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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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13/21

第13話 見られなかった探索者

 深夜の共同ハウスは、暗いのに明るかった。


 照明は落ちている。声も少ない。けれど、カメラの赤いランプだけが、部屋の隅で消えずに点いている。


 ミナはリビングの端に座っていた。


 スマホが一台。タブレットが二台。配信ノート。案件管理表。切り抜き候補のサムネ。


《#ミナユウ》

《営業恋愛》

《ミナちゃんプロすぎ》

《黒瀬、女の内面見すぎて無理》

《でも未公開の最後、刺さった》


 その横に、古い配信ログが開かれていた。


《同時接続 十二》

《コメント 三件》

《一件:その装備どこのですか?》

《案件審査:不採用》


 ユウマは水を飲みに来て、足を止めた。


「起きてたんですね」


「黒瀬くんこそ。寝ないと、また目の下に影できるよ。ミナの隣に立つなら、そこも管理してほしいな」


 いつもの声だった。


 でも指先は、同じコメントを何度もなぞっていた。


《ミナ、誰と組んでも同じ顔するよな》


 ユウマは冷蔵庫から水を取り出す。


「消しますか」


「見ない方がいいって?」


「見て楽になるなら、見た方がいいと思います」


「楽にはならないよ」


 ミナは笑った。


「でも、見ない方が怖い」


 タブレットの横に、一枚の古い写真が挟まっている。


 地味な探索者ジャケット。今より短い髪。笑っているのに、カメラを見つけられていない少女。


「昔の私、びっくりするくらい伸びなかったんだよ」


 ミナは画面を暗くした。


「ちゃんと攻略してた。怪我も少なかった。低層なら安定してた。でもコメント三件。スポンサーもつかない。案件もない。可愛くもない、強くもない、面白くもない」


 声は軽くしようとしていた。


 けれど、軽くならなかった。


「見てもらえない探索者は、死んでるのと同じだから」


 ユウマは否定しなかった。


 そんなことない、と言うのは簡単だった。


 でもその言葉で、同接十二は増えない。


「分かるよ。俺も、見られない側だった」


 ミナの指が止まった。


 ユウマのスマホが、テーブルの上で光った。


《黒瀬、元Sランクで何してたん?》

《荷物持ちって本当に荷物だけだったの?》

《レンの時より今の方が仕事してる説》


 ユウマは画面を伏せた。


 ミナがそれを見る。


「見ないの?」


「見たいです」


「じゃあ、なんで伏せるの」


 ユウマは水のボトルを握った。


「見られたいのに、見られるのが怖いから」


 声は、自分で思ったより小さかった。


「見られたら、そこまで映る気がするんです。捨てられたところまで」


 ミナは黙った。


 カメラに向ける顔ではなくなる。


「黒瀬くんってさ、そういう時、怒らないんだね」


「怒り方が分からないだけかもしれない」


「何それ」


「見られないのに慣れると、怒るタイミングも分からなくなる」


 リビングの床に、夜間の簡易測定光が浮かぶ。


《黒瀬ユウマ×桃瀬ミナ》

《シンクロ率 二十一%》

《低下》

《接続揺らぎ:減少》


【下がった?】

【でも警告減ってる】

【また数値より接続か】

【深夜組、今の保存した】


 ミナは笑おうとして、やめた。


「今の沈黙、切り抜かれても伸びないね」


「そうですね」


「でも」


 ミナは配信ノートを閉じた。


「ちょっと、楽かも」


 その時、廊下の奥で小さな音がした。


 剣ケースの金具が閉じるような音。


 ユウマが振り向く前に、気配は消えた。


 ミナはそちらを見て、口元だけで笑った。


「レイナちゃん、強いのに分かりやすいね」


「何がですか」


「さあ。ミナにも、全部は分からないよ」


 営業用ではない沈黙が、二人の間に落ちた。


 カメラはまだ回っている。


 けれど、その沈黙には、映える角度がなかった。


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