第11話 第二回ペア選択
《次回》
《第二回ペア選択》
《いま一番バズっている男を、誰が選ぶ?》
その予告は、朝になっても共同ハウスのモニターで回り続けていた。
《前回切り抜き再生ランキング》
《一位 白銀レイナ「怖い」 八十二万再生》
《二位 黒瀬ユウマ「半歩前」 七十六万再生》
《三位 一歩先の剣路、解析班求む 六十九万再生》
《現在の推しペア投票》
《黒瀬ユウマ×白銀レイナ 四十二%》
《朝倉カイト×白銀レイナ 二十六%》
《桃瀬ミナ×朝倉カイト 十八%》
【半歩前ニキ伸びすぎ】
【レイナ様の怖いを擦るな】
【黒瀬、最弱荷物持ちからバズ荷物持ちへ】
【レイユウ派、ここで継続頼む】
【元Sランク側、今どんな気持ち?】
ユウマはモニターを見ていなかった。
見てしまえば、自分がどう見られているかを考える。考えれば、足が止まる。
《第二回ペア選択》
《女性探索者から次回攻略ペアを指名》
《前回ペア継続も、シャッフルも自由》
リビングは、またスタジオに変わっていた。
中央の測定円。壁面の巨大モニター。出演者の表情を拾うドローン。前回よりカメラが一台多い。
誰が誰を見るか。
番組は、そこまで撮る気だった。
レイナはソファの端で剣を手入れしていた。表情は変わらない。銀の布が、刃の根元をゆっくり滑る。
最初に歩いたのは、桃瀬ミナだった。
桃色の短いリボンが、ゆるく巻いた髪の横で揺れる。耳元には、小さな蝶のピアス。ライトを受けると、火花みたいに光った。
ミナはカイトを見た。
次にレイナを見る。
最後に、モニターの推しペア投票を見てから、ユウマの前に立った。
「黒瀬くん、今一番バズってるから」
笑顔は明るい。
理由は、隠さなかった。
《桃瀬ミナ、黒瀬ユウマを指名》
【言ったw】
【ミナちゃん正直すぎ】
【ミナユウ来た】
【レイユウ派、耐えろ】
【投票を見てから行ったのプロ】
「よろしくね。ミナ、ちゃんと映えるように頑張るから」
「攻略もお願いします」
「そこ大事にするの、黒瀬くんっぽい」
ミナは肩を少しだけ寄せる。
カメラに映る距離だった。
ユウマの視界で、ミナの足元から伸びるスキル線が強く光った。白ではなく、照明を反射したみたいな眩しい線。
けれど、中心だけが抜けている。
光っているのに、奥が暗い。
《黒瀬ユウマ×桃瀬ミナ》
《事前シンクロ率 二十四%》
《ペアスキル接続:解析中》
【高い】
【レイナ初回十二%だったぞ】
【ミナちゃんコミュ力の勝利】
【でも黒瀬、また変な顔してる】
次にレイナの前へ、カイトが歩いた。
「白銀さん。今回はよろしく」
「ええ」
「無理に合わせなくていい。俺が合わせる」
爽やかだった。
勝ち誇りも、気まずさもない。だからこそ、画面は綺麗だった。
《白銀レイナ×朝倉カイト》
《王道ペア成立》
【初回で見たかったやつ】
【カイレイ強い】
【でも一歩先は黒瀬としか出てないんだよな】
【レイナの顔映して】
レイナの表情は変わらなかった。
ただ、剣を拭いていた布が、一瞬だけ止まった。
ほんの一瞬。
ノアが、小さく笑った。
「レイナちゃん、今の分かりやすかったよ」
「何が」
「布」
レイナは布を動かし直した。
「戦力として必要なだけ」
【戦力として必要なだけ、出ました】
【恋リアで一番危ないやつ】
【レイナ様、顔は無風なのに手元が正直】
【ミナユウ対カイレイ、始まった】
同じ頃、別の控室で、獅堂レンは配信画面を見ていた。
ミナがユウマの隣で笑っている。
《いま最も賛否を生む男、二度目の指名》
「今度は配信者女に拾われたか」
レンは笑った。
「数字のために使われてるだけだろ」
だが、画面の下には別のコメントが流れていた。
【黒瀬、レイナ以外にも選ばれた】
【元Sランクの荷物持ち、普通に需要あるじゃん】
【レンの時より映ってるの皮肉】
レンは画面の音量を下げた。
ユウマは、そのことを知らない。
ただ、目の前のミナの笑顔を見ていた。
明るくて、近くて、完璧な笑顔。
その奥だけが、どうしても空洞に見えた。




