「休み時間の約束」
粗目が亡くなって季節はもう夏になった。
今でも悲しみや切なさを感じはするし引きずってもいるのだけど精神状態は無理矢理生活できるレベルまでになってしまった。
その理由として、結局あの後、親にカウンセリングと精神科に連れて行かれ人間の脳は薄情なもので薬と治療が自分に合っているとどうしても余裕が出てきてしまう。
だけど俺は元々粗目が構ってくれるから粗目の友達とも遊んだりできる程度で交友関係は広くないので特に薬によって激しく沈む訳でもかと言って完全な救いがあるわけでもない宙吊り状態な生活を送っていた。
そんな中今日は体育の授業で怪我をしてしまったので保健室に寄る事になった。
□ □ □
「失礼します」
「あ、泣き虫さん……?」
「えっと……?」
保健室に入るとベッドに居る女生徒に声を掛けられる。
その顔に見覚えはあるが誰だか思い出せない、だけど何故だろうか?
凄い恥ずかしい部分を知られているような気はした。
「あ、ごめんなさい、いきなり泣き虫さんだなんて……」
「あー……えっと構わないけどさ……その……」
「あれ……? もしかして私のこと覚えてないんですか……?」
「……うん……」
「……そうですか……じゃあ改めて、自己紹介させてもらいますね! 美翠仰です、よろしくお願いしますね!」
その名前を聞いて一気に恥ずかしい記憶が蘇る。
人間都合のいいもんで恥ずかしさを覚えどうしようもないと、恥ずかしいがあったことすら忘れてしまうのだ。
「あ、仰さん、その忘れててごめん、今思い出したよ……それとあの時は恥ずかしいところを……」
「良かったです! 私が抱きしめてあげたかいがありました!」
「その……本当にありがと……その節は……」
「あ、気にしないで下さい! 私が好きでやった事ですから……それよりどうしたんですか?」
「あ、体育の授業で怪我してさ……それで絆創膏と消毒をさ……」
「そうだったんですね、保健の先生は今いなくて、代わりに私がやりましょうか?」
「い、いや……ありがたいけどこれくらいは自分でやるよ」
「そうですか……難しかったら言って下さいね?」
「あはは……大丈夫だよ」
そうして自分で怪我の箇所を消毒して絆創膏を貼ったので退室しようとすると……。
「あの……もしよかったらこれからも定期的に保健室に遊びに来てもらえませんか? 私保健室登校で教室には基本行かないですし、午前には帰ってしまうので……」
そうえば彼女は保健室登校と言っていた事を思い出す何らかの事情はあるのだろうがここはあまり掘り下げずにどうするか考えようと思ったが、泣かせてくれたお礼も兼ねて答えはもう決まっていた。
「いいよ、これから休み時間は遊びに来るよ、暇だし」
そう言うと彼女は笑顔になり。
「ありがとうございます! これで少しは学校で楽しい思い出ができそうです!」
そう言う彼女の笑顔を見て一瞬粗目が過ったが粗目にも仰にも失礼なのでノイズとして処理する。
「じゃあ今の時間はもうすぐ次の授業だからこれで……」
「はい! 次の休み時間待ってますね!」
そして俺は休み時間を美翠仰という女生徒に使う事になった。




