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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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40/50

第40話 レイナの選択

《最終ペア選択まで、残り三十分》


《桃瀬ミナ 黒瀬ユウマへの指名を放棄》

《久遠サヤ 黒瀬ユウマへの指名を辞退》

《神楽アリス 指名拒否》

《白銀レイナ 指名待機中》

《黒瀬ユウマ 未選択》


【残った】

【いや残ったって言い方違うだろ】

【ユウレイしかない】

【黒瀬、逃げるな】


 訓練場の照明は、いつもより少し暗かった。


 床には白い線が引かれている。


 第一区画の模擬動線。


 第三区画の踏み込み位置。


 第十二隔壁で、ユウマが火壁の前に入った位置。


 剣が空気を切る音がした。


 レイナは一人で素振りをしていた。


 ドローンは遠い。訓練場の端で、赤いランプだけが点いている。番組はここも撮っている。けれど、リビングほど近くはなかった。


「来たのね」


「呼ばれたので」


 レイナは剣を下ろした。


 鞘に収める音が、短く響く。


「最終ペア選択、もう始まってるわ」


「はい」


「ミナも、サヤも、アリスも、自分で選んだ」


 ユウマは頷いた。


「見てました」


「私は、少し怖かった」


 その言葉は、訓練場の床に静かに落ちた。


「三人が黒瀬を選んだら、あなたはどうするのか。三人が選ばなかったら、あなたは楽になるのか。どちらも、見たくなかった」


 レイナは真っすぐユウマを見る。


「でも、見た」


 白い線が、レイナの足元から伸びている。


 第二区画の最後の一歩で切れた線。


 怖くないと言った瞬間にねじれた線。


 第十二隔壁で、ユウマが前に出た時、もう一度つながった線。


 今、その線は震えていた。


 けれど、切れていない。


「私は、あなたが必要。戦力としてだけじゃない」


 ユウマは答えに詰まった。


 戦力として必要。


 その言葉なら、何度も聞いた。


 その外側に踏み込まれると、どう返せばいいか分からなかった。


 レイナは一歩近づく。


「あなたが見る私は、怖い。でも、見てほしい」


 レイナはユウマの手を取った。


 手袋越しでも、指の力が分かった。


「あなたは、私の恐怖を見た。だから今度は、私があなたの逃げているところを見る」


 ユウマは息を止めた。


 見るだけだった。


 後ろにいれば、誰かを傷つけずに済むと思っていた。


 選ばれたいと言いながら、危険に晒したくないという言葉で逃げた。


 ノアの声が蘇る。


 見えてるなら言いなよ。


 レイナの声も。


 なら、次は選んで。言い訳なしで。


「私は、あなたに選ばれたい。でも、選べないなら、それも見る」


 逃げ道を塞ぐ声だった。


 でも、責める声ではなかった。


 ユウマはレイナの手を見た。


 剣を握る手。


 怖いまま前へ出た手。


 選べない弱さまで見ると言った手。


 ユウマは顔を上げた。


「白銀さん。俺は、あなたと隣に立ちたい。あなたに選ばれたいし、俺もあなたを選びたい」


 訓練場の音が消えた。


 コメント欄も、羽音も、モニターの効果音も、一瞬だけ遠くなる。


 レイナは目を逸らさなかった。


 それから、ほんの少しだけ口元を緩めた。


「遅い」


「すみません」


「でも、聞いた」


 レイナは手を離さないまま、訓練場の扉へ向かった。


「行くわよ」


「どこへ」


「公開選択会場」


 扉が開く。


 リビング中央には、すでに測定円が展開されていた。


 ミナがソファの背にもたれている。サヤが医務室側の廊下に立っている。アリスはスタッフ導線の入口近くで端末を握っている。カイトもガクも、モニターの前にいた。


 全員が見ていた。


 カイトがモニターを見上げた。


「この指名、本当に自由意思として処理されるのか」


 誰も答えなかった。


 画面だけが、淡々と表示を変えた。


《最終ペア選択》

《公開指名、開始》


《白銀レイナ 黒瀬ユウマを指名》


【レイナ様先に入れてた】

【もう泣く】

【黒瀬、言え】

【全員見てるぞ】


 ユウマの端末に、指名画面が表示される。


《黒瀬ユウマ》

《最終ペア指名対象を選択してください》


 ミナは笑っていた。


 サヤは祈るように手を握っていた。


 アリスは端末から顔を上げていた。


 その全員を見て、それでもユウマは、レイナの隣へ進む線を選んだ。


 逃げない。


 ユウマは、端末を押した。


《黒瀬ユウマ 白銀レイナを指名》


《相互指名成立》

《最終ペア決定》

《黒瀬ユウマ × 白銀レイナ》


【きたああああ】

【ユウレイ確定】

【黒瀬が選んだ】

【ミナもサヤもアリスも見てるのやばい】


 測定円が青く光った。


 粒子は派手に跳ねなかった。


 金色の演出もない。


 ただ、二人の足元から伸びる線が、静かに重なる。


《黒瀬ユウマ × 白銀レイナ》

《シンクロ率 三十六%》

《接続:安定》

《ペアスキル波形:一歩先の剣路/安定》


【低くない?】

【最終ペアで三十六%?】

【でも接続安定って出てる】

【探索者勢、これやばくね?】

【波形が全然揺れてない】


 ユウマには見えていた。


 これまでで一番静かな線だった。


 レイナの剣先へ伸びる白い線。


 ユウマの足元から、半歩後ろではなく、隣へ伸びる線。


 レイナの剣路は、ユウマの足元を追い越さなかった。


 隣から、同じ速度で前へ伸びていた。


 強く光るわけではない。


 けれど、途中で切れない。


 レイナは手を離さなかった。


「告白ダンジョン、行くわよ」


「はい」


「見るだけじゃなくて?」


 ユウマは頷いた。


「隣に立ちます」


 モニターが暗転する。


 次の告知だけが、白く浮かび上がった。


《告白ダンジョン》

《開門まで残り十二時間》


 続いて、もう一つの表示が出た。


《演出素材、最終同期中》


《未公開音声:白銀レイナ》

《未公開ログ:黒瀬ユウマ》

《脱落者音声:橘ノア》

《内通者ログ:神楽アリス》

《炎上コメント抽出:完了》

《使用許諾:番組規約第十二条により承認済》


 ミナが立ち上がった。


 サヤが息を呑んだ。


 アリスの顔から血の気が引いた。


 レイナの手に、力が入る。


 ユウマの視界で、告白ダンジョンへ伸びる黒い線が、二人の足元に触れた。


《黒瀬ユウマ × 白銀レイナ専用演出、生成開始》


《告白ダンジョン》

《開門まで残り十二時間》


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