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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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36/50

第36話 炎上後の共同ハウス

《次回》

《最終ペア選択、予定通り実施》


 夜が明けても、その文字は共同ハウスのモニターに残っていた。


 誰も、恋の告知として見ていなかった。


《緊急投票》

《神楽アリスの出演継続可否、投票中》


《一番信じたい人 一位 黒瀬ユウマ》

《一番許せない人 一位 神楽アリス》

《一番説明してほしい人 一位 久我山トオル》


【アリス降ろせ】

【いや番組側が出てこい】

【黒瀬大丈夫か】

【恋リアじゃねえだろ】

【でも見るのやめられないの最悪】


 リビングの空気は、これまでで一番重かった。


 ミナはタブレットを膝に置き、保存済みログの数を確認している。サヤは医務室の方を何度も見た。カイトは腕を組んだまま、番組側の説明画面だけを睨んでいる。ガクはソファの背に拳を置き、ずっと貧乏揺すりをしていた。


《探索者協会、安全確認を要請》

《スポンサー三社、番組側へ説明要求》

《公式タグ:説明しろ久我山 急上昇一位》


「出演者の中に番組側の人間を混ぜていた。そこを説明しないまま進める気か」


 カイトの声は低かった。


「進めるんだろ」


 ガクが吐き捨てる。


「数字、出てるからな」


 その時、モニターが白く切り替わった。


《番組プロデューサー》

《久我山トオルより、視聴者の皆様へ》


 久我山は、深く頭を下げた。


「昨夜の配信において、出演者の皆様、視聴者の皆様に大きな不安を与えたことを、番組責任者としてお詫び申し上げます」


 声は丁寧だった。


 謝罪文も、よく整っていた。


「神楽アリスさんの出演経緯については、現在、内部確認を進めております。安全管理体制についても、再度見直しを行います」


【内部確認じゃなくて外部入れろ】

【謝り方うまいな】

【止めるって言わないの怖い】

【久我山出てきたぞ】


 久我山は顔を上げた。


「ですが、出演者の皆様は、ここまで自分の言葉で選択を重ねてきました。その歩みを、番組側の都合で一方的に止めることは、彼らの選択を奪うことにもなります」


 ミナが小さく笑った。


「言い方、ほんと上手」


 レイナは笑わなかった。


 剣の柄に触れた指だけが、少し動いた。


 久我山の背後に、金色のロゴが浮かび上がる。


《最終企画:告白ダンジョン》

《最終ペアに選ばれた二人が、ダンジョン最奥で告白》

《シンクロ率が規定値を超えた場合、番組史上最高のペアスキルが発動》


 華やかな音楽が流れた。


 白いゲート。花びらのような光。過去のペア攻略映像。レイナの剣。ミナの炎。サヤの治癒光。アリスの微笑み。


《恋をしたら強くなる》

《嘘の恋なら、死ぬ》

《最後に本音を告げるのは、誰と誰か》


【最終回企画きた】

【この状況で告白!?】

【ユウレイ行け】

【サヤユウもまだある】

【黒アリは荒れるぞ】


 説明映像の途中で、画面が一瞬だけ乱れた。


《告白ダンジョン試験映像》

《被験ペア:非公開》

《シンクロ率 四十一%》

《接続:不安定》

《感情誘導素材、挿入》


 砂嵐のようなノイズ。


 誰かの笑い声。


 未公開映像のタグ。


 脱落投票の数字。


 炎上コメントの抽出枠。


 告白音声を切り取った波形。


 それらが、ダンジョンの壁面演出へ細く接続されていく。


 ユウマには、線が見えた。


 攻略補助へ伸びる線ではない。


 踏み込みを支える線でも、発動条件を整える線でもない。


 感情を揺らし、接続を乱し、シンクロだけを無理に跳ねさせる線。


「これ、最奥まで行く途中で流す気だ」


 ミナの声が硬くなった。


「未公開、コメント、脱落投票、告白音声。全部、感情を揺らす素材にしてる」


 サヤは「告白」という文字に顔を伏せかけた。


 けれどすぐ、試験映像の《接続:不安定》を見る。


「攻略中に、そんなものを見せられたら……」


「足が止まる」


 カイトが言った。


 ガクが拳を握る。


「止まるだけで済むかよ」


 レイナは静かにユウマを見た。


 その視線には、問いがあった。


 見るだけで終わるのか。


 ユウマは、画面から目を逸らさなかった。


「最終ペア選択には出ます」


 自分の声が、リビングに落ちた。


 ミナも、サヤも、レイナも、カイトもガクも、ユウマを見た。


「でも、これは恋の企画じゃない。感情を壊すための攻略です。俺は、それを見ます」


 モニターの中で、久我山が微笑んだ。


《最終ペア選択》

《本日二十時、公開指名開始》


 告白ダンジョンへ伸びる黒い線が、静かに揺れていた。


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