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英雄が紡ぐ物語   作者: 色タコス
第1シーズン 太陽の戴冠

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54話 極点の閃光と、絶氷の獄界

崩落が進む地下牢の底は、もはや原形をとどめていない。頭上からは無数の巨石が雨あられと降り注ぎ、足元は激しい地鳴りと共に大きく割れ始めていた。


そんな崩壊の瀬戸際で、ジンガーとジークは互いに最後の一撃を溜め込むように静かに立ち尽くしていた。周囲の喧騒が嘘のように遠ざかり、二人の間には張り詰めた緊張感だけが支配している。


ジークは狂気を帯びた瞳を爛々と輝かせ、全身の氷の魔力を限界を超えて膨れ上がらせた。周囲の空気が一瞬にして凍りつき、水蒸気が一粒の霜へと変わる。


「ひゃはははっ……! いいだろう、終わりだ副聖騎士長! お前のその足掻きも、すべて俺の氷の中で永遠に凍りつかせてやるよ!」


ジークが両手を大きく広げ、周囲の空間ごとすべてを凍結させる最強の奥義を解き放つ。


「――絶氷・獄界封殺っ!!」


絶対零度の吹雪が津波のように押し寄せ、空間のすべてを青白い氷の檻へと閉じ込めようと襲いかかる。

それに対し、ジンガーの瞳には一点の曇りもなかった。彼は荒ぶる感情のすべてを心の奥底へと沈め、自らの全神経と肉体の機能をただ一点へと極限まで集中させる。構えた剣に緑の魔力が収束し、周囲の光さえも吸い込むかのような圧倒的な静寂を生み出した。


(シリル……俺のすべてをかけて、お前を取り戻す!)


ジンガーが死角なき隙を断つ究極の剣技を解き放つ。


「――極点・無明断っ!!」


閃光――。


視界のすべてを焼き尽くすほどの強烈な一閃が、絶対零度の吹雪の只中へと真っ直ぐに突き進んだ。


『――ガキィィンッ……!! ズシャアァァァッ!!』


極限の閃光と、すべてを凍らせる絶氷の吹雪が正面衝突した瞬間、想像を絶する凄まじい衝撃波が地下牢の空間を完全に吹き飛ばした。


激しい爆発の光が闇を切り裂き、轟音とともに地下牢はついに耐えきれず、盛大に崩壊の底へと沈んでいく。


限界を迎えていた地下牢はついにその構造を保てなくなり、大規模な崩落を引き起こして完全に瓦礫の山へと変わり果てる。数々の拷問具が散乱し、冷たい石壁は跡形もなく砕け散っていた。


激しい衝撃の果て、両者の技は文字通り相打ちとなった。


凄まじいダメージを受け、全身から鮮血を流しながらも、『血塗れの遊戯者』ジークの身体は何とか致命傷を免れていた。彼は崩れゆく足場と容赦なく降り注ぐ瓦礫の隙間を縫うように這いつくばり、辛うじて地下牢の崩壊から逃れることに成功した。


「はぁ……はぁ……っ、くそっ……あいつ、最後の最後に……!」


這う這うの体で安全な回廊へと逃げ延びたジークは、ボロボロになった身体を押さえながら荒い息を吐き出す。しかし、その顔に勝利の歓喜の色はなく、ただ冷や汗を流しながら背後を振り返っていた。


肝心のジンガーの行方は、完全に分からなくなっていた。


地下牢の崩壊に巻き込まれ、瓦礫の底へと埋もれたのか、それとも辛うじて別の空間へ脱出したのか。周囲を探すだけの余力も残されていないジークには、その生死すら確かめる術はなかった。


相打ちの末に訪れた沈黙。

仲間たちの待つ戦場から離れた暗闇の中で、ジンガーの運命は深い霧の向こうへと消え去っていくのだった。

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