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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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3/8

第3話 第一回ペア選択

《第一回ペア選択》

《女性探索者から、初攻略のペアを指名》


 スタジオ中央に、黒いゲートを模した扉が立っていた。


 その前で選ばれたペアが並ぶ。恋愛番組らしい演出なのに、扉の表面には小さな警告灯が埋め込まれている。


《初攻略前シンクロ測定あり》

《攻略推奨ライン:三十%以上》


【恋リアなのに注意書きが物騒】

【ここから探索者番組】

【低シンクロはマジで事故る】


 ユウマは男性陣の端に立っていた。


 最後まで残ることは、始まる前から分かっている。


 最初に歩いたのはミナだった。


「私は、カイトくんで!」


 カイトが軽く目を見開き、すぐに爽やかに笑う。


「よろしく。ちゃんと守るよ」


「じゃあ、ミナもちゃんと映えるね」


【ミナカイト強い】

【初回人気ペア】

【画面が明るい】


 サヤは胸の前で手を握り、何度も視線を揺らしたあと、二階堂の前で止まった。


「あの……二階堂さん、お願いします」


 二階堂は柔らかく頷く。


「もちろん。無理はさせません」


 サヤの肩から、ほんの少し力が抜けた。


 アリスは静かに歩き、リクの前に立った。


「速水さんとなら、緊張しすぎずに行けそうです」


「任せて。俺、緊張してる人の横で一番しゃべれるから」


 アリスは綺麗に笑った。近すぎない。遠すぎない。完璧な笑い方だった。


 ノアはガクを見上げる。


「堂島くん。壁になって」


「おう!」


「あと、うるさすぎたら黙って」


「注文が明確!」


【ノアガク草】

【壁扱いw】

【でも相性よさそう】


 そして、ユウマだけが残った。


 当然のように。


【知ってた】

【余り枠】

【荷物持ちだしな】

【レイナどうすんの?】

【カイト取られたの痛すぎ】


 残っている女性は、白銀レイナだけ。


 だが、誰もその組み合わせを受け止められていなかった。多くの視聴者は、まだ「レイナがカイトを選ばなかった」現実に追いついていない。


 レイナが歩き出す。


 足音が、妙にはっきり聞こえた。


 彼女はカイトを見ない。ミナも、他の誰も見ない。


 ただ一直線に、ユウマの前で止まる。


「あなた、私と来て」


 スタジオが静まり返った。


 ユウマは、数秒前に見たコメントを思い出す。


 余り枠。荷物持ち。公開介護。


 その全部が、照明の中で自分に貼りついていた。


「……俺でいいんですか」


「いいから言ってる」


 レイナの声は冷たくない。余計なものがないだけだった。


 番組音声が入る。


「白銀さん、黒瀬さんを選んだ理由をお願いします」


 レイナは少しだけ視線を外す。


「一番弱そうだから。余計なことをしなさそう」


【やっぱり介護枠w】

【余計なことしない男、黒瀬】

【黒瀬の顔きつい】

【でもレイナが選んだのは事実】


 ユウマは笑われていることを感じた。


 慣れているはずだった。


 元パーティーでも、後ろで見ているだけだと言われた。配信に映らないから不要だと言われた。見ているだけの男に、価値はないと。


 それでも今、彼の目はレイナの足元を見ていた。


 レイナの周囲には、剣の線がある。


 抜く。踏み込む。斬る。


 流れは美しい。けれど、最後の一歩だけが切れる。


 怖いのか、迷いなのか、条件の不一致なのか。ユウマには分からない。


 見えるのは、切れている場所だけだ。


「後悔した?」


 レイナが聞いた。


 ユウマは顔を上げる。


 選ばれたのは自分なのに、試されているのも自分だった。


「いいえ」


 声は思ったよりも低く出た。


「俺を選んだなら、勝たせます」


 一瞬、コメント欄が止まる。


【え】

【言った】

【荷物持ちが最強剣士を勝たせる?】

【ちょっと今の良くない?】

【いや無理だろ】


 レイナは笑わなかった。


「そう」


 それだけ言って、ユウマの隣に立つ。


《初回シンクロ測定》


 床に円形の光が浮かぶ。


 青い線が、二人の足元から伸びる。つながろうとして、何度も震えた。


《黒瀬ユウマ × 白銀レイナ》

《シンクロ率 十二%》

《攻略推奨ライン:三十%以上》

《ペアスキル接続:不安定》


【低っ】

【相性最悪】

【これで攻略行くの怖い】

【レイナ単独の方が強いだろ】


 番組の効果音が、わざとらしく沈む。


 その直後。


 青い波形の端に、一瞬だけ白いノイズが走った。


 数値は変わらない。


 十二%のまま。


 けれど波形だけが、まるで別の何かに触れたように跳ねる。


 大型モニターの警告表示が、一瞬だけ遅れて点滅した。


《解析不能波形》


 すぐに消える。


 スタッフが小さく言った。


「測定機のノイズか?」


 ユウマは、消えた表示を見たまま首を振った。


「故障じゃないです」


 声は大きくなかった。


 けれど、近くのマイクが拾った。


「白銀さんの線じゃなくて、俺の方に反応してました。さっきも同じです」


 スタッフの動きが止まる。


 再測定の準備が始まったが、レイナはユウマを見ていた。


【今の何?】

【黒瀬、何か分かってる?】

【解析不能って出なかった?】

【十二%であの跳ね方する?】


 再測定でも、数字は低かった。


《シンクロ率 十二%》

《ペアスキル接続:不安定》


 だが波形の端だけが、また白く跳ねた。


 ユウマの側から、レイナへ伸びるように。


《初回推しペア投票》


 画面が切り替わる。


《一位 桃瀬ミナ × 朝倉カイト 四十一%》

《二位 久遠サヤ × 二階堂ユウセイ 二十二%》

《三位 神楽アリス × 速水リク 十六%》

《四位 橘ノア × 堂島ガク 十三%》

《五位 白銀レイナ × 黒瀬ユウマ 八%》


【レイナ様は好きだけど黒瀬が無理】

【事故ペアじゃん】

【でも気になるの悔しい】

【解析不能ペア、ちょっと推す】


 同じ頃。


 元Sランクパーティーの控室で、ユウマを追放した男が配信画面を見て、鼻で笑った。


「白銀レイナも番組を分かってるな。弱い男を選んだ方が、絵になる」


 彼は画面の中のユウマを指で弾く。


「後ろで見てるだけのやつが、最強剣士を勝たせる? 無理だろ」


 その声は、配信には乗らない。


 けれどユウマは、画面のこちら側で笑われていることを知らないまま、消えた白い波形を見つめていた。


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