第14話 鉄腕の激震、聖都襲来
静かな興奮と充実感に包まれていた聖騎士団の訓練場に、突如として地を揺るがすような凄まじい轟音が響き渡った。
ドゴォォォンッ!!
「なんだ……!? 地震か……いや、この魔力は……!」
ジンガーが鋭く眉をひそめ、訓練場の石畳から視線を王都の正門の方へと向ける。三人の若者たちも、ただならぬ気配を察知して一斉に武器を構え直した。
聖都の誇る堅牢な外壁――その正面の大門が、まるでおもちゃの積み木のように内側へと粉々に吹き飛んでいる。もうもうと立ち込める砂塵の向こうから、圧倒的な存在感を放つ巨体の影がゆっくりと姿を現した。
巨漢の男――『六人の大罪人』の一人、『鉄腕の巨獣』バルドである。
「おいおい、聖都の門ってのはもう少し頑丈にできてるもんだと思ってたが……拍子抜けだな」
バルドはニヤリと不敵な笑みを浮かべ、その巨腕を軽く鳴らした。彼の纏うソルシュ――【岩】のソルシュが周囲の重力を歪め、一歩踏みしめるごとに大地がメキメキとひび割れていく。
「名乗れ、貴様は何者だ?」
ジンガーの問に彼は答えた。
「6人の大罪人の1人……そしてロキ様の忠実なる配下『 鉄腕の巨獣』バルドだ!」
(『六人の大罪人』『 ロキの配下』……本物の化け物が、自ら城に攻め込んできただと……!)
ロキの配下として絶望を植え付けんとする強敵が、今、まさに目の前に立ちはだかっている。その圧倒的な威圧感に気圧されそうになる中、ヘリオス、ヒューガ、レオンの三人は顔を見合わせ、力強く頷き合った。直前までジンガーの『原生牢獄』を打ち破った一ヶ月間の特訓の成果――それを、この本物の大罪人相手に今こそ見せつける時だと。
「――行くぞ!」
ヒューガの『重槍・流星穿孔』が空間を引き裂きながらバルドの懐へ突き刺さり、レオンの『霊子結界・絶対零度陣』がその足元を凍てつかせて動きを鈍らせる。そして、その極小の隙を突いて、ヘリオスの『爆炎昇華・烈日の龍』が極限の熱量を伴ってバルドの胸元へと炸裂した。
ドォンッ!! とすさまじい爆風が吹き荒れる。
「……っ、どうだ!」
ヘリオスたちが息を呑んで見据えた砂塵の向こう。バルドの巨体は確かに揺らいでいた。その頑強な鎧と肉体は削り取られ、確かな深傷を負い、赤い血が地面を濡らしている。
しかし――バルドは倒れなかった。
「おっ……ほう? なかなかいいパンチと槍じゃねえか。ガキどもの遊びにししちゃあ、骨が折れそうないい一撃だぜ」
バルドはニヤリと不気味な笑みを浮かべたまま、血を吐き出しながらも何事もなかったかのように巨体を揺らして立ち上がる。致命傷には程遠く、むしろその一撃でバルドの闘志に火がついてしまったかのように、周囲の魔力がさらに重く、凶悪に膨れ上がった。
「っ……これだけの攻撃でも、致命傷にならないのか……!」
冷や汗が頬を伝うヘリオスたちの前に、一歩、と頼もしい足音が響く。
「……よくやった。一ヶ月の成果としては上々だ。だが、ここから先は相手が違いすぎる」
冷徹な瞳に深い怒りと闘志を宿し、ジンガーが愛用の武器を構えながらスッと三人の前へ歩み出た。彼は振り返ることなく、静かに、だが圧倒的な威圧感をもって告げる。
「お前たちは下がっていなさい。ここからは――副聖騎士長である、私の仕事だ」




