第73話:武器を置く日、土の匂い
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## 第73話:武器を置く日、土の匂い
衛星『レテ』が夜空の彼方で燃え尽き、世界に「本当の朝」が訪れてから三ヶ月。
荒野のあちこちでは、管理システムの加護を失ったことによる不便さと、自分たちの手で明日を作る高揚感が入り混じっていた。
「……っ、よし。これで種まきは終わりだ。」
レンは額の汗を拭い、スコップを置いた。
彼の腰に、もうあの銀色のベルトはない。最終決戦の直後、役目を終えたアーク・ヴォックスは光の粒子となって消滅した。それと同時に、レンの体内に残っていたナノマシンも機能を停止し、彼は「一分先の未来も予知できない、ただの人間」に戻っていた。
「レン! 休憩にしようぜ。ハルカが特製のスープを作ってくれたぞ!」
遠くから海斗が呼んでいる。彼は今、村の輸送チームのリーダーとして、各地の集落を結ぶ道を作っていた。ギルはといえば、元管理局の技術を悪用しようとする輩を監視するため、自警団の教官として世界を回っている。
「……平和、なんだな。本当に。」
レンがスープを口に運ぼうとしたその時、村の入り口で騒ぎが起きた。
かつてレンが救った集落の男たちが、水利権を巡って隣の村と掴み合いの喧嘩を始めていたのだ。
「おい! ここは俺たちが開拓した場所だ! 後から来た奴らに分け前なんてねえよ!」
「なんだと!? 困った時はお互い様だって、レンさんが言ってたじゃないか!」
レンは静かに立ち上がり、二人の間に割って入った。
かつてなら、変身して圧倒的な力で場を収めていただろう。だが、今の彼にあるのは、泥に汚れた手と、一人の青年としての言葉だけだ。
「……二人とも、やめろ。……俺たちが戦ったのは、誰かを力でねじ伏せるためじゃない。……腹が減ってるなら、一緒にこの畑を耕そう。……一人でやるより、二人の方が、きっと美味いもんが食える。」
「……レンさん……。でもよ……。」
「『でも』じゃない。……俺はもうライダーじゃない。あんたたちと同じ、ただの人間だ。……だから、一緒に考えようぜ。……な?」
レンの穏やかな、しかし芯の通った声に、男たちは少しずつ拳を下ろした。
それは派手な必殺技よりも時間はかかるが、確実に「心」に根を張る、新しい時代の解決方法だった。
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