表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
22/33

第22話 ノアの違和感

 翌朝の共同ハウスは、いつもより少しだけ優しかった。


 優しすぎた。


「サヤさん、座布団使う?」


「飲み物、温かい方がいいかな」


「無理に話さなくていいからね」


 サヤはひとつずつ礼を言った。


 前より顔は上がっている。けれど、誰かが優しくするたび、視線がカメラへ逃げる。


【サヤちゃん守りたい一位の朝】

【みんな急に優しいw】

【票狙いに見えるのが嫌】


 レイナの近くには、いつもより人が多かった。


 カイトは自然に距離を取ったまま、攻略ログの話を振る。リクは「最強剣士の朝ルーティン知りたい」と軽口を言い、すぐに引く。


 ミナの隣には、ドローンが一機増えていた。


 彼女は笑って、いつも通り手を振る。


「ミナ、今日は映えより生存重視でいきます」


「それ、今まで言ってなかったの?」


 ノアが刺した。


「言ってたよ。比率が違っただけ」


「比率で命を扱うな」


 笑いが起きた。


 起きたあと、少し遅れて、全員がモニターを見る。


 今の会話がどう流れたか。


 どのコメントが拾われたか。


 その一瞬の確認が、リビングに沈殿する。


 アリスの周りには、逆に距離ができていた。


「本音が見えない人、一位って、どんな気持ち?」


 リクが軽く聞く。


 アリスは柔らかく微笑む。


「見てくださっている、ということですよね。ありがたいです」


 完璧だった。


 完璧すぎて、次の言葉が出ない。


 ノアがテーブルに肘をついた。


「この番組、恋じゃなくて人気投票になってる」


 声は大きくなかった。


 けれどカメラは拾った。


 ミナが一瞬だけ、うなずきかけた。


 けれど、壁際のドローンがこちらを向いた瞬間、ミナは笑顔に戻った。


 ユウマには、その笑顔の線が少しだけねじれるのが見えた。


【ノア正論】

【空気読めない】

【毒舌がきつい】

【でも言ってることは分かる】

【脱落があるから違うだろ】


 リビングの空気が固まる。


 サヤは膝の上で手を握る。


 ガクはノアを見て、何か言いかけたが黙った。


 リクが明るく手を叩いた。


「ま、まあさ、票も番組の一部ってことで。朝ごはん冷めるし」


 誰も笑わなかった。


 話題を変えようとした声だけが、空中で軽く滑った。


 壁のモニター端に小さな表示が出る。


《リアルタイム反応》

《橘ノア:発言注目度急上昇》

《好意反応:割れ》

《脱落投票:増加》

《脱落危険度:上昇》


 ノアはそれを見て、鼻で笑った。


「ほら。変って言ったら、変な女として数字にされる」


 別室の管制モニターで、久我山トオルは穏やかに笑っていた。


「いいですね。橘さんは、画面を濁らせない」


 スタッフが聞く。


「フォロー入れますか」


「いりません。濁らないものは、浮きます」


 久我山はコーヒーを置いた。


「浮いたものは、よく見える」


 リビングでは、ノアがユウマの前に立っていた。


「黒瀬くん、見えてるなら言いなよ。この番組、変だって」


 ユウマは、モニターを見た。


 危険圏。


 ノアの名前が、じわじわ赤く濃くなっている。


 言えば、また燃える。


 自分だけならいい。けれど今は、サヤの票も、ミナの票も、レイナの名前も、彼と一緒に動く。


 ユウマには、出演者たちの線がランキングへ引っ張られているのが見える。


 見える。


 ただ、それを「番組が変だ」と言い切るには、まだ足りない気がした。


 また誰かの一番痛い場所に触れるかもしれない。


「……俺には、接続が歪んでいるように見えます」


「それ、便利な逃げ方」


 ノアは笑った。


「言ってることは正しいのに、主語を小さくした」


 ユウマは反論できなかった。


「人の本音には踏み込むくせに、自分の言葉はしまうんだ」


 ノアの声は、からかうには少しだけ重かった。


【ノア刺しすぎ】

【黒瀬何も言えないのリアル】

【でも番組批判したら危ないだろ】

【正論言う人から消える番組、嫌すぎ】


《第一回脱落投票》

《中間速報》

《危険圏:橘ノア、堂島ガク、神楽アリス》

《橘ノア:変動大》


 ノアはその表示を見て、肩をすくめた。


「まあ、空気読めない女から落ちるなら、番組としては分かりやすいよね」


 誰も笑えなかった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ