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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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33/50

第33話 ユウマの読み負け

《本日シンクロ測定》

《黒瀬ユウマ × 神楽アリス》


《本音が見えない女》

《人の本音を暴く男》


 公式テロップが出た瞬間、ユウマは小さく息を吐いた。


 本音を暴く男。


 それは違う。


 心が読めるわけじゃない。感情の名前が分かるわけでもない。見えるのは、スキル線の断裂、発動条件と動作のズレ、共鳴の乱れだけだ。


 けれど番組は、分かりやすい言葉に変える。


 分かりやすい言葉は、事実より強い。


 測定室には、白い床と円形の計測陣があった。中央に立つと、足元から薄い光が上がる。壁面にはコメント欄と波形が並ぶ。


 アリスは隣に立った。


「緊張しますね」


「そう見えません」


「見えるようにした方がよかったですか」


 冗談の形をしていた。


 けれど、ユウマは笑えなかった。


《測定開始》

《黒瀬ユウマ × 神楽アリス》


 足元の円陣が光る。


 ユウマの視界で、アリスの線が伸びた。


 一本ではない。


 ユウマへ。床の計測陣へ。壁際のカメラへ。天井のスピーカーへ。さらに、見えない通信の奥へ。


 だが、どれも切れていない。


《シンクロ率 四十六%》

《接続:安定》

《ペアスキル波形:多重反応》


【高くない!?】

【接続安定って出てる】

【恋愛相性じゃないだろこれ】

【多重反応って何】

【黒瀬が困ってる】


 数値だけなら悪くない。


 むしろ、不自然に高かった。


 けれど安心できない。


 レイナとの低いシンクロには、白い線の先が見えた。ミナとの営業シンクロには、映える方向へ伸びる線の歪みが見えた。サヤの治癒には、守りたい相手へ細く固定される危うさが見えた。


 アリスは違う。


 接続不良がない。


 破綻もない。


 それなのに、どれが本音なのか判別できない。


「黒瀬さん」


 アリスがこちらを見る。


「見えていますか」


 見えている。


 見えすぎるほど見えている。


 だから分からない。


「分からない」


 自分の声が、測定室に落ちた。


 コメント欄の流れが一瞬だけ鈍る。


【黒瀬が分からないって言った】

【初めてじゃない?】

【アリス強い】

【怖い】


 アリスは、驚いた顔をしなかった。


 少しだけ、寂しそうに笑った。


「黒瀬さんは、誰よりも人を見ているのに、自分が見られることには慣れていないんですね」


 その言葉は、まっすぐユウマの胸に入った。


 痛いところを言われたからではない。


 それが本音なのか、演技なのか、分からなかったからだ。


 共同ハウスのモニター前で、レイナは剣を抱いたまま立っていた。


 ユウマが「分からない」と言ったことを、責める顔ではない。


 ただ、少しだけ痛む顔だった。


 選んで、と言った男が、今は別の女の前で立ち止まっている。


 レイナは剣を鞘に収めた。


 今は斬る場面ではない。


 見届ける場面だ。


 ミナはタブレットに流れる切り抜き候補を見た。


《黒瀬ユウマ、神楽アリスに敗北》

《自分が見られることに慣れていない男》

《本命レイナ、無言》


「これ、黒瀬くんの敗北じゃなくて、番組が黒瀬くんをそう見せたいだけだよね」


 声が低い。


 サヤは画面の中のユウマを見ていた。


「黒瀬さん、困ってます」


 それだけは分かった。


《次回攻略試練》

《低層・第十三分岐廊》

《推奨:索敵能力者同行》

《黒瀬ユウマ × 神楽アリス》

《高難度選択試練、実施》


 アリスの線が、また増えた。


 ユウマはそれを見ていた。


 見えているのに、読めなかった。


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