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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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21/31

第21話 人気投票の始まり

《特別ルール追加》

《次回から、視聴者投票で最下位の出演者は脱落》


 久我山トオルの声が、リビングの天井から降ってきた。


 誰もすぐには動けなかった。


 恋をしたら強くなる。


 嘘の恋なら、死ぬ。


 そういう番組のはずだった。


 けれど、壁のモニターは次の表示へ切り替わる。


《部門別ランキング、集計開始》

《一番応援したいペア》

《一番守りたい人》

《一番本音が見えない人》

《一番危うい人》


【推しを守れってこと?】

【脱落つき人気投票は怖い】

【票で命運決まるのやば】


 速報の効果音が鳴った。


《一番応援したいペア》

《一位 黒瀬ユウマ × 白銀レイナ》

《二位 黒瀬ユウマ × 久遠サヤ》

《三位 桃瀬ミナ × 黒瀬ユウマ》


「黒瀬くん、全方位に火種作ってるね」


 ノアが言った。


 ユウマは返せなかった。


 レイナはモニターを見ている。表情は変わらない。ただ、剣の柄に置かれた指だけが、ほんの少し止まった。


 次の表示が出る。


《一番守りたい人》

《一位 久遠サヤ》

《二位 桃瀬ミナ》

《三位 白銀レイナ》


 サヤが小さく息をのんだ。


「私……ですか」


 昨日まで、守られ治癒職と呼ばれていた。


 今は、守りたい人として画面に出ている。


 二階堂がすぐに立った。


「久遠さん、こっち座る? 冷えるとよくないよ」


 リクも笑って、ソファのクッションを寄せる。


「サヤちゃん、飲み物取る? 温かいやつ」


 優しさだった。


 たぶん、全部が嘘ではない。


 けれどユウマには、サヤへ向かう治癒線の外側に、細い別の線が絡むのが見えた。カメラへ向かう線。ランキング表示へ引かれる線。


 サヤは礼を言おうとして、言葉を詰まらせた。


「ありがとうございます。でも……」


 サヤは膝の上で手を握った。


「私、助ける側にもなれたと思ったのに」


 リビングが静かになる。


 ガクが脇腹を押さえたまま、笑った。


「なってるよ。俺が証拠だ」


 サヤは顔を上げた。


 それから、二階堂が空けたソファではなく、ガクの斜め前の椅子を引いた。


「じゃあ、ここに座ります。堂島さんの顔色、見やすいので」


 その一言で、サヤの線は少し広がった。守られる側へ押し戻されかけていた光が、自分の足元から伸び直す。


【サヤちゃん守るだけじゃないの好き】

【守りたい人一位って逆に圧だな】

【二階堂ちょっと票意識してない?】


 二階堂の笑顔が、わずかに固まった。


 さらに、画面が切り替わる。


《一番本音が見えない人》

《一位 神楽アリス》

《二位 黒瀬ユウマ》

《三位 白銀レイナ》


 アリスは穏やかに微笑んだ。


「難しいですね。自分では、隠しているつもりはないんですけど」


 声も、間も、困った顔も綺麗だった。


 誰も責められない綺麗さ。


 ユウマには、その綺麗さが少しだけ怖かった。アリスの線は、誰かへ向かう直前で薄くほどける。切れているのではない。最初から一本に見えない。


【アリス一位わかる】

【清楚なのに何考えてるか分からん】

【逆に人気出るやつ】


 最後の表示で、空気が冷えた。


《一番危うい人》

《一位 黒瀬ユウマ》

《二位 橘ノア》

《三位 堂島ガク》

《四位 神楽アリス》


 レイナが剣を拭く手を止めた。


 ほんの一瞬だった。けれどユウマには、その一瞬が見えた。


《暫定注目度》

《上位:白銀レイナ、桃瀬ミナ、久遠サヤ》

《変動大:黒瀬ユウマ》

《危険圏:橘ノア、堂島ガク、神楽アリス》


 ユウマの隣の席だけ、少し空いた。


 誰かが意図して離れたわけではない。


 けれど、誰も詰めなかった。


 ミナは数字を見ていた。


 いつものように、どう切り抜かれるかを計算している顔ではなかった。


「数字は嘘つかないと思ってた。でも、嘘の数字はあるんだね」


「嘘の数字?」


 リクが聞く。


「誰かを守りたいって数字と、落としたくないって数字と、怖いもの見たさの数字が、同じ場所に足されるんだよ」


 ユウマは足元を見る。


 出演者たちのスキル線が、互いではなく、壁のモニターへ細く引っ張られている。


 座る位置。目線。笑うタイミング。誰の隣に行くか。誰から離れるか。


 線はまだ切れていない。


 でも、恋でも攻略でもないものが、間に入ってきていた。


《視聴者投票、二十四時間後に第一回集計》

《最下位出演者は脱落》


 カメラの赤いランプが、全員の沈黙を拾っている。


 リビングはまだ共同ハウスだった。


 けれどユウマには、椅子の配置そのものが、投票所のように見えた。


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