59話 呪術の魔女と、弛まぬ連携
城の外に広がる荒涼とした中庭。その吹き抜ける冷たい風の中で、レオン、ガレオン、ヒューガの三人は、不敵な笑みを浮かべる『呪術の魔女』エルミラと対峙していた。
「ヘリオスをあんな奴のところに置いておくわけにはいかない。さっさとこいつを片付けて、上の広間に合流するぞ!」
ガレオンが双剣を構え、鋭い気合を放つ。ヒューガもまた愛用の槍を握り締め、風の魔力を全身に纏わせた。レオンは冷静に魔導書を開き、青白い光をそのページに宿す。
しかし、エルミラは冷ややかな嘲笑を浮かべ、懐から不気味な黒い液体が詰まった薬瓶のようなものを地面へと投げつけた。
「ふん、私を相手にできると本気で思っているのかしらね。お前たちの相手には、私の研究室から這い出してきた可愛い『実験の副産物』たちをくれてやるわ」
地面に激突した薬瓶から、どす黒い霧が噴き出し、たちまち無数の異形の怪物たちが姿を現した。肉体が歪み、這いずるようにして三人に襲いかかるおぞましい群れ。
だが、今の三人の敵ではなかった。
「……鬱陶しい。まとめて冷え固まれ!」
レオンが冷徹につぶやき、魔導書を激しく一冊めくる。周囲の温度が急激に低下し、一瞬にして広範囲を覆う絶対零度の吹雪が吹き荒れた。
「――氷魔導・絶対零度界っ!」
放たれた凄まじい冷気は、襲いかかってきた無数の怪物たちをものの数秒で完全に氷漬けへと変えた。レオンが軽く手を振るうだけで、カチカチに凍りついた怪物たちの彫像は脆くも粉々に砕け散り、地面へと瓦礫のように崩れ落ちていく。
「よし、一網打尽だな……って、おい!?」
ヒューガが声を上げたその瞬間、砕け散ったはずの無数の怪物たちの破片が、奇妙な意思を持ったかのように互いに引き寄せ合い、ぐにゃぐにゃと融合を始めた。
破片が集まり、重なり合い、やがてそれは数メートルをも超える異形の「巨大な怪物」へと姿を変えた。
「……おいおい、今度はデカブツかよ」
ガレオンが呆れたようにため息をつく。しかし、融合して巨大化したとはいえ、その巨体ゆえに動きはひどく鈍重だった。巨腕を持ち上げるのにもノロノロと間があり、周囲の空気を揺らすほどのプレッシャーはあったものの、三人の目には、あまりにも隙だらけの動作に映っていた。
「あくびが出るほど遅いな。隙だらけだ」
ヒューガが鼻で笑い、レオンとガレオンにアイコンタクトを送る。言葉はなくとも、旅路で培った阿吽の呼吸が三人の意思を一つに結びつけていた。
「一撃で終わらせるぞ。合わせろ!」
レオンが空間を固定する極寒の魔力を放ち、怪物の足元を完全に地面へと縛り付ける。
「逃がさないぜ……! 雷光双破斬ッ!」
ガレオンが紫電の閃光を放ちながら一気に間合いを詰め、怪物のバランスを完全に崩す。
そして、その生み出された最大の隙めがけて、ヒューガが風と剣気を極限まで圧縮した渾身の一撃を叩き込んだ。
「――風雷氷結・三位一体閃っ!」
風の加速、雷の破壊力、そして氷の固定化が完璧に融合した三人の合体技が、巨大な怪物の中心を直撃した。
『――ガァァァァァッ……!!』
怪物の断末魔が響き渡る暇もなく、凄まじい衝撃波が広場を切り裂き、巨大な怪物は原形すら留めないほどの細かい光の粒子へと粉砕され、霧散していった。
圧倒的な連携で雑兵を葬り去った三人は、再び鋭い視線をエルミラへと向け、次の戦いへと身構えるのだった。
一瞬にして雑兵の群れを葬り去った三人は、再び鋭い視線をエルミラへと向けた。
しかし、自慢の実験作があっけなく粉砕されたというのに、エルミラに動揺の色は一切なかった。彼女は不気味な笑みを浮かべたまま、ほこりを払うように優雅に立ち上がる。
「ふふっ……まあいいわ。あんなものはあくまで実験の産物、失敗作の副産物にすぎないもの。私の想定内よ」
エルミラは冷徹な眼光を光らせ、自らの両手から禍々しい呪術の闇を迸らせた。
「雑魚の相手はここまでだ。……今度は、この私自身が直接お前たちの相手になってあげるわ」




