第37話 牙を折る絶望
シリルが固有魔力の結界でヒューガの傷口を必死に繋ぎ止める背後で、怒りと焦燥に燃える4人の戦士たちが一斉に動き出した。
「ふざけやがって……! 仲間の仇を取りやがる! この双剣で地獄へ送ってやるぜ、ゼノンッ!!」
『雷迅双牙斬!!(らいじんそうがざん)』
ガレオンが愛用の双剣に凄まじい雷の魔力を纏わせ、雷鳴轟く必殺の連撃『雷迅双牙斬』を放ち、怒涛の勢いで間合いを詰める。周囲の空気を焦がすほどの破壊力を秘めた突撃だった。
だが、ゼノンは虚無的な瞳のまま静かに踏み込み、その無造作に振るった一太刀でガレオンの雷撃を真正面から叩き伏せた。
『――ガキィンッ!!』
耳をつんざく高音と共に、ガレオンの左手に握られていた双剣の片方が真っ二つにへし折られる。圧倒的な【無】の衝撃がガレオンの身体を直撃し、彼はそのまま大きく吹き飛ばされて地面に崩れ落ちた。愛用の武器を無力化され、ガレオンは悔しげに歯を噛みしめることしかできない。
「っ……! ならば、次は僕だ!」
『氷牙蒼穹槍!(ひょうがそうきゅうそう)』
続いて、レオンが氷の魔力を極限まで高め、極寒の槍雨を降り注ぐ奥義『氷牙蒼穹槍』を展開する。無数の氷の槍を生み出して一斉にゼノンへと撃ち出した。空を覆うほどの弾幕が、すべてを凍てつかせる勢いで殺到する。
しかし、ゼノンはわずかに身体を流すだけで、その剣技による圧倒的な真空の刃の奔流を巻き起こし、飛来したすべての氷の槍を粉微塵にかき消してしまった。レオンの放つ強力な魔術も、ゼノンの前ではただの無力な露にすぎなかった。
「隙だ――!」
レオンの攻撃が弾かれたその瞬間、ゼノンの姿が文字通りかき消えた。
あまりの神速にレオンが目を見開いた時には、すでにゼノンは彼の懐へと飛び込んでいた。致命傷こそ辛うじて避けたものの、ゼノンの放った鋭い掌打と無の圧力がレオンの急所を的確に捉え、魔力を封じ込めるようにしてその場に無力化させた。
仲間たちが次々と倒れ、血に染まる廃墟のなかで、立ちはだかるのはわずかに二人となった。
ゼノンは冷徹な眼差しをゆっくりと向け、その静かな瞳の焦点をヘリオスとジンガーへと合わせたのだった。




