第51話 風と雷の連携
激しい轟音が響き渡るロキの居城の広間。
「金剛盤石」
城の防衛を担う巨漢の戦士・バルドに対し、ヒューガとガレオンの二人が鋭い対峙を見せていた。バルドの全身は、周囲の岩盤を取り込んだかのような強固な岩の魔力によって、分厚い装甲で完全に覆われている。
「くっ……! 何だこの硬さはまるで動く城塞じゃねえか!」
ヒューガが愛用の槍を構えながら舌打ちする。その剣身には、鋭い気圧を伴う緑色の風の魔力が激しく渦巻いていた。
一方、ガレオンも新調した双剣を十字に構え、チリチリと音を立てる紫電の雷魔力を全身に纏わせている。
「お前たちのその小手先の攻撃など、俺の岩壁の前には無意味だ!」
バルドは低く不敵な笑い声を上げると、自身の纏う岩の魔力をさらに活性化させた。彼の両腕から巨大な岩の塊がせり出し、重戦車のごとく突進しながら繰り出す必殺の重撃を放つ。
「――岩塊重撃・地揺破っ!」
大地をえぐり取るような圧倒的な質量を伴った一撃が、ヒューガとガレオンへと襲いかかる。
二人は咄嗟に左右へと跳び退き、辛うじて直撃を免れたが、着地した床が粉々に砕け散るほどの凄まじい衝撃波が走り抜けた。
バルドの圧倒的な防御力とパワーの前に、二人はなかなか有効打を与えられず、少しずつ追い詰められていく。岩の装甲はあらゆる物理攻撃や魔法を弾き返し、鉄壁の守りを見せつけていた。
(このままじゃ、耐久戦に持ち込まれてジリ貧だ……どうにかしてあの装甲を剥がさねえと……!)
ヒューガは激しい攻撃をかわしながら、必死に頭
を回転させた。その時、ふと頭の片隅に自然の理がひらめく。
――岩は、風にさらされれば削られ、やがて風化していく。
「ガレオン……! 思いついたぞ!」
ヒューガは素早くガレオンの隣へと飛び退き、小声で自分の作戦を伝えた。
「岩は長い年月をかけて風に削られ、風化していく……! 俺の風の魔力をあの野郎に集中させて浴びせ続ければ、あの頑丈な装甲を脆く摩耗させられるはずだ!」
ヒューガの言葉を聞き、ガレオンは鋭い眼光を輝かせた。さすがの戦闘勘で、すぐにその意図を汲み取る。
「なるほど……! ならば、こうしよう。お前が風で奴の装甲の結合を弱め、脆くなったその瞬間を俺がこの雷の魔力で撃ち抜く!」
「よし、乗った!」
二人の意思が完璧に疎通する。作戦は即座に実行に移された。
ヒューガは前方に踏み出し、愛用の剣を大きく振りかぶる。彼の全身から吹き荒れる風の魔力が限界まで高まり、巨大な竜巻を伴った無数の風の刃へと変化した。
「――風霊疾走・風化の刃っ!」
ヒューガが放った無数の風の刃が、バルドの全身をまるで暴風のやすりのように激しく切り刻み、削り続ける。バルドはその風圧に顔をしかめ、岩の装甲で身を守ろうとしたが、絶え間なく吹き付ける風の魔力は、確実に岩石の結合を蝕み、表面を脆く風化させていった。
「ちっ……何だこの風は……!?」
装甲の硬度がみるみるうちに低下していくのを察知し、バルドが動揺の色を浮かべる。
その瞬間を見逃さなかったガレオンが、疾風の如く踏み込んだ。
「今だ……! 隙だらけだぜ、バルド!」
ガレオンの新調した双剣に、ありとあらゆる雷の魔力が一点へと極限まで集中する。バルドが脆くなった装甲を立て直そうとするよりも速く、ガレオンは渾身の奥義を叩き込んだ。
「――雷光双牙・破岩砕っ!」
紫電の奔流を纏った双剣の突きが、風化して脆くなったバルドの岩の装甲の中心を正確に射抜いた。
『――ガキィィンッ……!! パリィンッ!!』
凄まじい爆発音とともに、これまで難攻不落を誇っていたバルドの岩の装甲が、まるでガラス細工のように盛大に粉々へと砕け散った。
「ぐああっ……!馬鹿な、俺の装甲が……!」
装甲を失ったバルドはバランスを崩し、その巨体を大きくよろめかせる。
風と雷の完璧なコンビネーションが、強敵の鉄壁の守りを完全に打ち破った瞬間だった。




