マリアたちの選ぶ途番外編・-汎銀河人類族連邦ができるまで-
で。
聖院に紐付けされている連邦世界の地球。
United Galactica of Humanity…汎銀河人類族連邦という統一政府組織が一応は、発足しています。
で、この統一政府組織が暫定的ながらも統一政府として発足できた理由としては、とある人物が接触して来た際の提供技術が後押しとなったそうです。
なにせその時代、今を去ること200年近く昔なのです。
突如、ボルネオ島に築かれた軌道エレベーターとその地上施設。
ええ…聖院世界であれば聖院島と称される島に、その巨塔はそびえ立ったのです。
そして、ボルネオ島は、そこに見えていながら誰も近づけない状態に陥ってしまいました。
航空機でも、接近しようとしてもなぜか気流によって邪魔をされてしまうのです。
そして、軌道塔を建造したどこかの誰かさんは、このような通告を当時の世界各国の政府に申し入れました。
『この塔を地球人類に提供し、宇宙進出の足掛かりにしてもらう用意がある。ただし、この塔を譲受される権利者は地球人類の代表者として選出された人物にして頂きたい』と。
これは、第三次世界大戦後の地球人類にとって、新たなる火種を引き起こしました。
普通なら、国力が高い国家がはいはいと手を挙げるような事案です。
しかし、アメリカやロシア、中国にインドといった国々はウクライナや中東を火種とした世界大戦によって大きく国力を削がれていました。
ですが…とある斜陽の大帝国による提案が国連に持ち込まれた結果「とりあえず形だけでも統一政府を樹立し、国連の代替機関として発足させよう」という決議が出されたのです。
なぜか。
その提案者からは、超光速航法が可能な宇宙船の見本や建造技術が提供される、とも同時に発表されたからです。
そして、国連にその人物の提案を持ち込んだ国には、密かに移民の話が持ちかけられたのです。
そうです。
二枚舌三枚舌外交が得意なその国は、なんと国連にそうした提案を持ち込みながら、裏では独自にその人物の支援を受けて国家の重鎮たち…特にアングロサクソン系の元・貴族や富裕階級層をはるか百光年先の可住惑星に移住させる政策に舵を切ったのです。
で、その際にその二枚舌の国では移民歓迎政策の反動で強烈な他民族排斥運動が巻き起こりましたが、その中枢となった民間人には地球上でかつて使われたことがないような非殺傷武器が貸与されたり、なぜか移民系国民の口座がハッキングされたり、更には移民の間で再棄国運動が起きたりなどなど。
とにかく、移民にとっては嫌がらせにしか思えない摩訶不思議な出来事が毎日のように起きたのです。
あげく…アングロサクソン系以外の人種に対して発症する骨粗鬆症や骨軟化症、筋萎縮性側索硬化症といった病気、その島国に蔓延したのです。
この病気の原因は、不明。
そして感染すれば著しく体力筋力を奪い、骨折しやすくなります。
そして大動脈乖離すら引き起こして発症から数ヶ月以内に死亡するという、どこかの独裁者が死後の世界で聞けばなぜこれが当時の世界で流行しなかったとか言い出しそうなくらいに、民族浄化を勝手に推進する「人種差別病」だったのです…。
もちろん、当時の世界はこの奇妙な奇病の調査に乗り出しましたが、一切は不明。
感染と症状は判明しても、その病因は一切突き止めることができなかったのです。
ただ、今のあたしなら即答できますよ、その病因。
おそらく、駄洒落菌の細胞感染型を使われたはずです。
それも、女官種細胞や鬼細胞の真逆の要素を撒き散らすタイプです。
女官種細胞や鬼細胞は、女官や鬼の体液に接するだけではなく、近くにいるだけでも感染して普通の人々を同族に変貌させてしまう厄介な性質があります。
もはや、吸血鬼やゾンビどころではなく、生活空間が重なるだけで女になったり鬼になってしまうのです。
そして駄洒落菌、関西弁抗体と称される特定言語話者に対しては発症しない性質がありました。
つまり、当時のその島国に移住居住していた有色人種を狙い撃つために設定された、何かの基準に合致した相手に感染すれば致死性の症状を発症する病原因子を使われたのです。
そして、ダメ元でルルドの泉の水にすがったある患者が快癒したことから、理由は不明だがルルドの泉の水が特効薬とされた結果…移民たちのうち、お金がある人たちはこぞって渡仏したのです。
しかし…泉の水を浴びて快癒したはずの有色人種が帰国すると、速やかに再発症。
事ここに至って、その島国にはもう住めない、戻っても病に倒れ体を動かせなくなるとあっては、他国に移住するしかないという結果となってしまいました。
いえ…そればかりか、その病気はユーラシア大陸に所在する他の旧・白人系国家にも飛び火を始めたのです。
そしてほぼ唯一、その病状が報告されない白人系国家だったロシアは、労働力欲しさにそうした有色人種の受け入れに挙手したのです。
しかし、そこが手を挙げて良い予感がしたでしょうか。
更には、ロシア同様に発症例が極めて少なかったアメリカ合衆国。
ただし、この国は第三次世界大戦以前から厳格な移民抑制策に移管していました。
高い移民選別のハードルに苦情を入れられ、たまりかねたアメリカ政府は暫定受け入れを決議しましたが…今度は、その筋骨劣化病がアメリカでも発症を始めたのです。
そして、従来から何世代にもわたってアメリカで経済基盤を築いていた有色人種コミュニティまでもが崩壊の危機に晒された結果、再び国境と入国窓口の扉をきつく閉ざさざるを得なくなったのです…。
しかし…そこで狙ったように、国連に対して再度、統一政府の樹立と有色人種難民の受け入れを表明した人物がいました。
もう、お分かりでしょう…サン=ジェルマン氏がその謎の力と技術で、地球人が自分に従うように仕向けたのです…。
いえ、サン=ジェルマン氏の提案に乗った三枚舌帝国は、有色人種の弱体化に乗じて政治力を取り戻そうと裏工作と謀略謀計の実行に乗り出したのです…。
そして、軌道エレベーターの地球最初の乗客は、公式ではその筋骨劣化病患者となっています…。
しかし、実際には先行してその、三枚舌帝国から選抜された人々が利用して、巨大な移民宇宙船によって後にNB本星と呼ばれることになった惑星に降り立っていたのです…。
ええ、新天地を目指して旅立った移民たちは、その降り立った先でも病に倒れていったのは想像に難くありませんでした…。
いえ、そればかりか、移民船の中でも発症したという記録が。
そしてその遺骸たるや、埋葬どころか、土質改良のための素材として有効活用されたそうです…。
そして、その奇病は一定の数の犠牲者を出した後に、ぴたりと発症者の新規感染が観測されなくなりました。
その直前に、暫定的ではありますが汎銀河人類族連邦政府の発足が発表され、新政府事務局の初めての大事業としてこの筋骨劣化症の特効薬…ルルドの泉と同じ効果がある製剤の配布が始まったと公式記録には残されていますが、その製剤を配布し始めたのは、三枚舌の島国に本社を置くメガファーマだった位しか詳細が記録されてはいないのです…。
そして有色人種が統治する第三国は白人系国家とは距離を置き始めます。
アメリカ合衆国からも、有色人種は撤退を開始しました。
そして、この筋骨劣化症ですが…。
アフリカ系黒人だけではなく、アジア系やインド・アーリア系でも発症者が出たのです…。
それは、国連事務局が所在するニューヨークに、有色人種が足を踏み入れられなくなることを意味していました。
そうです…連邦政府発足当時、有色人種国の要人や国際的影響力を持った人物は遠隔で参加するしかなかったのです。
ですので、ルルドに近い上に、筋骨劣化症の発症者がロシア同様皆無に近かったフランスのパリにおいて連邦政府は当初、発足せざるを得ませんでした。
ブリュッセルやアムステルダム、あるいはドイツやスペインといった欧州の周辺国家という案もありましたが、それらの国々でも有色移民が次々に病に倒れ伏す異常事態になっていた以上、発症者が少ない国に統一政府機関を置くしかなかったのです。
そしてロシアは、ウクライナ戦争を引き起こした当事者国家であり、第三次世界大戦に至るまでの過程で国力を大きく削がれ、国家分裂の危機に直面していました。
ですので、筋骨劣化症特効薬の製造に成功したメガファーマの本社とは海底トンネルで結ばれている上にルルドを擁するフランスが、当初の新統合政府樹立の場に選ばれたのも無理からぬ話だったのでしょう。
中国系移民の声が大きくなるまでは。
ええ、楊毛紅という中国系アメリカ人が事務局長に選出された後、旧国連本部の活用という提案が出されたのです。
その背後には、世界の警察を降りた上にサン=ジェルマン氏由来の技術供与対象から表向きは漏れていたアメリカの強い圧力が存在したようです。
そして、この病によって更に疲弊した地球を尻目に独立宣言を行ったNBへの経済協力を強く要請する政策を打ち立て、連邦宇宙軍や宙兵隊の戦力強化に乗り出したのもこの、楊政権下での出来事だったそうです。
で…楊政権はNBに対する経済協力を「強く」要請するための実力行使手段を有してはどうかという秘密提案を受けたのです…。
そうです、MIDIシリーズは、この時に月面地下にあるルナテックス・インダストリーズ本社で製造されたのです…。
で、当時の超光速航行技術はスティックス・ドライブレベル1〜2と呼ばれる限定的かつ、生体には極めて危険な方法しか開示されてはおりませんでした。
有人で行えば脳が崩壊するか死亡、更には実質的にNBまで百年の船内時間の経過を耐え抜くための対策が必要だった、このスティックス・ドライブレベル1または2航法で、確実にNBに到達して火力を投下するためには、高度知性を有する無人兵器が有効であると、サン=ジェルマン氏は吹き込んだのです。
お分かりでしょうか…必要なだけの人間の脳の提供を受けて、有人機に匹敵する戦術・戦略判断が可能な無人兵器を開発するという戦慄の企てに、楊政権下の連邦政府と宇宙軍幹部は乗ったのです…。
ですが、送り込まれた量産型MIDIたるMIDI04の13機のうち1機がNBに投降する宣言を出した上に、残りの12機も母艦ごと行方不明に。
更には、月で開発中だったMIDI後継機であるM-IKLA20"AEON"までもが、拿捕した連邦宇宙軍の獣帯級航宙駆逐艦の返還と乗員送還を建前として太陽系に侵入してきたNB航空宇宙軍艦と投降したMIDI04の一機によって奪取される事態を引き起こしたのです…。
そうですよ。
ジーナかーさんが左遷を受けて乗り込んでた駆逐艦、NBによって拿捕されてたんです。
そして、この時にクリス父さんとジーナかーさんは仲良くなったのです。
で、従来から強硬的な手段に走りがちだった楊政権ですが、なぜかなぜかなぜか、MIDIを含めて圧倒的すぎるNB航空宇宙軍のとの戦力差を見せつけられて実質的な降伏を迫られた結果、色々と認めなくてはならない妥協策に悩まされたあげく、汚職の数々を暴かれて失脚したのは沖縄作戦当時のお話でも、多少詳しく語られていましたね…。
まぁ、これだけでもサン=ジェルマンという人は決して善人じゃないとは思いますよ、あたしも。
しかし、どういう裏や思惑があるにせよ、地球人を一応は宇宙へと送り出すとっかかりを作った人物なのです。
そして、この人物の助けがないとこの先の諸々もうまく行かなくなるために、痴女皇国のあたしと聖院のあたしは、おっさんが逃げられないように仕掛けるしかなかったのです…。
だからサン=ジェルマンさん、悪いけどあと十万年は絶対に生きて責任取ってもらいますからね!
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じぇるみ「許すまじマリアリーゼ、決して許すまじマリアヴェッラ」
すくるど「後者には激しく同意するけどね。通称サン=ジェルマン、悪いんだけどあんたの運命を早死にって方向にいじくる要求は断固拒否させてもらうわよ」
黒マリ「極めて妥当かつ適切な判断だね」
白マリ「スクルドさんがいい仕事をして下さいました。ふほほほほほ」
黒マリ「で、ここからは第四の壁を突き破って読者の皆さんにバラす話なんだけどね」
白マリ「実は天の声、上の方であたしが語ったこの辺の経緯からきっちり書き出したかったのはやまやまだったみたいなのよ」
黒マリ「ただ、諸事情であたしたちの話…つまり聖院世界シリーズの構想でいうと、序盤すっ飛ばして中盤のとっかかりから書くというむちゃくちゃな書き出しから始めてしまったというのが実態らしい」
白マリ「だからあたしたちの話が終わった後に、書けるようなら序盤の執筆にかかりたいようなのよね」
黒マリ「ただ、経済事情や年齢、体調劣化などがそれを許すか難しいようでね」
白マリ「だから焦ってあたしたちの話から始めちゃったとも言えるわね」
黒マリ「干し芋とか尼岐阜とかで援助もらったらいいんじゃねぇのとか思うんだけどな」
白マリ「まぁともかく、あたしたちの話自体はお読みの通りに最終回に向けて進んでいますけど…」
黒マリ「重ねて言うけどさ、痴女皇国世界と、紐付きの連邦地球やNBの方はなんとかなるんだけど、難しいのは白マリ、つまり聖院サイドの連邦地球やNB、そして聖院地球の今後だよなぁ」
白マリ「最後までドキドキハラハラ目が離せない展開になるのかしら」
黒マリ「白マリ危機一髪」
白マリ「それ短剣を樽に突き刺すゲームよ…」




