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「もう訓練するのかい?治ったとは言え、少し早くないかい?もう少しゆっくりしても」
「ありがとうございます、ウブール様。……ですが、できるだけ早く力をつけたいのです」
「そうか。君の中で、意志が固まっているんだね――しっかり気をつけて訓練するんだよ!?」
心配そうなウブールの顔に、ますますやる気がみなぎる。
「はい!ありがとうございます!では、行って参ります!」
ウブールに頭を下げると、私は別室で動きやすい靴と服に着替えた。アーシャと共に待っていると、少しして数人の屈強な男が現れた。
「ウブール様よりお話を伺っております。騎士団長のブレイドと申します。リリア様、本日はどうぞよろしくお願いいたします」
慣れたように頭を下げる先頭のブレイドに続き、後ろの騎士達もぎこちなく頭を下げる。ブレイドは短い茶髪で、清涼感のある優しい顔立ちをしていたが、どこか圧力があった。
「あ、頭をお上げください!私はこれから教わる身ですし、むしろ、無理を言ってご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。本日は私の事を新兵だと思って接してください!」
私はいたたまれなくなって、すぐに頭を下げ返す。目の前の男から、小さな乾いた笑いが聞こえた気がした。
「こちらこそ頭をお上げください、リリア様。――しかし心意気がすごいですね。お望み通り、訓練では新兵と同じ扱いをさせていただきますので。では参りましょうか」
そう言って歩き出したブレイドの後ろに、アーシャと共について行く。他の騎士達は、私とアーシャの後ろを足並みそろえて歩いていた。
しばらくして前方から声が聞こえるようになった。
「おい、お前ら!座り込むんじゃねぇ!そんなんじゃマンダリンの糞共に首を切られるぞ!」
「声を出せ!腹の底から!相手を蹴散らせ!お前らの力はそんなもんか!?」
訓練場についたのだと、すぐに分かった。若い男性が剣や槍や弓を持ち、叫び、うめき、取っ組み合い、吐いていた。
「全体!一時訓練止め!十秒以内に集合!」
ブレイドの声が、訓練場にとどろく。騎士の動きが一瞬ピタッと止まり、すぐに動き、私たちの前でぴっしりと隊列を組み始めた。もめる事なく、声を発する事なく、十秒もかからず集合が完了した。
「前から言っての通り、本日、リリア様が訓練に参加される!挨拶!」
「「「よろしくお願いいたします!リリア様!」」」
隊列を組んだ騎士全員が私に向かって同時に頭を下げ、勢いよく上げる。なんだかいたたまれなくなって、私は少し目をそらした。
「リリア様は厳しい鍛錬をお望みだ!特別扱いはしない!一日数時間、貴様らと同じように扱うものとする!――ただし!リリア様に粗相を働く者は、即刻打ち首だ!それだけは肝に銘じておけ!」
「「「はっ!!!!」」」
「では持ち場に戻れ!新兵はその場に残れ!」
「「「はっ!!!!」」」
一糸乱れぬ動きと声。すぐに多くの者が先ほどまでいた持ち場に戻り、若い騎士が数十名残った。
「ではリリア様、いえ、リリア!貴様はこれより新兵と同じメニューを一部こなしてもらう!教官は私だ!私の命令に対しての受け答えは『はい』か『Yes』だ!わかったか!」
「は、はい!」
「声が小さい!」
「はいっ!!」
「全力で訓練を行わない場合は、即刻退場いただく!わかったな!」
「はいっ!!」
「よし!貴様ら!今日の初めのメニューは外周百周だ!いつも通り、歩くのは禁止!水分は走りながら取れ!倒れて動けなくなれば、笛をならすように!リリア!貴様にも笛を渡しておく!」
ブレイドは私に銀色に輝く小さな笛を渡した。両手で受け取り、胸ポケットにしまう。
「タイム目標は前回よりも三十秒早いこと!目標をクリア出来なかった者は、罰として坂ダッシュを百本だ!分かったか!」
「「「はっ!!!!」」」
「リリアはタイム測定からだ!決して手を抜くことがないように!」
「はいっ!!」
「ではさっさと走りに行け!後ろからマンダリンの兵に追いかけられてると思って、死ぬ気で走れ!戦場ではまず脚力がないと生き残れん!走れ!死ぬ限界まで走れ!」
「「「はっ!!!!」」」
若い騎士が走り始めた。私は彼らに必死について行く。コースも分からないのだ。見失うわけにはいかない。自分の力をつけなければ。私は無能なのだから。




