第36話:揺り籠の記憶、白亜の守護者(ガードナー)
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## 第36話:揺り籠の記憶、白亜の守護者
「指紋、網膜、DNA……すべて合致。――お帰りなさい、マスター。」
無機質な電子音が響き、巨大な防護扉が重低音を立てて開放された。
第51層『ホワイト・エデン』。そこは、これまでのダンジョンの殺風景な岩肌や機械群とは対照的な、植物と水が循環する「生命の温室」だった。
「レンさん、見て……これ、全部200年前の技術で作られた『環境維持システム』よ。管理局の技術より、数世代は進んでる……」
ハルカが端末を片手に、驚愕の色を隠せない。
だが、安息は長くは続かなかった。
ドームの中央、巨大なカプセルが林立するエリアから、四足歩行の白い機械獣たちが次々と姿を現した。
**『――不法侵入を確認。プロトコルに従い、検体を保護・回収する――』**
「『検体』だと!? 俺たちは人間だッ!」
海斗がアクセル・ガンを連射するが、機械獣の流体金属装甲に弾かれる。
「……下がってろ、二人とも。こいつらは、俺を呼んでるんだ」
俺はアーク・ドライバーを起動させた。
反逆の赤と、白亜のドームが共鳴する。
**『――REBEL SYNC: WHITE-OUT(反逆同期:白化)!!――』**
激突の瞬間、俺の脳内に直接、膨大な映像データが流れ込んできた。
それは、200年前。滅びゆく世界で、一人の男が「一人の赤ん坊」を抱きしめている姿。
「……父さん?」
映像の中のドクター・ストリクスは、疲れ果てた顔で笑っていた。
『レン。お前はクローンではない。お前は、人類が汚染されたエーテルに適応できず死にゆく中で、唯一「世界と完全に融合」することに成功した、新しい人類の第一号だ。』
「新人類……? 俺が……?」
『お前をこの揺り籠で眠らせ、200年後の、エーテルが安定した世界で目覚めさせるようセットした。……だが、もし目覚めたお前がこの場所に辿り着いたのなら、世界は再び、お前の「適合能力」を悪用しようとしているのだろう。』
映像が消え、機械獣たちが一斉に動きを止め、俺の前で跪いた。
そして、ドームの中央にある最大級のカプセルがゆっくりとせり上がる。
そこには、俺と全く同じ顔をした「数千人の若者」が、眠ったまま保存されていた。
「……なっ、何よこれ……みんな、レンさんと同じ顔……!?」
サキが絶叫する。
「……違う。俺は、オリジナルじゃない。……俺は、この数千という『人類のバックアップ』の中から、たまたま最初に選ばれて、外に放り出された『尖兵』に過ぎなかったのか……?」
「……正解だよ、わが息子よ。」
背後から、聞き慣れた、しかし実体を持った冷酷な声が響いた。
振り返ると、そこにはプロフェッサー……いや、仮面を脱ぎ捨てた「今の時代のドクター・ストリクス」が立っていた。
「私は200年前の彼そのものではない。だが、彼の『知識』と『執念』を受け継いだ者だ。……さあ、レン。兄弟たちを呼び覚まそう。君という『成功例』のデータがあれば、全人類をこの完璧な肉体へと書き換えることができる!」
「……ふざけるな。俺たちは、あんたの実験道具じゃないッ!!」
怒りが、純白のドームを赤黒く染め上げていく。
俺が信じてきた自分という存在が、ただの「成功した検体」だったとしても、この胸の痛みだけは、俺だけのものだ!
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