第8話 バレた?
翌朝。
目を覚ました俺は、枕元に置いていたスマートフォンへ手を伸ばした。
時刻は午前八時十二分。
今日は二限から講義があるので、まだ多少は余裕がある。ベッドの上で身体を起こしながら画面を見ると、充電は百パーセントまで回復していた。
ただ、その下に並んでいる通知の数がおかしい。
昨日の配信で使った動画アプリにSNS、それからメールまで、見慣れない数の通知が溜まっている。
「……何これ」
昨日、配信を終えて昼飯を食べる前にも通知が大量に来ていることには気付いていた。ただ、腹が減っていたので後回しにして、そのまますっかり忘れていた。
試しに動画アプリを開いてみる。
最初に表示されたのは、昨日の配信だった。
『ダンジョンで遊ぶ』
自分で付けたタイトルだから当然見覚えはある。その下には再生回数やコメント数など、いくつかの数字が並んでいた。
「……二万?」
再生回数は二万三千四百八十一回。
昨日の配信終了時にドローンへ表示されていた数字は、確か七十三だった。配信が終わった後も録画された映像を見られるとは健太から聞いていたけど、一晩でこんなに増えるものなのだろうか。
さらに画面を見ると、チャンネル登録者の数字も表示されていた。
三千百二十七人。
「……え?」
さすがにおかしい気がして、何度か画面を更新してみる。
三千百二十七。
三千百二十九。
むしろ増えた。
「なんで?」
昨日が初配信だ。
しかも内容といえば、いつものダンジョンへ行っただけ。十階まで歩いて、途中で何匹か魔物を倒したくらいで、自分では特別なことをしたつもりはない。
強いて言えば、途中で拾った青い薬が妙に珍しがられていたくらいだろうか。
あとは、黒龍という有名な配信者が見に来ていた。
登録者二百万人。
もしかすると、その影響なのかもしれない。
「有名人ってすげえな……」
黒龍がコメントしたことで、その視聴者が俺のチャンネルにも流れてきた。
そう考えれば三千人くらい増えてもおかしくない……気がする。
配信なんて昨日初めてやったばかりなので、正しいかどうかは分からない。
SNSの通知も気になったけど、そちらまで確認していると大学に遅れそうだ。
俺はアプリを閉じるとベッドから降り、着替えてから一階へ向かった。
顔を洗って朝飯を食べる。
昨日までと何も変わらない一日の始まりだった。
***
大学へ着いたのは、一限の講義が始まって少し経った頃だった。
二限まではまだ三十分ほどある。
俺は学食近くのベンチに座り、途中のコンビニで買ってきたコーヒーを飲みながらスマホを眺めていた。
大学のグループチャットや友達から来ているメッセージ、講義の連絡なんかを順番に確認していく。
普段と何も変わらない。
ただ一つ違うとすれば、動画アプリからの通知が数分おきに増えていることくらいだ。
登録者も朝見たときより増えていた。
三千八百人。
「何でまだ増えてるんだ……?」
黒龍が配信に来た効果というのは、そんなに長く続くものなのだろうか。
そもそも俺には基準が分からない。
昨日、健太から聞いた話では、黒龍の配信には同時に十二万人が集まっていたらしい。
十二万人と比べれば数千人なんて大したことはない。配信の世界では、これくらい普通なのかもしれない。
そんなことを考えていると、不意に後ろから肩を掴まれた。
「相川」
聞き覚えのある声だった。
振り返ると、同じコンビニで働いている三浦健太が立っている。
「おう、健太」
いつもなら、そのまま適当に挨拶を交わして終わる。
しかし、今日の健太は何かがおかしかった。
驚いているようにも見えるし、困っているようにも見える。何とも言えない表情で、じっと俺の顔を見ている。
「……何?」
健太は答えず、ポケットからスマートフォンを取り出した。
何度か画面を操作してから、それを俺へ向けてくる。
「これ」
画面には動画が映っていた。
パーカーを着た男が剣を持ち、巨大な赤いトカゲと向かい合っている。
見覚えしかない。
「俺じゃん」
「だよな?」
「うん」
「やっぱりお前だよな!?」
急に健太の声が大きくなった。
近くを歩いていた学生が何事かとこちらを見る。
「何だよ」
「何だよじゃねえよ!」
健太は俺の隣へ座ると、もう一度スマートフォンを見せてきた。
短い動画だった。
俺がフレイムリザードの炎を避け、開いた口の中へ剣を突き刺す場面だけが切り抜かれている。
昨日の配信から誰かが作ったらしい。
そして、画面の下には再生回数が表示されていた。
十八万。
「……これ何?」
「俺が聞きてえよ」
「十八万回も見られてる」
「だからだよ!」
健太が頭を抱える。
何故か配信した本人である俺よりも混乱していた。
「お前、昨日配信したの?」
「したよ」
「何で言わねえんだよ!」
「いや、お前がやってみろって言ったんだろ」
「言ったけど!」
健太は何か言いたそうに口を開いたものの、一度閉じてからスマートフォンを操作した。
「これも見ろ」
今度はSNSだった。
画面には見覚えのある動画がいくつも並んでいる。
フレイムリザードとの戦闘。
二階で戦った三体のオーク。
五階で拾った青い薬。
それから、俺が三十八階まで行ったことを話している場面まである。
投稿した人はそれぞれ違うようで、再生回数も五万、十一万、二十二万とバラバラだった。一番多い動画に至っては三十万回を超えている。
「お前、昨日何やったんだよ」
「何って……」
普通にダンジョンへ行った。
それ以外に答えようがない。
「十階まで行っただけ」
「だけじゃねえよ!」
また声が大きくなった。
近くにいた女子学生二人がこちらを見る。
さすがに健太も気付いたらしく、少し声を落とした。
「これ、フレイムリザードだろ?」
「そうらしいな」
「そうらしいなって……」
「昨日コメントで教えてもらった」
健太が固まった。
「知らなかったの?」
「名前は」
「……マジか」
何故そんな顔をするのか分からない。
魔物の名前なんて知らなくても、動きと弱点さえ分かっていれば倒せる。名前を知ったところで、戦いやすくなるわけでもない。
「お前さ、フレイムリザードってB級魔物だぞ」
「昨日もコメントで見た」
「意味分かってる?」
「B級なんだろ?」
「違う。そこじゃない」
健太は呆れたように息を吐くと、スマートフォンを膝の上へ置いた。
「普通、B級の魔物ってB級以上の探索者を含むパーティーで討伐するような相手なんだぞ」
「へえ」
それは初めてちゃんと聞いた。
昨日のコメントにもB級という文字は流れていたけど、危険度の基準までは知らなかった。
「それをお前、一人で倒してるんだぞ」
「でも、あいつそんなに強くないぞ?」
健太が黙った。
「一階だと一番面倒だけど」
「……一階」
「うん」
今度は両手で顔を覆った。
「やっぱそこも本当なのかよ……」
「何が?」
「コメントで一階って言ってるから、配信のネタだと思ってる奴もいるんだよ。実はもっと深い階層なんじゃないかとか、未登録ダンジョンを使った設定なんじゃないかとか」
「いや、一階だけど」
「だよな……」
健太は俺が嘘をついていないことを知っている。
実家の裏山へ昔から遊びに行っていること自体は、以前から健太にも話したことがあった。
さすがにダンジョンがあることまでは言っていなかったけど。
「じゃあ、二階のオークも昔からいるのか?」
「オークって、あのでかい奴だろ? 昔からいるよ」
「三階のブラックハウンドも?」
「黒い犬ならいる」
「七階のアクアサーペントも?」
「青い蛇?」
「……もういい」
健太は疲れたようにベンチの背もたれへ寄り掛かった。
少し間を置いてから、俺が持っているスマートフォンへ視線を向ける。
「で、今登録者何人?」
「さっき三千八百くらいだった」
「は?」
健太がまた固まった。
「朝は三千くらいだったけど」
「ちょっと見せろ」
スマートフォンを渡すと、健太は慣れた手つきで動画アプリを開いた。
「四千二百いるじゃねえか!」
「増えてるな」
「何でそんな冷静なんだよ」
「だって黒龍って人、二百万人いるんだろ?」
「比較対象がおかしい!」
そうなのだろうか。
トップ層が二百万人。
俺が四千人。
五百倍くらい違う。
そう考えれば、まだまだ大したことはないと思う。
健太は呆れながらも画面を操作し続け、やがて何かを見つけたように指を止めた。
「しかも昨日の最大同接、二千八百六十一人……」
「へえ」
「へえじゃねえよ!」
健太がスマートフォンを俺の目の前へ突き出してくる。
「お前、昨日何人くらい見てると思ってた?」
「最後に確認したときは七十三人だった」
「……は?」
「ドローンに七十三って出てた」
健太は数秒間黙り込み、それから何かに気付いたようにゆっくり俺を見た。
「それ、兄貴が言ってた故障だ」
「やっぱ壊れてた?」
「液晶の左側が死んでるんだよ。千の位とか百の位が表示されない」
「左側?」
言われて、昨日の表示を思い出す。
確かに最後に見たときは『73』だった。
「じゃあ、あのとき……」
「お前が七十三人だと思ってたとき、実際には千二百七十三人とかだったんじゃねえの?」
「ああ」
ようやく理解した。
それなら、コメントがあんな速度で流れていた理由も分かる。
七十三人しかいないのに、随分コメントする人が多いなとは思っていた。
「千人いたのか」
「そこじゃねえよ」
健太は大きくため息を吐いた。
「初配信で、何の宣伝もしてないんだぞ? それで最大同接三千近く。切り抜きは数十万再生。登録者は一晩で四千超え」
そこまで言ってから、健太が俺の肩を掴んだ。
「バズってんだよ、お前」
「……マジ?」
「マジだよ」
そこで初めて、少しだけ実感が湧いた。
バズる。
その言葉くらいは俺でも知っている。
つまり、思っていたよりも遥かに多くの人間が昨日の配信を見ていたということだ。
「じゃあ、結構すごい?」
「結構どころじゃねえ」
「でも百万円は?」
「そこから離れろ」
どうやら、まだ百万円には程遠いらしい。
それは少し残念だ。
ただ、四千人という数字を改めて考えてみる。
昨日まで俺のことなんて誰も知らなかったのに、それだけの人が次も見たいと思って登録してくれた。
そう考えると、悪い気はしなかった。
「じゃあ、次もやってみようかな」
俺がそう言うと、健太の表情が固まった。
「次?」
「うん」
「またあそこ行くの?」
「そりゃ行くけど」
ダンジョン攻略は俺の趣味だ。
配信をしようがしまいが、どうせまた行く。
「次はもうちょっと下まで行こうかな。十五階とか」
「やめとけ」
「なんで?」
「お前のダンジョン、階層の感覚がおかしいんだよ!」
大袈裟だ。
十五階なんて何度も行っている。
ただ、次に配信をするなら少し準備はした方がいいかもしれない。
昨日はコメントをほとんど読めなかったし、ドローンのバッテリーも途中で切れそうになった。せっかく見てくれる人がいるなら、その辺りも考えた方が良さそうだ。
「そういえば、あのドローンの予備バッテリーってまだ売ってる?」
「行く気満々じゃねえか……」
健太が頭を抱えたところで、二限開始十分前のチャイムが鳴った。
***
同じ頃。
東京都内にある探索者協会本部。
国内に存在するダンジョンの管理、探索者資格の発行、魔物や素材に関する情報収集、そしてダンジョン内で発生した事故への対応。
それらを担う組織の一室で、昨日の配信映像が繰り返し再生されていた。
大型モニターに映っているのは、一階でのフレイムリザード戦。
その前には五人の男女が座り、誰も口を開かずに映像を見つめている。
やがて映像が終わると、続いて二階での戦闘へ切り替わった。
三体のオーク型魔物。
青年がそのうちの一体を拳で吹き飛ばしたところで映像が止められる。
「……これを未登録の一般人が?」
最初に口を開いたのは、五十代ほどの男だった。
「現時点では探索者登録を確認できていません。海外の探索者資格については現在照会中ですが、本人は配信中に探索者ではないと明言しています」
「問題は本人より、こちらのダンジョンでしょう」
別の職員がそう言うと、大型モニターの表示が切り替わった。
一階から十階まで、配信映像から確認された魔物と内部環境が階層ごとにまとめられている。
「既存の国内ダンジョンとの一致は?」
「ありません。映像に映っていない部分が多いため断定はできませんが、少なくとも公開されている国内ダンジョンの情報とは一致しません」
その言葉を聞いて、室内の空気が僅かに重くなった。
「では、本当に未登録ダンジョンの可能性があると?」
「高いと考えています」
国内で新たなダンジョンが発見されること自体は、極めて珍しいものの前例がないわけではない。
山奥に存在していて長期間発見されなかったケースや、私有地内に出現して所有者すら存在に気付いていなかったケースも過去にはあった。
しかし、今回のケースは明らかにそれらとは違う。
「本人の発言が事実なら、少なくとも七年前には存在していたことになります」
「それを当時十三、十四歳程度だった少年が一人で探索していた?」
「はい。本人は現在三十八階まで到達しているとも発言しています」
誰もすぐには答えなかった。
常識的に考えればあり得ない。
一階にフレイムリザードが出現するようなダンジョンへ、中学生が一人で潜り続けて生き残れるはずがない。
しかし、配信に映っている青年の戦闘能力を見れば、その発言を完全に否定することもできなかった。
「身元は?」
「現在確認中です。現時点で分かっているのは、大学生であること、実家の裏山にあるダンジョンへ中学生の頃から七年間潜っていることくらいです」
画面には昨日の配信から切り出した青年の顔が大きく表示されている。
顔を隠してはいない。
声もそのまま。
本人は素性を隠すつもりなど最初からないのだろう。
「配信アカウントの登録情報からは?」
「照会手続きを進めています。ただ、正式な回答を待つよりも、公開情報から絞り込んだ方が早い可能性があります」
職員がそう答えながら、モニターへSNSの画面を表示した。
すでに『裏山探索』に関する投稿は相当な数になっている。
配信の切り抜きだけではない。
青年の正体やダンジョンの場所を推測するような投稿も増え始めていた。
その中で、一人の職員がある投稿に目を止める。
「……これは?」
投稿されたのは数分前。
大学構内らしき場所を撮影した写真だった。
遠くに二人の男子学生が写り込んでいるため顔までははっきり見えないが、投稿には短い文章が添えられている。
『大学に昨日の裏山探索の人に似てる人いるんだけど』
まだ反応はほとんど付いていない。
偶然似ているだけかもしれない。
しかし職員は画像を拡大し、昨日の配信映像から切り出した青年の姿と見比べた。
髪型。
体格。
そして服装。
「大学、特定できるか?」
「背景に建物が映っています。確認します」
その言葉を境に、室内の空気が変わった。
昨日まで協会が持っていた手掛かりは、青年本人の発言だけだった。
しかし今は違う。
配信を見た大勢の人間が、同じ青年について情報を発信している。
本人に素性を隠す意思がなくても、ネット上に散らばった僅かな情報が繋がれば、いずれ居場所まで辿り着く人間が現れるかもしれない。
「急いだ方がいいな」
五十代の男が低い声で言った。
「我々より先に一般人がダンジョンの場所を特定する可能性がある」
職員たちの表情が一斉に険しくなる。
もし場所が特定されれば、配信を見て興味を持った人間がダンジョンへ向かう可能性がある。
一階にはフレイムリザードがいる。
何の装備も持たない一般人が足を踏み入れれば、どうなるかは考えるまでもない。
「本人との接触を最優先にして、ダンジョンの場所を確認する。それと警察にも連絡を。場所が判明した場合、周辺の立入規制が必要になる可能性がある」
「分かりました」
職員たちが一斉に動き始める。
大型モニターでは再び映像が再生され、何も知らない青年がフレイムリザードへ向かって歩いていた。
***
午前の講義が終わった後は学食で昼飯を済ませ、そのまま午後の講義にも出席した。
そして夕方。
俺はいつものように大学近くのコンビニでレジに立っていた。
「いらっしゃいませー」
弁当、お茶、菓子パン。
いつも通り商品をレジへ通していく。
「八百二十六円です」
客がスマートフォンをかざすと決済音が鳴り、そのまま商品を持って店を出ていった。
「ありがとうございましたー」
客が離れたのを確認し、レジ横の商品を補充する。
大学へ行って講義を受け、夕方からコンビニで働く。
昨日配信した動画が何十万回も見られているらしいが、俺自身の生活は何も変わっていない。
隣のレジにいる健太だけは、さっきから妙な顔で何度もこちらを見ていた。
「何だよ」
「いや……お前、本当に普通にバイトしてるんだなと思って」
「当たり前だろ」
「昨日あんな配信した奴が?」
「配信したらバイト休んでいいの?」
「そういう意味じゃねえよ」
意味が分からない。
俺の時給は千百二十円。
配信で百万円稼げるようになったわけでもないのだから、普通に働くしかない。
「次の配信、いつやるんだ?」
健太が客のいないタイミングを見計らって聞いてきた。
「まだ決めてないけど、たぶん週末かな」
今日は月曜日だ。
大学もあるし、バイトも入っている。
次にまとまった時間が取れるなら、土曜日くらいになるだろう。
「じゃあ土曜かな」
「マジでやるのか……」
「せっかくドローン貰ったし。それに、思ってたより見てくれる人いるみたいだし」
昨日より少しだけ、次の配信が楽しみになっている。
次はどんなコメントが来るのか。
十五階まで行けば、また知らなかった魔物の名前を教えてもらえるかもしれない。
何より、自分では当たり前だと思っていたダンジョンを、他の人が驚きながら見るというのが意外と面白かった。
「今度は十五階くらいまで行ってみるよ」
「お前、昼間の話聞いてた?」
健太が呆れたように俺を見る。
何か言い返そうとしたところで、店の自動ドアが開いた。
「いらっしゃいませー」
反射的に声を出す。
入ってきたのは、スーツ姿の男だった。
年齢は四十代くらいだろうか。
この時間帯なら会社帰りの客も多いので、それ自体は何も珍しくない。
しかし、その男は商品棚へ向かわなかった。
店内を一度見回した後、俺のところで視線を止める。
そのまま商品には目も向けず、真っ直ぐこちらへ歩いてきた。
「……?」
何だろう。
男はレジの前で足を止めると、俺の顔を確認するようにじっと見た。
「すみません。少しお伺いしたいことがあるんですが」
「はい?」
男はスーツの内側へ手を入れ、一枚の身分証を取り出した。
「探索者協会の者です」
俺は差し出された身分証を見た。
次に男の顔を見る。
探索者協会。
昨日の配信でも、何度かコメントに出てきた名前だ。
でも。
俺は探索者ではない。
協会に登録したこともなければ、建物に入ったことすらない。
そんな組織の人が、どうして俺のバイト先に来るのだろう。
考えてみても、理由は一つも思い浮かばなかった。
「……俺、何かしました?」
初めての配信から、まだ一日。
昨日まで俺だけの遊び場だった実家の裏山は、俺の知らないところで少しずつ大勢の人間を巻き込み始めていた。




