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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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17/24

第17話 サヤの小さな一途

 炎上は、共同ハウスの椅子の距離に出た。


 朝食の時間。


 ミナはいつも通り中央に座った。リクが軽口を言い、ガクが大きな皿を二枚取る。カイトは全員に水を回した。ノアはコメント欄を見て、嫌そうに眉を寄せた。


 誰もユウマを嫌っているわけではない。


 だが、カメラの前で彼の隣に座ることは、別の意味を持ち始めていた。


【黒瀬の隣に座ったら擁護派認定されそう】

【みんな距離取ってる?】

【恋リアじゃなくて炎上リアリティショー】


 ユウマは食堂に来て、皿を取らずに水だけ飲んだ。


「食べないの?」


 リクが聞いた。


「あとで」


 ユウマはそう答えて、すぐに廊下へ戻った。


 あとで、は来なかった。


 昼も、夜も、ユウマは食堂の端まで来て引き返す。誰かが話しかければ返す。だが、会話がカメラに拾われる前に距離を取る。


 その夜、二十四時間生配信のキッチン端カメラに、小さな動きが映った。


 久遠サヤだった。


 サヤは皆がリビングへ移ったあと、鍋のふたを少しだけ開けた。残っていたスープを小さな容器に移す。白いご飯を丸く詰め、卵焼きを二切れ乗せる。


 ラップをかける手が、何度も止まった。


 メモを書くか迷い、書かない。


 名前を書くか迷い、やめる。


 結局、冷蔵庫の一番下の段に置いた。


 端に寄せすぎると気づかれない。真ん中に置くと目立つ。サヤは少し考えて、飲み物の後ろに半分だけ見えるように置いた。


【今のサヤちゃん?】

【黒瀬用?】

【名前書かないの、逆にリアル】

【誰にも言わないの偉いというか、臆病というか】

【サヤ、初回で杖ロック教えてもらってた子だよね】


 ユウマは気づかなかった。


 夜中に水を取りに来て、冷蔵庫を開ける。容器は見えていた。だが自分のものだと思わず、扉を閉めた。


【気づけ黒瀬】

【そこ! 下段!】

【観察眼どこいった】

【自分宛ての優しさには鈍いの痛い】


 その様子を、廊下の影からレイナが見ていた。


 レイナは一歩出かけて、止まった。


 扉が閉じる音だけが残る。


 翌朝、サヤは冷蔵庫を開けた。


 容器は残っていた。


 彼女は少しだけ肩を落とし、また温め直して、今度はテーブルの端に置いた。ラップの上に、番組支給の小さな付箋を貼る。


《黒瀬さんへ》


 字は小さかった。


 大きく書けば、誰かに見られる。小さく書けば、見つけてもらえない。サヤは迷った末に、その大きさで止めた。


 ユウマが食堂に入ってくる。


 いつものように水だけ取ろうとして、付箋に気づいた。


「……これ」


 サヤは椅子から立ちかけ、すぐ座り直した。視線はテーブルの木目に落ちている。


「食べないと、明日動けませんから」


 声は小さい。


 カメラに拾われるかどうか、ぎりぎりだった。


 ユウマは容器を見る。冷めないように、ふたの上にタオルまでかけてあった。


 大げさに礼を言えば、サヤが目立つ。


 何も言わなければ、受け取っていないことになる。


「ありがとう」


 それだけ言った。


 サヤはこくりと頷き、すぐに視線を落とした。


 リビングの奥で、ミナがその様子を見ていた。


「サヤちゃん、強いなあ」


 ミナは笑った。けれど、いつもの配信用の笑顔ではなかった。


 レイナはテーブルの端に立ち、少しだけ眉を寄せる。


「食事を取らない探索者は、戦力として不安定になる」


「レイナさん、それ心配って言うんだよ」


 ノアが即座に刺した。


「戦力評価よ」


「恋リアで一番危ない言い方、再放送しないで」


 レイナは黙った。


 ユウマは容器のふたを開ける。


 コメント欄だけが先に火をつけていた。


【サヤちゃん、これ大声で庇えないからご飯残してるんだ】

【弱いけど優しい】

【レイナ様も不器用に見てる】

【黒瀬サヤ派、静かに発生】

【いや本命はレイナだろ】

【冷蔵庫下段、推せる】


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