「幸せな日々に終わりを告げて」
――彼女。
それは――俺にできた初めての大切な存在。
それは――永遠に続くと思っていた。
それは――自分達はそうならないと思っていた。
これは――愛を永遠にする道を歩むことになる新たな人生の始まりに過ぎなかった……。
「何で私達って付き合ったんだっけ? 無垢?」
聞くまでもないことを聞いてくる女生徒は紫雨時粗目俺の彼女だ。
そうこの俺、純白粋無垢は粗目の彼氏だ。
粗目とは二年生の始めに付き合い今の季節は二年生の冬だ。
「純粋に互いが好きだって想ったからだろ……?」
「ふ〜ん……そんな雑な答えでいいんだ……?」
「雑ってなんだよ俺は純粋に好きだからそう言ったんだが?」
「う〜ん……それじゃ足りないんだよなー……よし! これ宿題にしよっか!」
「は? 宿題ってなんだよ……?」
こうやっていつも突拍子もないことを言って俺を振り回すのが趣味なのだろうか、粗目は……。
「さ、今日は帰ろ!」
そんな大切な彼女との時間が俺にとっての日常だ。
□ □ □
そんなこんなでクリスマスがやってきた、粗目と初めてのクリスマス……これほど楽しみなことは他にないというくらい俺は浮き足立っていた。
「無垢、おはよう、今日の放課後クリスマスデートしようね? あ、宿題の答えも期待してるから!」
「うん楽しみにしてる! え?宿題の答え!?」
「うん? もしかして考えてなかったとか〜?」
「その……はい……」
そう俺は粗目のことが好きだ、でもどうして付き合ったと言われると……居心地がいいからきっと粗目の事を好きなんだと思ってるいるとしか言えない、何しろ付き合った時も粗目から自然に『付き合おうよ!』と言われてそこから関係が始まったから、付き合った理由は結局、粗目本人に聞いてみないことにはわからないだろう。
「駄目だよ? ちゃんと考えないと! 私達恋人……でしょ?」
「なっ!? ここ教室だぞ恥ずかしいって!」
「いいでしょ? これからクリスマスお家デートする関係なんだよ? 私達」
「うぅ……そうだね、うん! 俺達恋人……だもん……な!」
「じゃ放課後、一度家に帰ったら無垢の家に行くね!」
そうして時間は過ぎていった。
□ □ □
「来たよ〜! 無垢、開けて!!!」
「はいはいちゃんと開けますよっと……」
「もう早く開けてよね! 寒いんだから!」
粗目はいかにも気合い充分な服装をしていたが寒さ対策は度外視しているように見える。
「俺のために服装気合い入れてくれたんだね嬉しいよ」
「うーむ? その褒め方嬉しいけど何か見透かされてる感じがしてモヤモヤするよ!」
「えぇ……じゃあどう褒めたらいいの?」
「そりゃ……綺麗だよ……みたいな?」
粗目が急に俺の耳元に近づき頑張って出したと思われるイケボでそう囁く。
「ひゃっ! そっ……そんなに近くで囁かれると……そのくすぐったいよ……息が……」
「ふふん! 驚いたならよし!」
そうして家に上げ二人で飾り付けをして暫くイチャつきながら二人で過ごす。
幸い今日は両親は深夜まで帰らないので特にそわそわせずに余裕を持って過ごせるのだ。
「ねぇ、粗目……宿題は今日は仕方ないけどさ……ちゃんと私と付き合った理由聞きたいな……」
「そうだよな……俺頑張って具体的にどこが良くて付き合ったか言えるようにするよ今の居心地がいいから、だから好きなんだと思ったから付き合ったって曖昧な理由じゃなくあの時付き合いたいって思った気持ちをもう少し深掘りするよ」
「……ううん……なんだちゃんとあったじゃん好きな理由」
「え……こんなに曖昧でいいの?」
「いいに決まってるでしょ……居心地がいいから好きなんだって思ってくれてるのは充分付き合う理由になってるよ……ありがとね私に隣に居心地の良さ感じてもらって……」
俺はその彼女の言葉で自分の曖昧さに見える好きを曖昧じゃなくしてもらったと宿題の答えが出せたと安心し感謝を覚えた。
「ううん、俺もありがとう、今の言葉のおかげで俺、宿題提出できたし何よりはっきりそれが俺の好きな理由って肯定できるようになったよ」
「そうだよ君は私が好きなんだよいつまでもね……私も君がいつまでも好き……だから永遠に一緒だよ?」
「あぁ……永遠に一緒だ」
こうして時が過ぎて夜ご飯の時間になった。
夜ご飯はデリバリーでピザを頼んでおいたが飲み物を注文し忘れてしまった。
「ごめん俺飲み物注文し忘れたから買いに行ってくるよ」
「え? 私が行くよ! だって私ピザの代金君持ちじゃん? だから飲み物代くらい私に出させて?」
「分かった気をつけてね?」
「うん! 行ってくるね!」
□ □ □
「ただいま!」
「お帰り、大丈夫だった?」
「うん! ほら2Lのコーラ買ってきたから!」
そう言い重そうにテーブルにコーラを置く。
「丁度ピザも今来たから食べようか」
「うん!」
そうしてピザを食べながらふと粗目に聞きたかったことを聞く。
「粗目、進路どうするのかもう決めてる?」
「うん! 私、大学には行かずにお芝居の道に行こうかな! って」
「そうなんだ、応援するけど何だが粗目だけ進路決まっててなおかつ人気でたら遠いところに行きそうで寂しさも感じるね……」
「何言ってんの! 私は貴方の隣にずっと居るから……安心してね?」
「そうだよな……俺の彼女何だし俺が離さないから安心するね!」
「そう! その意気だよ粗目ちゃんは安心しました今のを聞いて」
「何だよ! その言い回し!」
そんな話をしながらも笑いながら時間が過ぎて行く。
「じゃ片付けしよっか!」
「そうだねじゃあ俺はピザの箱と食器片付けるから飾り付けを外しといて」
「分かった!」
そんなこんなで片付けも終わり解散の時間が来た。
「今日は楽しかったよ無垢! じゃあね大好き!」
「あぁ……俺も大好きだよ」
愛を伝えあった後扉に手をかけた粗目が振り返って……。
――唇に柔らかな熱を覚えた。
「!? なっ!!! これ、キ――」
「恥ずかしいからその先は言っちゃダメだよ? じゃね!」
粗目は顔を赤くして足早に帰宅して行った。
突然の出来事で暫く放心状態だったが徐々に実感が湧いてきた好きな人とのキスこれほどまでに充足感を感じるものだと噛み締め一人になった部屋でニヤケながら過ごす。
□ □ □
一時間後、流石に疲れたので風呂に入ろうとした瞬間電話が鳴る。
「はい」
「ああ……無垢くん?」
相手の声は比較的落ち着いているようだが何故か胸騒ぎを覚える……。
「あ、粗目のお母さん、どうしました?」
「その……覚悟して聞いてね……」
「え?」
「粗目が事故で死んだわ」
――ボトン!
受話器は床に落ちてしまった、それはまるで今の自分の人生の様に俺には見えた。




