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ダンジョン攻略恋愛リアリティショーで、最弱の俺が最強女剣士に選ばれて炎上する  作者:


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10/18

第10話 レンの小さな崩壊

 共同ハウスのリビングでは、攻略映像が繰り返し流されていた。


《一歩先の剣路》

《低シンクロ率ながら接続安定》

《白銀レイナ、中型魔物を無傷討伐》


 ミナはソファの背もたれに顎を乗せ、画面の中のユウマを見ていた。


「黒瀬くん、今いちばん切り抜き映えしてる顔してる」


 ノアが横目で刺す。


「顔じゃなくて、レイナが言うこと聞いたのが事件でしょ」


 カイトは黙って映像を見ていた。ユウマの「半歩前」という声で、レイナが踏み込む。その瞬間だけ、眉がわずかに上がる。


「今の指示、俺には出せないな」


 サヤは杖を両手で握っていた。


「怖いって言っても、前に出られるんですね」


 画面の隅で、レイナは黙っていた。


 自分の「怖い」が、何度も再生されている。笑う者もいる。感動する者もいる。切り取る者もいる。


 けれど彼女は、画面ではなく、少し離れた場所に立つユウマを見ていた。


【ハウスの空気変わった】

【ミナちゃん、黒瀬に目つけた?】

【ノア様の言い方好き】

【カイトが認めたの地味にデカい】

【サヤちゃんの一言刺さる】

【レイナ、黒瀬見てない?】


 その頃、別配信では獅堂レンのパーティーが通常攻略を行っていた。


《獅堂レン率いるSランクパーティー》

《中層手前・通常攻略》


 レンは笑っていた。


 赤い戦闘コート。整った装備。追尾ドローンの中央。画面映えする立ち位置を外さない。


「低層の変異種くらいで騒ぎすぎだろ。俺たちなら、中層でも十分いける」


【レンきた】

【やっぱ絵になる】

【本物のSランク見せてくれ】

【黒瀬の元リーダーだっけ】


 レンの火炎スキルが通路を焼いた。


 威力は本物だった。魔物は悲鳴を上げる間もなく崩れ、後衛が素材を回収する。


 強い。


 それは疑いようがない。


 ただ、少しだけ荒かった。


 左側の小鬼が炎の外へ逃げる。槍使いが追う。追った先に、別の影がいた。


「おい、そっち行くな!」


 レンが叫ぶ。


 槍使いは慌てて止まった。爪が鼻先をかすめ、壁に火花が散る。


「悪い、死角だった」


「集中しろ。黒瀬が抜けたくらいで動き鈍らせるな」


 レンは軽く言った。


 軽く聞こえるように、言った。


【今ちょっと危なかった】

【黒瀬関係なくね?】

【いや前の攻略ログだと、ここで声入ってた】

【比較班、仕事早いな】


 画面の端に、視聴者が作った比較切り抜きが流れ始める。


《過去ログ》

《同系統通路》

《黒瀬ユウマ:左、追いすぎるな》


《現在ログ》

《同系統通路》

《指示なし》


 次の区画では、床石の模様がずれていた。踏めば、横壁から毒針が飛ぶタイプ。派手ではない。だからこそ、攻略中は見落としやすい。


 先頭のレンは気づかず進む。


 後衛の女探索者が、ぎりぎりで袖を引いた。


「待って、床」


 レンの靴が、罠石の手前で止まる。


 毒針は飛ばなかった。


 事故ではない。


 けれど、事故の一歩前だった。


「前はさ」


 槍使いが、ぽつりと言った。


「そういえば、黒瀬がいた時って、俺たち怪我少なかったよな」


 通路の空気が止まる。


 レンは振り返った。


「あいつは荷物持ちだ。俺たちが強かっただけだ」


 声は笑っていた。


 だが、誰もすぐには笑わなかった。


【今の沈黙なに】

【レンは普通に強い】

【でも黒瀬が抜けてから連携荒い】

【前の攻略ログ見直すと、黒瀬が地味に止めてる】

【最弱荷物持ちって本当に最弱だったのか?】


 攻略は成功した。


 評価も高い。負傷もない。タイムも悪くない。


 それでも、配信後の控室で、レンは水を飲まずに画面を見ていた。


 白銀レイナと黒瀬ユウマの無傷攻略。


《未登録ペアスキル》

《一歩先の剣路》

《低シンクロ率ながら接続安定》


 ユウマが何かを言い、レイナが一歩前に出る。


 後ろで見ているだけの男。


 そう言ったのは、自分だ。


 その男の声で、最強剣士が動いている。


「……番組の編集だろ」


 レンは小さく吐き捨てた。


 画面を消そうとした瞬間、次の公式予告が流れる。


《次回》

《第二回ペア選択》

《いま一番バズっている男を、誰が選ぶ?》


 画面は共同ハウスに戻る。


 ミナが笑っていた。


「黒瀬くん、ちょっと話そ?」


 その声を聞いた瞬間、レイナの視線が、ほんの少しだけユウマから外れた。


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