第72話:黄金の残滓、ドクターの最期の嘘
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## 第72話:黄金の残滓、ドクターの最期の嘘
レンの一撃により、オメガの黄金の装甲が硝子細工のように砕け散った。爆煙の中から現れたのは、巨大な怪物でも冷徹なAIでもなかった。
そこにいたのは、生命維持装置に繋がれ、200年前の衣服を纏ったまま眠り続ける、**オリジナルのドクター・ストリクス**の肉体。オメガとは、彼が死の直前に自らの意識を「正義」として純格化し、肉体を守るために作り出したシステムに過ぎなかった。
「……そうか。あんたは、自分を止められるのを待っていたんだな。」
レンが装置に触れると、モニターにノイズ混じりのホログラムが投影される。それは第61話で見た遺言の「本当の最後」だった。
『……レン。私は、人類が嫌いだった。だが、それ以上に……娘が愛したこの世界を、私が終わらせてしまうことが怖かった。……だから、矛盾したプログラムを組んだ。「絶望」で管理する私を、「希望」で超えてくる誰かが現れることを。』
衛星『レテ』が、崩壊の振動を上げ始める。コアを失ったことで軌道を維持できなくなり、大気圏への再突入が始まったのだ。
「ドクター……あんたの願い、確かに受け取ったぜ。……でも、一緒に帰ろうなんて言わない。あんたはここで、娘さんの思い出と一緒に、ゆっくり眠ってくれ。」
レンはドクターの眠る装置を、爆発から守るように液体金属で優しく包み込み、衛星の深淵へと見送った。
「レン! 早くしろ! 衛星がバラバラになるぞ!!」
脱出ポッドのハッチから、海斗が叫ぶ。
レンは崩れゆく壁を蹴り、無重力の中を跳んだ。背後の爆発が、200年の管理社会の象徴である『レテ』を宇宙の塵へと変えていく。
地上を見下ろすと、そこには『忘却の雨』ではなく、衛星から放散されたナノマシンの粒子が、オーロラのように美しく夜空を彩っていた。
「……綺麗だな。……なあ、海斗。……俺たちの戦い、これで『正解』だったのかな。」
「正解かどうかなんて、これからの俺たちが決めるんだよ。……ヒーローに守られるんじゃねえ、自分たちでな。」
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