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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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19/26

第19話 サヤの治癒暴走

《第三回攻略》

《低層・第九区画》

《治癒反応型トラップ区域》

《黒瀬ユウマ × 久遠サヤ》


《事前シンクロ率 二十%》

《攻略推奨ライン:三十%以上》

《ペアスキル接続:解析中》


《公式注目ペア》

《炎上男×守られ治癒職》


【煽りが最悪】

【サヤちゃん逃げて】

【でも黒瀬、攻略では仕事する】

【治癒反応型って回復職がいるほど面倒なやつ】


 第九区画は、低層と中層の境目に近い。


 石造りの回廊が十字に交差し、床には古い魔法陣の傷が残っている。壁の奥から、時々、金属が擦れる音がした。


 攻略ログには警告が出ていた。


《注意》

《本区画の罠は治癒光に反応して再起動する》

《過剰治癒・対象誤認により二次起動の恐れあり》


 合同支援テストのため、別ルートにはノアとガクのペアが入っていた。一定距離を保ちながら、互いの戦況だけが表示される。


《橘ノア × 堂島ガク》

《左回廊を進行中》


 サヤはユウマの半歩後ろを歩いていた。


 杖を両手で握り、何度も呼吸を整える。治癒杖の先から、薄い緑の光がこぼれていた。


 ユウマには、その光の線が見えた。


 サヤから伸びる治癒の接続線は、周囲へ広がろうとするたび細くなる。だが、ユウマの腕や背中へ向かう線だけが異常に太い。


 好意か、恩か、安心か、依存か。


 分からない。


 分かるのは、ユウマにだけ届きすぎていることだった。


「久遠さん、治す前に床を見てください。光が触れると、罠が起きます」


「は、はい」


 床から針鼠型の魔物が三体飛び出す。


 ユウマは短剣で一体の軌道をずらした。戦闘職ほどの威力はない。受け流すだけ。


 だが二体目の針が、左腕をかすめた。


 血がにじむ。


「黒瀬さん!」


 サヤの声が跳ねた。


 杖の先から緑の光が溢れる。細かった線が、ユウマへ向かって一気に太くなった。傷口を包む光は強く、温かい。浅い傷なのに、深層用の治癒結界みたいな密度だった。


《治癒出力:急上昇》

《対象:黒瀬ユウマ》


【強っ】

【サヤちゃんこんな出力あるの?】

【サヤ→黒瀬強すぎ】

【これは恋?】

【いや軽傷だぞ】


 ユウマは治癒光が床に落ちる寸前、半歩だけ右へずれた。


 光の端が魔法陣をかすめず、壁へ逃げる。


 床の罠は起きない。


 サヤは気づいていない。


 ユウマは、今のずれを覚えた。


 サヤの治癒は、向きを変えれば届く。


 だが本人が対象を見ていなければ、線は戻る。


 その直後、左回廊の表示が赤く染まった。


《警告》

《橘ノア × 堂島ガク》

《罠作動》

《負傷者あり》


 壁越しに、重い音がした。


「ノア、下がれ!」


 ガクの声が響く。


 管制の声が配信に乗った。


「堂島、左脇腹に貫通傷。救護班、待機。久遠、治癒支援可能か」


 サヤは走った。


 ユウマも続く。


 左回廊では、ガクが片膝をついていた。盾でノアをかばった姿勢のまま、脇腹に黒い杭が刺さっている。床に血が広がる。


 サヤが杖を向ける。


 緑の光が出た。


 だが、細い。


 杭の周囲に触れて、すぐ散ってしまう。さらに散った光が床の魔法陣へ落ち、赤い線が走った。


《罠再起動予兆》


「久遠さん、光を床に落とさないで。俺の右肩を中継にして、そこから堂島さんへ流してください」


「え……?」


「床じゃなくて、俺を見て。そこから堂島さんを見る」


 ユウマはガクとサヤの間に立った。


 自分を治癒対象にしろ、という意味ではない。


 サヤの線が一番太くなる場所を、通路にするためだった。


 サヤの光がユウマの右肩に触れる。


 そこからガクへ伸びようとする。


 だが、また戻った。


 サヤの手が震える。


「なんで……」


《治癒出力:低下》

《対象選択エラー》

《接続範囲:収縮》


 サヤの目に涙が浮かぶ。


「私、黒瀬さん以外を助けられない」


 恋の言葉ではなかった。


 治癒職として、自分が空っぽになったみたいな声だった。


 ユウマは一瞬、黙った。


 公式ダイジェストの言葉が頭をよぎる。


 女性探索者の感情を支配する最弱男。


 また、泣かせるのか。


 それでも、ガクの血は床に広がっている。


「俺を守りたい気持ちが悪いわけじゃない。でも、それだけだと、久遠さんの治癒は俺に縛られる」


 サヤの顔が歪んだ。


【また黒瀬が女の子泣かせた】

【今それ言う?】

【でも出力落ちてるのは事実】

【ガチ勢、治癒線見える? 光が黒瀬側に戻ってる】

【今の中継指示、罠避けてる。黒瀬やっぱ見えてる】

【治癒反応型で右肩中継? 普通その場で思いつかない】


 ガクの呼吸が荒くなる。


《生命反応:低下》

《救護班到着まで四十秒》

《罠再起動まで二十五秒》


 四十秒。


 いや、二十五秒。


 サヤが選ばなければ、間に合わない。


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