表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
31/45

第31話 アリス接近

《部門別ランキング》

《一番応援したいペア》

《一位 黒瀬ユウマ × 白銀レイナ》


《一番本音が見えない人》

《一位 神楽アリス》


《神楽アリスへの個別投票、急増中》


 朝のリビングに、その表示だけがまだ残っていた。


 昨日まで、黒瀬ユウマは「追放された最弱荷物持ち」だった。


 今は違う。


 配信用ドローンは、共同ハウスの中心にいるユウマを追っている。スタッフがマイクの位置を直す時も、昨日までより一拍だけ丁寧だった。


《急上昇ワード》

《それが俺の仕事だった》

《黒瀬の指示》

《ユウレイ一位》

《レンの本音》


【黒瀬、普通に有能だった】

【追放ざまぁ回、何回でも見られる】

【ユウレイ派、息吹き返した】

【でもアリス一位も怖い】

【本音見えない一位が動いたら終わるぞ】


 ソファの空気が昨日とは違う。


 カイトは攻略ログを閉じずに言った。


「黒瀬、昨日の指示、もう一度見返してる。あれ、盾役の位置取りまで読んでたんだな」


 ガクは脇腹を押さえながら笑う。


「俺も次から、お前の声はちゃんと聞く。死なねえためにな」


 レンはリビングにいなかった。


 レイナは窓際で剣を拭いていた。表情は動かない。けれどユウマと目が合った時だけ、手が止まった。


 なら、次は選んで。言い訳なしで。


 昨日の声が、まだ空気の中に残っている。


《推しペア投票 変動中》

《一位 黒瀬ユウマ × 白銀レイナ 首位維持》

《二位 黒瀬ユウマ × 久遠サヤ》

《三位 黒瀬ユウマ × 桃瀬ミナ》

《伸び率一位 黒瀬ユウマ × 神楽アリス》


【ユウレイ首位なのにアリス急上昇】

【サヤユウ派まだいるぞ】

【ミナユウは考察勢が強い】

【ここでアリスが来たら荒れる】


 その時、アリスがカップを置いた。


 小さな音だった。けれどドローンが一機、自然に角度を変えた。


「黒瀬さん」


 アリスは、近づきすぎない歩幅でユウマの前に来た。


 白いブラウス。柔らかい声。困らせない距離。


「今日、少しだけ二人で話せませんか」


【ここで!?】

【アリス動いた】

【タイミング良すぎる】

【黒証拠では】

【いや恋リアなんだから誘うだろ】


 ミナの目が、笑顔の奥で細くなった。


「アリスちゃん、カメラの入り方うまいね」


「そうですか?」


「うん。黒瀬くん、レイナちゃん、ランキング表示。全部まとめて入ってる」


 アリスは少しだけ首を傾げた。


「偶然です」


 偶然に見えた。


 偶然に見えるように立っているようにも見えた。


 サヤはアリスとユウマを見比べる。悪い人です、と言い切れる顔ではない。けれど、いい人です、と言うには、何かが遠い。


 レイナは何も言わない。


 止めれば、ユウマはまた誰かの後ろに下がる。そう分かっているから、レイナは止めなかった。


 ただ、ユウマの返事を見ている。


 逃げるのか。


 選ぶのか。


 その目だった。


 アリスはまっすぐユウマを見る。


「私は、黒瀬さんのこと、もっと知りたいです」


《緊急二ショット》

《黒瀬ユウマ × 神楽アリス》

《本音が見えない女は、何を語るのか》


【アリス黒説きた】

【でもこの顔は強い】

【ユウレイ派、荒れるぞ】

【レイナ様が無言なの怖い】


 ユウマは、アリスの足元を見た。


 線は伸びている。


 近づく線。カメラへ向かう線。ユウマの焦げた袖へ落ちる線。さらに、天井のどこかへ消える細い線。


 どれも切れていない。


「……分かりました」


 ユウマが答えると、アリスは小さく微笑んだ。


 同じ頃、共同ハウスの裏導線で、アリスのイヤーモニターに低い声が届いた。


「次で告白しろ。黒瀬を勘違いさせろ」


 久我山トオルの声だった。


「中途半端な同情はいらない。彼が君を信じた絵が欲しい」


 アリスは足を止めない。


「……はい」


「契約違反になれば、違約金は君の保証人にまで行く。分かっているね」


 アリスの指先が、ほんの一瞬だけ白くなる。


「分かりました」


 声は、少しだけ揺れていた。


 その直後だった。


 ユウマが廊下を通った時、壁際の棚に医療キットが置かれていることに気づいた。


 救護班用ではない。火傷処置のパックと、交換用の包帯。昨日、左腕をかすめた火線にちょうど合う。


 そこはドローンの巡回角度から外れていた。


 曲がり角の先で、アリスの白い袖が一瞬だけ消える。


 命令に従う女。


 火傷を気にする女。


 どちらの線も、同じ場所から伸びていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ