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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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14/21

第14話 営業シンクロの暴走

《第二回攻略》

《低層ダンジョン・第六区画》

《黒瀬ユウマ×桃瀬ミナ》

《シンクロ率 二十六%》

《攻略推奨ライン:三十%以上》

《ペアスキル接続:解析中》


 ゲートの先は、鏡のような水たまりが点在する円形の広間だった。


 中央に割れた噴水。左右に細い通路。背後には退路。天井から黒い蔦が垂れ、ドローンがその隙間を滑る。


 床の水面が、ミナの姿を映していた。


 その映ったミナの影が、先に笑った。


《警告》

《第六区画、鏡影狼を確認》

《光・幻影系スキル、およびレンズ越しの視線に反応》


【ミナの相性悪くない?】

【炎と幻影が売りなのに】

【ドローンにも反応するの嫌すぎ】

【でも映えは最強】


 水たまりから、狼型の魔物が四体浮かび上がる。黒い体。鏡のような目。視線が、ドローンのレンズとミナの幻影を交互に追う。


 ミナは耳元の蝶ピアスに触れた。


 次の瞬間、赤い火花がそこからこぼれる。


「ミナ、いきまーす!」


 ミナが指を鳴らした。


 赤い火花が蝶の形になって広がる。炎蝶が広間の上を舞い、ミナの分身が三人に増えた。


 左通路に一人。


 噴水の上に一人。


 ユウマのすぐ隣に一人。


【派手!】

【ミナちゃんの戦闘、画面強い】

【ピアスから炎蝶出るのかわいい】

【これぞ配信者探索者】


 ミナはユウマの腕に、指先だけ触れた。


「黒瀬くん、ミナのことちゃんと見ててね」


《シンクロ率 三十二%》

《上昇》


 数字は跳ねた。


 ユウマの視界では、嫌な形で線が太くなる。


 好意に見える線だけがユウマへ伸びる。炎の線は敵へ。幻影の線はカメラへ。三本がつながる直前で、中心だけが抜ける。


 鏡影狼が一斉に動いた。


 幻影ではなく、本物のミナへ向かう。


「ミナさん、右後ろ」


「分かってる!」


 ミナの炎蝶が狼を包む。


 画面は綺麗だった。


 だが炎が広がりすぎた。


 右通路が塞がる。左通路には幻影が重なり、水面に映った狼の数が倍に増える。


 敵の位置が、見えない。


《シンクロ率 三十八%》

《急上昇》

《警告:ペアスキル接続不安定》


【高い!】

【ペアスキル来る?】

【いや退路燃えてる】

【スタッフ止めろ】


 背後の入口に炎が回った。


 ドローンが高度を上げる。管制の声が一瞬だけ配信に乗る。


「退路温度、上昇。中断判定準備」


 公式テロップが、すぐにかぶさった。


《想定外のシンクロ上昇》

《人気ペア、初攻略で急接近?》


「違う」


 ユウマは炎の向こうを見た。


「好意の線だけ太い。炎と幻影が別々の方を向いてる」


「何それ」


「今のつなぎ方だと、敵じゃなくて退路から燃える」


 鏡影狼が一体、ドローンのレンズを蹴って軌道を変えた。


 まっすぐ、本物のミナへ来る。


「ドローンを下げてください」


 ユウマが言った。


 ミナの口が動いた。


 下げないで、と言いかけた形だった。


 けれど、声にはならない。


 鏡影狼が炎の隙間から飛び込んでくる。


 ミナの幻影が笑う。


 本物のミナの手が、一拍遅れる。


 ユウマの視界で、線がねじ切れた。


「好きなふりでスキルをつなげようとしてる。だから暴れてる」


 ミナの顔から笑顔が落ちた。


「じゃあどうすればいいの? 本当に好きって言えばいいの?」


 炎が噴水をなめる。


 退路は半分赤く塞がれ、残る道は噴水の右脇だけ。


 ユウマは首を振った。


「恋じゃなくてもいい。本当のことなら、たぶんつながる」


「本当のことって何」


「俺には分かりません」


「じゃあ、どうしろって言うの!」


「カメラじゃなくて、自分に言ってください」


 ミナはドローンを見なかった。


 初めて。


 炎の照り返しの中で、唇が震える。


「見られなくなるのが怖い」


 甘くない声だった。


 可愛くもない。


 けれど、線が変わった。


《シンクロ率 二十九%》

《低下》

《接続揺らぎ:減少》


 暴れていた炎が、細く収束した。


 幻影が消えないまま、鏡影狼の目だけを惑わせる形に整う。水面に映っていた余計なミナが消え、右側に白い道が一本開いた。


「右、抜けます」


「うん」


 ミナは笑わなかった。


 炎蝶が狼の視界を塞ぐ。幻影が左へ走り、実体のミナは右へ抜けた。ユウマが続く。


「噴水の影、実体」


「見えた」


 ミナの炎が、今度は短く走った。


 派手ではない。


 けれど正確だった。


《鏡影狼四体、制圧確認》

《退路確保》

《負傷者なし》


【黒瀬また女の感情に口出してる】

【でも退路塞いだのシンクロ上がった後だぞ】

【生配信だと分かる。黒瀬、数値じゃなくて接続見てる】

【ミナの今の声、営業じゃなかった】


 攻略完了の光の中で、ミナはカメラを見た。


 いつもの笑顔を作ろうとした。


 でも、できなかった。


 その一秒だけ、桃瀬ミナは誰にも見せるためではない顔をしていた。


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