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俺の裏山、世界最高難度らしい ~中古ドローンでいつものダンジョンを配信したら世界中が騒ぎ始めた~  作者: 山ノ上商会


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第23話 裏山さん


月曜日。


昨日一日ゆっくり休んだおかげか、朝起きたときには筋肉痛もかなり楽になっていた。


まだ身体のあちこちに痛みは残っているが、大学へ行くくらいなら問題ない。


朝食を食べ、いつもの時間に家を出る。


昨日はほとんど一日中家にいたので、こうして大学へ向かっていると、ようやくいつもの生活に戻ったような気がする。


――もっとも。


俺の知らないところでは、いつもの生活とは少し違うことになっていたらしい。


大学まであと少しというところで、不意に後ろから声を掛けられた。


「すみません」


振り返ると、見覚えのない男性がこちらへ歩いてくる。


二十代半ばくらいだろうか。


何か落としたかと思って足を止めると、男性は俺の顔を確認するように見てから、少し興奮した様子で口を開いた。


「裏山さんですよね?」


「え?」


「配信見てます! 四十階も頑張ってください!」


「あぁ、ありがとうございます」


反射的に頭を下げると、男性は満足そうに笑い、その場を離れていった。


俺も軽く頭を下げ、そのまま大学へ向かって歩き出す。


数歩進んだところで、ふと足が止まった。


「……裏山?」


今のは、俺のことだよな?


配信を見ていると言っていたし、四十階のことまで知っていた。


人違いではない。


ただ、俺の名前は相川湊だ。


少なくとも裏山ではない。


「なんで裏山?」


考えても分からない。


少し気になったものの、講義の時間もある。


俺は首を傾げながら、再び大学へ向かった。


◇◇◇


教室へ入ると、すでに何人もの学生が席についていた。


空いている席を探しながら教室の中を歩いていると、何人かから視線を向けられていることに気付く。


以前にも、似たようなことはあった。


配信を始めて少し経った頃、大学で何となく視線を感じたことがある。


ただ、今日はそのときとは明らかに違った。


感じる視線の数が、比べものにならないほど多い。


近くを通った学生がこちらを見て、その隣にいる友人へ何かを話している。


その友人も俺を見て、さらにその隣までこちらへ視線を向ける。


「……?」


さすがに気のせいではないだろう。


何なんだ?


空いている適当な席に座り、鞄を机の横へ置く。


それから少しして、教室の後ろの扉が開いた。


遅れて入ってきた健太が教室を見回し、俺を見つける。


そのままこっちへ歩いてくると、開口一番。


「お、裏山」


「……」


思わず健太を見る。


「何だよ」


「お前も?」


「何が?」


「大学に来る途中で、知らない人から『裏山さんですよね?』って声掛けられたんだけど」


「もう声掛けられたのかよ」


健太が面白そうに笑う。


「だから何なんだよ、裏山って」


「お前、本当に知らないの?」


「知らないから聞いてる」


「昨日ネット見た?」


「ほとんど見てない」


「やっぱりな」


健太がポケットからスマートフォンを取り出し、何かを検索して俺の前へ差し出した。


画面には動画が表示されている。


見覚えがあった。


俺だ。


《深淵の四眼》との戦闘。


ただし、俺が配信した動画そのものではない。


戦闘部分だけが短く編集され、字幕まで付けられている。


表示されている再生数を見て、思わず画面へ顔を近付けた。


「……何これ?」


「お前の切り抜き」


「それは分かる。再生数」


「昨日の時点でこれ」


「…………」


桁を数える。


もう一度数える。


「……こんなに見られてるの?」


「だから言ってんだろ。今、お前すごいことになってるぞ」


健太が画面を操作する。


次に出てきたのは、俺が魔力を全身へ巡らせてから《深淵の四眼》へ向かっていく場面だった。


さらに次は、門番を倒した直後。


その次には三十九階の石碑。


『第八門番――《深淵の四眼》の単独討伐を確認』


あの音声が流れるところだけを抜き出した動画まである。


「こんなにあるの?」


「こんなもんじゃないぞ」


「まだあるのかよ」


「海外にも転載されまくってる」


健太が別の動画を見せてくる。


確かに映っているのは俺だが、画面に表示されている文字はほとんど読めない。


「これ何て書いてるの?」


「英語」


「それは分かる」


「俺だって全部読めるわけじゃねえよ」


「じゃあ見せるなよ」


健太が笑いながら画面を戻す。


「とにかく、今めちゃくちゃ有名になってるってことだよ」


「……そんなに?」


「そんなに」


あまり実感がない。


配信を見てくれる人が増えているのは分かっていたし、コメント欄の流れる速度も最初とは比べものにならない。


それでも配信を終えてしまえば、俺はいつも通り家に帰るだけだ。


昨日だって筋肉痛が酷くて、一日のほとんどを家で過ごした。


動画がネット上でどれだけ広がっているのかなんて、ほとんど考えていなかった。


「それで、裏山って何?」


「ああ、それな」


健太が再びスマートフォンを操作する。


今度は動画ではなく、いくつもの記事や投稿が並んでいた。


『裏山、ついに門番撃破』


『裏山の身体強化、途中から別人すぎる』


『第八門番をソロ討伐した裏山とかいう大学生』


『裏山さん四十階いつ行くんだ?』


「…………」


どの記事を見ても、どのコメントを見ても。


裏山、裏山、裏山。


画面が《裏山》で埋め尽くされている。


「何これ」


「お前の呼び名」


「俺には名前あるんだけど」


「知ってるよ」


健太が画面をスクロールする。


そこには普通に俺の名前も書かれていた。


相川湊。


年齢。


大学生。


それどころか、俺が通っている大学の名前まで出ている。


「……本名も出てるじゃん」


「出てるな」


「じゃあ相川でいいだろ」


「もう遅い」


「何が?」


「ネットって一回呼び名が定着すると、なかなか変わらないんだよ」


そういうものなのか。


納得はできない。


ただ、朝から周囲に視線を向けられている理由は理解できた。


「というか、大学まで出てるのは嫌だな」


「そのうち家までバレるんじゃね?」


「さすがにそこまではないだろ」


「いや、お前ネット舐めすぎ」


健太が呆れたように言う。


「大学まで分かってるんだから、時間の問題だと思うぞ」


「……そういうもんなの?」


「そういうもん」


そう言われても、いまいち実感がない。


家の場所が知られるのは確かに嫌だけど、だからといって何をすればいいのかも分からない。


「まあ、お前ん家に嫌がらせしに行こうなんて奴は、そうそういないと思うけどな」


「なんで?」


「《深淵の四眼》を一人で倒す奴の家だぞ」


「……関係ある?」


「あるだろ」


俺にはよく分からなかった。


健太がスマートフォンをポケットへ戻すと、今度は俺の腕へ視線を向ける。


「それより、腕はもう大丈夫なのか?」


「ああ。傷はもう塞がってる」


「あれだけ血出てたのに?」


「ポーション飲んだからな」


服の袖を少し捲り、腕を見せる。


三本の赤い傷跡はまだ残っているが、出血はもちろんない。


「すげえな、ポーション」


「母さんにも見てもらったけど、もう大丈夫だって」


「そういや、親にバレたって昨日メッセージ来てたな」


「……バレた」


「やっぱ怒られた?」


「めちゃくちゃ」


「そりゃそうだろ」


健太は笑っているが、俺としては笑い事ではない。


「七年間黙ってたんだぞ? 俺が親でも怒るわ」


「俺も今ならそう思うよ」


昨日の時点では、まだ母さんも納得していなかった。


それでも、ダンジョンへ行く日は必ず伝えること。


危険だと思ったら無理をしないこと。


怪我をしたら隠さないこと。


その三つは約束した。


今までのように誰にも言わず裏山へ向かうことは、もうできない。


「そういや、協会からも電話来たんだろ?」


「ああ。明日また協会に行くことになった」


「やっぱりか」


「今回の配信について詳しく話を聞きたいって。あと、前に話してた魔石とポーションも渡すことになってる」


「ああ、お前がずっと持ってたやつか」


「うん。使い道も分からなかったから、そのまま置いてた」


「魔石って協会が買い取ってくれるんだろ?」


「そうみたい」


健太は少し楽しそうに笑った。


「全部でいくらになるか、楽しみだな。裏山さん」


「だから裏山はやめろって」


「いいじゃん。覚えやすいし」


「お前が裏山って呼ばれてみろよ」


「絶対嫌だ」


「だろ?」


そんな話をしているうちに、講義の開始時間が近付いてきた。


健太が近くの空いている席へ移動する。


俺も教科書を取り出しながら、もう一度周囲を見る。


昨日までと同じ教室。


座っている人間だって、ほとんど変わらない。


それなのに、俺を見る視線だけが明らかに増えている。


配信を始めてから、色々なことが変わった。


でも、まさか自分の名前まで変わるとは思わなかった。


もちろん実際に名前が変わったわけではないけど、少なくともネットでは《相川湊》より《裏山》の方が通じるらしい。


◇◇◇


翌日。


昨日健太にも話した通り、今日は探索者協会へ行くことになっている。


日曜日に佐伯さんから電話があり、今回の配信について詳しく話を聞きたいと言われた。


できれば翌日にでも、とかなり急いでいる様子だったが、月曜日は大学がある。


そう伝えると少し間があったものの、結局、話を聞くのは火曜日ということになった。


俺としては、ダンジョンも大事だけど大学も大事だ。


そのついでに、以前話していた魔石とポーションも持っていく。


約束の午前十時になる少し前、家の前に一台の車が停まった。


窓から確認すると、以前にも見た探索者協会の車だった。


迎えに来てくれるとは聞いていたので、すでに出かける準備は済ませてある。


ちょうどインターホンが鳴った。


「湊、来たんじゃない?」


リビングから母さんの声が聞こえる。


今日は仕事が休みで、朝から家にいた。


「多分」


玄関を開けると、そこに立っていたのは佐伯さんだった。


「おはようございます、相川さん」


「おはようございます。今日はわざわざありがとうございます」


「いえ。こちらからお願いしたことですから」


話していると、後ろから母さんも玄関へやってきた。


「湊、協会の方?」


「うん。佐伯さん」


俺がそう答えると、母さんが佐伯さんへ頭を下げる。


「初めまして。湊の母です」


「初めまして。探索者協会の佐伯です。相川さんには以前から調査にご協力いただいています」


「こちらこそ、息子がお世話になっています」


母さんがもう一度頭を下げる。


協会の職員相手に母親から「息子がお世話になっています」と言われると、何となく大学の先生にでも会っているような気分になる。


「あ、そうだ」


忘れるところだった。


「魔石、今日持っていくんですよね?」


「はい。前回お話ししていたものですね」


「取ってきます」


自分の部屋へ戻り、床に置いていた段ボールを一つ抱える。


ダンジョンから何となく持ち帰っては、そのまま溜めていた魔石だ。


玄関へ戻り、段ボールを床へ置く。


「これです」


「ありがとうございます」


佐伯さんが段ボールを持ち上げようとして、その重さに一瞬動きを止めた。


「結構重いので気を付けてください」


「……そうですね」


一度床へ戻し、箱の蓋を開ける。


中には大小様々な魔石が詰まっている。


佐伯さんがしばらく無言で中を見つめた。


「……相川さん」


「はい?」


「この中身、全部魔石ですか?」


「はい」


「…………」


「あと二箱あるので、持ってきますね」


「……あと二箱?」


「はい」


「ハハハ……」


なぜか乾いた笑いを浮かべる佐伯さんを残し、俺は残りの段ボールを取りに部屋へ戻った。


◇◇◇


湊が廊下の奥へ消えていく。


玄関に残された佐伯は、足元の段ボールへもう一度視線を落とした。


隙間なく詰め込まれた魔石。


大きさも色も様々で、中には一目見ただけでは何の魔物から採取されたものなのか判断できないものまで混じっている。


「……これが、あと二箱ですか」


思わず漏れた言葉に、隣にいた湊の母親が反応した。


「あの」


「はい?」


「その魔石って、そんなに珍しいものなんですか?」


「魔石自体は珍しいものではありません。探索者がダンジョンへ入れば、比較的よく持ち帰るものです」


佐伯はそう答えてから、足元の段ボールへ視線を落とした。


「ただ、普通は探索を終えるたびに協会などへ持ち込んで換金します。これだけの量を自宅で保管している方は、私も初めて見ました」


「そうなんですね……」


母親も段ボールの中を覗き込む。


少しの沈黙のあと、母親が佐伯へ視線を向けた。


「あの、一つ聞いてもいいですか?」


「もちろんです」


「湊って……そんなにすごいんですか?」


佐伯はすぐには答えなかった。


少しだけ言葉を選んでから口を開く。


「私の立場から相川さんの実力を正確に評価することは難しいですが、少なくとも、普通の探索者にできることをしているわけではありません」


「やっぱり、そうなんですね」


「はい。今回の戦闘についても、現在協会で詳しく分析しています」


母親が僅かに俯く。


「危険なんですよね?」


今度は佐伯も迷わなかった。


「はい」


その一言に母親の表情が曇る。


佐伯は少し考えてから続けた。


「ただ、映像を見る限り、相川さんは危険を理解せずに進んでいるわけではありません。以前、今回の魔物と戦った際には、自分では勝てないと判断して撤退しています。その後も相手を観察し、準備をした上で再び挑んでいます」


「……そうなんですか?」


「ええ。少なくとも、無謀に命を懸けているわけではないと思います」


それで母親の不安が消えるわけではない。


昨日の話し合いでも、最後までダンジョンへ行くことには納得していなかった。


それでも、ほんの少しだけ表情が和らいだ。


「お待たせしました」


廊下の奥から声が聞こえる。


段ボールを抱えた湊が戻ってきた。


「これで二箱目です」


「ありがとうございます」


「もう一個取ってきますね」


「お願いします」


湊は二箱目を玄関へ置くと、再び廊下の奥へ戻っていった。


◇◇◇


三箱の段ボールを車へ積み込み、青いポーションも数本預けたあと、俺は佐伯さんと一緒に協会の車へ乗り込んだ。


魔石については査定が終わり次第、金額を連絡してくれるらしい。


父さんと母さんには、査定額が分かったら伝えることになっている。


自宅を出てしばらく走り、探索者協会へ到着する。


案内されたのは、以前とは別の会議室だった。


テーブルの上には何枚もの資料と、一台のノートパソコンが置かれている。


席へ座ると、佐伯さんがパソコンを操作した。


「では、まず先日の配信についていくつか確認させてください」


「はい」


表示されたのは、三十九階で撮影された映像だった。


壁一面に描かれた壁画。


そして広間の中央に立つ石碑。


「この壁画について、以前どこかで似たものを見たことはありますか?」


「ないです」


「《第八門番》という言葉については?」


「それも初めて聞きました」


「《試練》について、何か心当たりは?」


「ないですね」


佐伯さんが小さく頷きながらメモを取る。


「石碑に触れた際、音声以外に何か感じましたか? 例えば魔力が流れ込んでくる感覚などです」


少し考えてみる。


「特には。触ったら声が聞こえて、そのあと『40』と『1』って数字が表示されました」


「その数字について、何か心当たりは?」


「行き先を選べるみたいです。あの後『1』を選んだら、1階の隠し部屋に一瞬で移動しました」


「…一瞬で、ですか?」


「はい」


佐伯さんはしばらく頭を押さえるように考え込んだが、


「それについては、後日調査させてもらいます」


と言い、次の話題に移った。


質問はその後もしばらく続いた。


しかし、俺が答えられることはあまりない。


石碑も壁画も初めて見た。


《第八門番》なんて名前も、あの声を聞くまで知らなかった。


四十階に何があるのかと聞かれても、それこそ俺が知りたいくらいだ。


「すみません。あまり役に立たなくて」


「いえ。分からないということも重要な情報です」


佐伯さんが資料を閉じる。


「我々も現在調査を進めていますが、国内で同様の石碑や《門番》という名称が確認された例はありません。壁画についても解析を始めていますが、まだ時間が必要でしょう」


「そうですか」


少し残念だ。


協会なら何か知っているかもしれないと思っていた。


どうやら向こうも、俺と大して変わらないらしい。


「それと、もう一つ確認したいことがあります」


パソコンの画面が切り替わる。


今度は《深淵の四眼》との戦闘だった。


映像が途中で停止する。


ちょうど俺の動きが変わった辺りだ。


「このときです」


「はい」


「ここから相川さんの動きが、それ以前と大きく変化しています。何をしたか覚えていますか?」


「魔力の使い方を変えました」


「具体的には?」


少し考えてから、あのときの感覚を思い出す。


「それまでも身体の中で魔力を巡らせてはいたんですけど、ほとんど無意識だったんです」


「無意識に?」


「はい。脚を使うときは脚に多く集めたり、剣を振るときは腕に集めたり。そのとき必要な場所に魔力を集める感じで」


昨日、ベッドの上でも何度か思い返した感覚だ。


「でも途中で、それだけじゃ駄目なんじゃないかと思って」


「それで?」


「全身の魔力を意識して、身体の中をちゃんと循環させました」


佐伯さんが僅かに眉を上げる。


「意識して循環させた、と」


「はい。ただ、上手くできてたかは分からないです」


実際、あのときは《深淵の四眼》を倒すことしか考えていなかった。


身体の隅々まで魔力を巡らせる。


その感覚を掴もうとしながら戦っていただけだ。


「それまで、意識して魔力を循環させたことは?」


「多分ないです。身体強化自体、ほとんど感覚でやってたので」


「なるほど……」


佐伯さんが手元の資料へ何かを書き込む。


「やはり、かなり独特ですね」


「独特?」


「相川さんは身体強化を誰かから教わった経験がありませんからね」


「ないですね」


そもそも七年間、ダンジョンに潜っていること自体を誰にも話していなかった。


教わる相手がいるはずもない。


「一般的な探索者であれば、協会の講習を受けたり、経験のある探索者から教わったりしながら魔力操作を身につけていきます。相川さんの場合、その過程をほとんど飛ばして、実戦の中で身につけてきたわけです」


「そういうものなんですね」


自分が普通の探索者とどう違うのかなんて、今まで考えたこともなかった。


比較する相手すらいなかったのだから当然だ。


「そこでなんですが」


佐伯さんが資料から顔を上げた。


「今日、相川さんに会っていただきたい方を呼んでいます」


「俺に?」


「はい。身体強化についても、我々が説明するより、その方に直接見てもらった方がいいでしょう」


誰だろう。


そう思った直後、会議室の扉がノックされた。


「どうぞ」


佐伯さんが答える。


扉が開き、一人の男が入ってきた。


年齢は三十代くらいだろうか。


俺よりも背が高く、服の上からでも鍛えていることが分かる。


男は部屋へ入ると、俺の向かいまで歩いてきた。


「初めまして」


男が右手を差し出す。


「黒田龍一だ」


聞いたことのない名前だった。


俺がすぐに反応できずにいると、男が少しだけ笑った。


「配信じゃ《黒龍》って名前を使ってる」


「……黒龍?」


それなら知っている。


健太に初めてダンジョン配信というものを見せてもらったとき、画面に映っていたのが黒龍だった。


チャンネル登録者は二百万人。


配信を始めれば十万人以上が集まり、数時間の配信で百万円近い投げ銭が飛ぶ。


当時の俺には、探索者としてどれほど強いのかより、その金額の方が印象に残っていた。


俺が配信を始めてからは何度もコメント欄に現れ、魔物や戦いについて解説している。


その本人が、なぜか今、俺の目の前にいる。


慌てて差し出された手を握った。


「相川湊です」


「ああ。知ってる」


黒龍は俺と握手を交わすと、僅かに口元を緩めた。


「ようやく会えたな」


そして、続ける。


「裏山」


「…………」


またそれか。

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― 新着の感想 ―
もうちょっとカッコイイ配信名を考えておけばww。
魔石溜めている人で.水槽持っている人は きっとインテリアとか.キラキラした砂利(テラリウム)感覚で底に敷いてるんだ。後から回収するのに苦労する系になるんだ(●言● ")
配信が儲かるって話に釣られて配信を始めるくらいにお金を欲しがってたのに、拾った魔石の相場も調べず溜め込んでいただけってのは無理がないか
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