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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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12/20

第12話 営業デート

《2ショット街デート》

《黒瀬ユウマ×桃瀬ミナ》

《視聴者投票ミッション:相手の“気になるところ”を言う》


 店に入る前から、ミナは勝っていた。


 白い外壁。大きな窓。午後二時の柔らかい光。屋外席には、小さな花瓶と、番組スポンサーのロゴが入ったドリンクが置かれている。


 向かいのビルのガラスには、二人の横顔がちょうど映る。


 配信用ドローンは三機。


 一機は上から。二機目はミナの横顔。三機目は、ユウマが困った顔をする位置。


 ミナは白い肩掛けジャケットの袖を軽く直した。桃色のリボンと蝶のピアスが、動くたびに小さく揺れる。


「この席、いいでしょ」


 ミナは椅子に座りながら言った。


「光が柔らかいし、背景に人が入りすぎない。あと、この角度だと、黒瀬くんの顔に影が出ない」


「そこまで見るんですか」


「見るよ。見られる仕事だもん」


【ミナちゃんプロ】

【デートという名の撮影設計】

【スポンサー商品ちゃんと画角に入れてる】

【黒瀬、完全に素材扱いw】


 店の外では、通行人が足を止めている。スタッフが撮影ラインを作っているが、視線までは止められない。


 ミナは気にしていないように笑った。


 気にしていない笑い方を、していた。


《ミッション》

《相手の“気になるところ”を言ってください》


 ミナは待ってました、という顔をした。


 グラスを両手で持ち、少しだけ身を乗り出す。上目遣い。近い距離。カメラに頬の丸みが一番綺麗に映る角度。


「黒瀬くんって、見れば見るほど気になるんですよね」


《シンクロ率 二十九%》

《上昇》


【上がった!】

【ミナユウありでは?】

【営業でもかわいい】

【レイユウ派、歯を食いしばれ】


 ユウマの視界では、青い数値より白い線が目立っていた。


 ミナから伸びた線は、まっすぐユウマへ向かう。


 けれど触れる直前で、薄くなる。


 表面だけが光り、奥が抜ける。


「ずっと数字を見てると、疲れないか」


 ミナの笑顔が、半秒だけ止まった。


「え?」


「今も、コメントと画角とスポンサーのロゴを見てる」


「黒瀬くん、怖いなあ。そういうの見えるの?」


「数字は見えてません。視線の戻り方と、肩の向きだけです」


 ミナは一度、テーブル端の小型モニターを見た。


《#ミナユウ》

《営業恋愛》

《距離近い》

《黒瀬、また見抜き男?》


 その横に、小さく別の表示が出ている。


《案件条件:平均同接一万以上》

《今月平均:九千二百》

《次回契約更新:保留》


 ミナはすぐに笑顔を作り直した。


「疲れても、見られてる方がマシだよ」


 声は明るい。


 明るすぎて、乾いていた。


「見られなくなったら、いないのと同じじゃん?」


 ドローンが近づく。


 ミナはタイミングを合わせて、ユウマの皿にケーキを一口分だけ分けた。


「はい。黒瀬くん、こういう時は食べさせてもらう顔して」


「難しいです」


「じゃあ困った顔でいいよ。そっちの方が伸びるかも」


【ミナちゃん距離バグ】

【黒瀬、照れないのに逃げもしない】

【営業なの分かってても刺さる】

【今の“見られてる方がマシ”重くない?】


 同時配信の別枠では、レイナとカイトの訓練ダイジェストが流れていた。


 カイトは完璧に合わせる。


 レイナは強い。迷いなく魔物型の訓練人形を斬り、カイトの攻撃にも綺麗につなげる。


《白銀レイナ×朝倉カイト》

《シンクロ率 三十一%》

《接続:安定》

《ペアスキル波形:未発生》


【普通に強い】

【王道ペア感ある】

【でも一歩先は出ないのか】

【強いけど、あの怖いまま前へ出る感じはない】


 レイナはモニターの端で、ほんの少しだけ目を伏せた。


 公式ダイジェストでは、甘い音楽がついた。


《見れば見るほど気になる》

《人気配信者ミナ、最弱荷物持ちに急接近》


 けれど、その夜に出た未公開映像は違った。


 スタッフが食器を下げ、ドローンが一機だけ残っていた時。


 ミナは伏せたスマホを指で押さえ、小さく呟いていた。


「今の、切り抜かれたら伸びるね。……伸びてほしくないけど」


 画面には、まだ数字が流れ続けていた。


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