「いいんですよ無理してごまかさないで」
「……え?」
「何も言わなくていいんです、何か悲しい気持ち何だなって私には分かりますよ、その顔とその立ち姿で、だから無理しないで泣いて下さい」
そう言われてぷつんと張り詰めた糸が切れて涙が止まらなくなる。
「俺……俺……粗目と! 一緒にもっと過ごしたかった……!」
「よしよし、ただ今は泣いて下さい、ここには私しか居ませんから……」
そう頭を撫でられ抱きしめられる。
――そうして泣き止み。
「その……何というか……ありがとう受け止めてくれて……」
「いいんですよそれで気持ちがスッキリしたならそれが一番です!」
笑顔でどこか儚げな女生徒は言う。
「それで君は大丈夫なの? ただでさえ遅刻なのに俺の涙受け止めたせいで更に遅刻になっちゃったけど……?」
「大丈夫ですよ、私保健室登校ですし、何よりあんまり行っても行かなくてもあんまり変わりませんから……」
「何かまずいこと聞いちゃったかな……?」
「いえいえ私のことは気にしないでください! さ、貴方は早く教室に行って下さい!」
そう言われて校舎の時計を見て見るともう2時間目の授業が終わるところだった。
「そうだな、これ以上の遅刻はまずいしな……ありがとう!」
「どういたしまして」
教室に向かおうとするが……。
「あ、名前聞かせて貰っていいかな?」
「はい、良いですよ、美翠仰です、よろしくお願いしますね!」
美翠仰は自己紹介を終えると笑顔で去っていった。
「俺、自己紹介できなかったな……」
こうして俺の高校三年生の生活が始まった。




