表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
46/50

第46話 カメラの外の告白

《カメラ目線未検出》


 ユウマは、レンズを見なかった。


 巨大カメラの赤いランプは、まだ告白ステージを照らしている。白い花びらの投影が床を流れ、壁一面のコメント欄は、熱を帯びたまま加速していた。


【黒瀬こっち見ろ】

【告白くる?】

【カメラ外すなよ】

【いや、今外したのが答えだろ】


「黒瀬くん」


 天井のスピーカーから、久我山の声が降る。


「カメラへ。今の表情は逃せない。白銀さんも、視聴者へ向けてください。これは最終回です」


 ユウマは返事をしなかった。


 カメラではなく、レイナを見る。


 レイナも、巨大レンズを見ていない。剣の柄に添えた指が、わずかに震えている。けれど、それは退くための震えではなかった。


 ユウマには、足元の線が見えていた。


 レンズへ向かう太い黒い線。そこに立てば、感情反応は跳ねる。番組が望む告白になる。シンクロ率も、おそらく上がる。


 その隣に、細い白い線があった。


 数字には向かわない。


 ただ、レイナへ向かう線だった。


「俺は、ずっと見る側にいれば傷つけずに済むと思ってた」


 レイナは黙って聞いている。


 コメント欄が揺れた。


【黒瀬?】

【それ告白?】

【カメラ見てない】

【いいから聞け】


「でも違った。見ているだけじゃ、誰かを置いていくこともある」


 ユウマは一歩だけ進んだ。


 カメラに近づくためではない。レイナの隣へ届くために。


「俺は、白銀さんと隣に立ちたい。怖いところも、逃げてるところも、見られたままでいいから」


 レイナの唇が、少しだけ開いた。


 番組なら、ここで甘いテロップを重ねる。最大シンクロ率、最終告白、運命の瞬間。そんな文字で、この沈黙を埋める。


 でも、今の二人に必要なものではなかった。


「私は」


 レイナが言う。


 声は高くない。綺麗に整ってもいない。


「怖くない剣士でいたかった。誰より前に出て、誰にも迷ってるところを見せない剣士でいたかった」


 レイナの指が、柄を握り直す。


「でも、あなたの前では、怖いまま剣を抜ける」


 ユウマは、すぐに返せなかった。


 見えていた線より、その言葉の方が近かった。


 久我山の声が割り込んだ。


「白銀さん。その言葉をカメラへ――」


「私は、一人で前に出るのが怖かった。でも、あなたが隣にいるなら進める」


 それは、恋リアの告白としては不器用だった。


 好きです、とは言わない。


 付き合ってください、とも言わない。


 けれど、戦う二人にとっては、それ以上の言葉だった。


 測定円が、二人の足元に広がる。


《黒瀬ユウマ × 白銀レイナ》

《シンクロ率 五十一%》

《感情反応:安定》

《ペアスキル波形:一歩先の剣路/完全安定》

《カメラ目線:未検出》


【五十一%?】

【低くない?】

【六十二から下がってるじゃん】

【違う、完全安定だ】

【ガチ勢だけど今の波形、揺れがない】

【数字より接続見ろ】

【これ、番組が欲しい反応じゃないやつ】


 久我山が沈黙した。


 その沈黙の奥で、スタッフの誰かが小さく言う。


「完全安定……?」


「違う」


 久我山の声が戻る。


 穏やかさが、剥がれていた。


「足りない。感情反応が足りない。最大値まで届いていない。これでは、最終回にならない」


 レイナがユウマを見る。


「ユウマ」


「はい」


「次は、剣を抜く」


「見ています」


「見るだけじゃなくて」


 ユウマは頷いた。


「隣にいます」


 その瞬間、床の白い花びらが止まった。


 一枚。


 また一枚。


 白が、黒く染まっていく。


《感情誘導演出、強制再起動》

《告白演出、最大負荷へ移行》

《未公開素材、全投入》

《カメラ目線誘導、再設定》


 巨大カメラの赤いランプが、二人を照準のように捉えた。


 ステージの奥で、黒い蔦が音を立てて芽吹いた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ