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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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37/50

第37話 ミナの選択

《最終ペア選択まで、残り八時間》

《指名権、各出演者に順次付与》


《白銀レイナ 指名待機中》

《桃瀬ミナ 指名待機中》

《久遠サヤ 指名待機中》

《神楽アリス 出演継続投票中》

《黒瀬ユウマ 未選択》


【ミナユウまだある?】

【レイナ様本命だろ】

【ミナちゃんがどう動くか見たい】


 ミナはユウマを屋上に呼び出した。


 ただし、いつものように配信映えする中央ではない。


 上がってすぐ、彼女はカメラの位置を三つ確認した。手すりの角度を見て、ドローンの巡回を待ち、給水タンクの影へ入る。


「ここ、完全な死角じゃないけど、マイクが遠い」


「慣れてますね」


「配信者だからね」


 ミナは笑った。


 いつもの笑顔だった。


 けれど、作り方が少し違った。


「私はたぶん、最初は黒瀬くんを利用してた」


 ユウマは否定しなかった。


 頷いた。


 ミナは目を丸くして、それから苦笑した。


「そこ、優しく否定してくれないんだ」


「嘘を言うところじゃないと思ったので」


「そういうとこだよ」


 風が、ミナのリボンを揺らした。


「第二回ペア選択の時、ミナ、投票見てから黒瀬くんの前に行った。バズると思った。レイナちゃんから取ったら、絶対切り抜かれると思った」


 明るい声だった。


 でも、軽くはなかった。


「で、実際伸びた。ミナユウ派もできた。悪くないって思った」


 足元の線は、まだ数字に伸びている。


 コメント欄へ。ランキングへ。ドローンへ。


 けれど、以前と違って、それはまっすぐではなかった。


 途中で曲がり、ミナの手元のノートへ戻ろうとしている。


「でも、今は利用できなくなった。数字を見るたびに、黒瀬くんがどう思うか考える」


 ミナは、可愛く笑った。


 そして、可愛いだけでは終わらせなかった。


「これ、たぶん好意なんだと思う。黒瀬くんに見てほしいし、選ばれたら嬉しいと思う」


 カメラに映るなら、ここで涙を作ればいい。


 黙れば、コメント欄が勝手に盛り上がる。


 けれどミナは、言葉を続けた。


「でも、それを番組の勝ち負けに使わせたら、私、また戻る。伸びるなら使うって、ノートに書いた時の私に」


 ミナはポーチからノートを出した。


 配信ノート。


 ページには、サムネ案、導線、コメント傾向、企画名が並んでいる。その中に、黒い線で消された言葉があった。


《伸びるなら使う》


 その下に、新しい文字。


《出演者を消費しない番組。探索者がちゃんと自分の言葉で話せる場所》


「私は、誰かに選ばれる配信者じゃなくて、自分で番組を作る側になる」


 ユウマはノートを見た。


 綺麗事だけではなかった。


 数字もある。演出もある。伸ばし方もある。


 ミナはこれからもカメラを見る。


 でも、その中心に、人を壊して数字にする線はなかった。


 屋上の入口で、足音が止まった。


 レイナだった。


 少しだけ離れた場所で、二人を見ている。聞こえているかどうか分からない距離だった。


 ミナはそちらを一瞬だけ見て、苦笑した。


「レイナちゃん、強いよね」


「はい」


「でも、強い人だって不安になるよね」


 ユウマは答えられなかった。


 ミナはノートを閉じる。


「黒瀬くん」


「はい」


「私、黒瀬くんのこと、たぶん好きだよ」


 その言い方は、配信者の告白ではなかった。


 数字を取りに行く声でもなかった。


「でも、だからこそ、久我山さんの最終ペア争いに置かない」


 ミナは一歩、カメラに映る位置へ戻った。


《桃瀬ミナ、指名入力中》


【え】

【黒瀬行く?】

【ミナユウくる?】


 ミナは端末を操作した。


 指先が、黒瀬ユウマの名前の上で一度だけ止まった。


 止まって、震えて、それでも離れた。


「だから私は、最終ペアにはならない」


《桃瀬ミナ》

《黒瀬ユウマへの指名を放棄》


【放棄って言い方よ】

【ミナあああ】

【番組に消費されない宣言じゃん】


 ユウマの視界で、ミナの線がカメラから少し離れた。


 代わりに、ノートへ。


 ミナ自身の手へ。


 静かに戻っていった。


《演出素材同期》

《桃瀬ミナ:未公開ノート映像、抽出完了》


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