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シーズン1:神剣の叙事詩 5世代の英雄が紡ぐ物語  作者: しー


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第2話 侵略

平和な王国ルミナス。王太子ヘリオスにとって、その穏やかな日常は永遠に続くものだと信じられていた。しかし、その幻想は突然の脅威によって音を立てて崩れ去る。ロキが、王国を陥落させるべく牙を剥いたのだ。


ロキの真の狙いは、国を支える聖なる「アスカリオン」だった。堅牢な城壁はロキの放つ得体の知れないソルシュによって瞬く間に破られ、王国騎士団はなす術もなく蹂躙されていく。かつての栄華を誇った王城は、一瞬にして阿鼻叫喚の地獄へと変貌した。

炎に包まれた王の間。扉を蹴破り、ヘリオスが血相を変えて駆けつけたとき、そこにはすでに悲劇の光景が広がっていた。


侵略の数日前。ロキは王国を滅ぼすための事前準備として、禁忌の地へと足を踏み入れていた。そこで手に入れたのは、「魂の牢獄」というある1人の強大な魔力を閉じ込めたに由来する圧倒的な力――その魔力を無限の力へと変換する禁術だった。本来この世界には炎、水、氷、風、岩、雷、草の基本の7属性に光と闇の力の合計9種類しか無い。

だがロキの力はそのどれにも属しないものであった。その深淵なる死の波動を纏ったことで、ルミナスの堅牢な城壁も神聖な結界も、ロキの敵ではなくなった。

もちろん、そんな禁忌の力の存在など、ヘリオスが知る由もない。国の貴族だと思っていたロキが、「魂の牢獄」という得体の知れないの力を手に入れているとは夢にも思わず、異変を察知して炎に包まれた王の間へと駆けつけたとき、すでに戦いは決していた。


「父上……!」

床に崩れ落ちるように倒れ伏す国王の姿を認め、ヘリオスは絶叫しながら駆け寄る。その傍らには、見たことも感じたことの無いドス黒いソルシュを纏っているロキが、冷酷な笑みを浮かべて立っていた。

「遅かったな、王太子殿下。いや、もう『王』と呼ぶべきか?」

ロキの声には、底知れぬ嘲りと余裕が満ちていた。ヘリオスは怒りと恐怖に震えながらも、脳裏によぎる最悪の予感に血の気が引くのを覚える。

「ロキ……! お前、城の奥にいた妹は……マニーはどうした!」

「ほう、妹の心配か。安心しろ、あの子の魂もすぐに父親のあとを追わせてやるさ。いや、あるいは私の手元で永遠に泣き叫ばせる人形にするか……どちらがいいと思う?」


「貴様……ッ!」

怒りと絶望に顔を歪め、ヘリオスは震える手で腰の剣を引き抜き自身の炎のソルシュの力を使いロキに飛びかかったがドス黒いなにかに防がれてしまう。

「驚いたか? これは『魂の牢獄』より引き出した力だ。この王国に終わりを告げ、お前の父親の魂も、私の新たなコレクションに加わったというわけだ」


「魂の牢獄……そんなもの、聞いたこともない……! ふざけるな、許さない、絶対に許さないぞ!」

涙を堪え、ヘリオスは怒号とともにロキへと突進した。だが、圧倒的な格の違いの前に、ロキはわずかに体をかわし、手元に魔力を纏わせた片手でヘリオスの腹部を撃ち抜く。

「ぐっ……!」

強烈な衝撃に吹き飛ばされ、ヘリオスは冷たい床へと叩きつけられた。呼吸が詰まり、視界が歪む。

「無駄な抵抗だ。お前のその薄汚い剣で、魂の牢獄の力を得た私を傷つけられるとでも思ったか?」

ロキは冷ややかに見下ろすと、地面に這いつくばるヘリオスを無視し、すでに虫の息となっている国王へと歩み寄った。

「待て……! やめろ、ロキ……!」

「――ヘリオス……マニーを……守れ……」

血に染まった床の上で、父である国王が掠れた声で最期の言葉を絞り出す。そして、その手は力なく床へと落ち、二度と動かなくなった。

「父上――っ!」

ヘリオスの悲痛な叫びが、炎の燃え盛る部屋に虚しく響き渡る。ロキは冷酷な足取りでその場に歩み寄り、我が子の目の前で、冷徹にそのとどめを刺したのだった。

「よく見ろ、これが弱き王の末路だ。妹の命が惜しければ、せいぜい這いつくばって逃げ回るがいい、ヘリオス」


すべてを奪い去ったロキは、絶望に打ち震えるヘリオスにあえて視線を合わせることすらせず、嘲笑を残したまま闇の中へと消えていく


冷たくなった父の亡骸から離れがたい思いを断ち切り、ヘリオスは血に濡れた剣を固く握りしめた。理性が復讐心へと変わり、ロキの背中を追って王の間を飛び出す。ロキが向かった先は、城の地下深くにあり、「アスカリオン」が祀られている「龍の玉殿」だった。

崩落しかけた石造りの階段を、ヘリオスは傷だらけの体を引きずりながら駆け下りる。地下の回廊に漂うのは、耐え難いほどの凍てつく死の気配だった。闇の奥から聞こえてくるのは、ロキの不敵な足音と泣き声だ。

崩落しかけた石造りの階段を駆け下りたヘリオスの前に飛び込んできたのは、城内を逃げ延びていた妹のマニーだった。恐怖に震えながらも、マニーは兄の姿を見つけて駆け寄り、その腕にしがみつく。

「兄様……! お父様が……!」

「マニー……無事だったか。後ろに下がっていてくれ」

そこへ、冷酷な気配を纏ったロキが追いつくように姿を現した。

「ほう、少々道に迷っていたがまだ虫けらが這いずり回っていたか。だが、ちょうどいい」

激昂したヘリオスはマニーを後ろへかばい、祭壇の台座に突き立てられていた一族の秘宝――神剣アスカリオンを引き抜いた。刀身から眩い光が放たれ、一族の形見である神剣がヘリオスの闘志に応えて共鳴する。

「ほう、アスカリオンを引き抜くか。だが、それがどうした」

ロキは余裕の笑みを崩さぬまま、ドス黒い魔力を纏わせた手を構える。

ヘリオスは神剣を掲げ、死力を振り絞って突撃した。アスカリオンの神聖な刃がロキを捉えかけたその瞬間、魂の牢獄から溢れ出たドス黒いの波動が圧倒的な重圧となってヘリオスを押し戻す。

「ぐああっ……!」

神剣の光がかき消され、衝撃波に弾き飛ばされたヘリオスはマニーと共に床へと転がり落ちた。アスカリオンの重さに腕が痺れ、圧倒的な力の差の前に為す術もない。

「これ以上、私に時間を割く気はないのでね。その剣の輝きは、せいぜい絶望を耐え抜くための糧にするがいい」

冷徹に言い放つと、ロキはそれ以上追撃することなく、闇に溶けるようにその場から姿を消した。

静寂を取り戻した地下聖堂の中、冷たくなった父の亡骸と圧倒的な無力さに直面しながら、ヘリオスは震える妹の手をしっかりと握り締める。血にまみれた手で神剣アスカリオンを掲げ、妹と共に城を脱出した少年は、いつかロキを討ち果たすための復讐の鬼と化すことを誓うのだった。


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