第35話:時速300kmの死闘、父の遺言
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## 第35話:時速300kmの死闘、父の遺言
「列車の制御が奪われた!? ……レンさん、管理局のハッキングよ!」
ハルカの悲鳴が、激しく揺れる地下鉄の車両内に響く。
旧世界の遺産である超電導リニアは、リミッターを解除され、暗黒のトンネル内を猛烈な速度で逆走し始めていた。このままでは第51層の終着駅にある防護壁に激突し、俺たちもろとも粉塵になる。
「……逃がさないと言ったはずだ、一条レン」
列車の屋根を突き破り、銀色の光が舞い降りた。
第25話で俺の剣を折った「掃除人」だ。彼は折れたはずの魔導剣を、より禍々しい「黒晶の刃」へと打ち直して再来していた。
「海斗、サキ! お前たちはハルカと一緒に運転室の再ハックを頼む! ……こいつは、俺がやる!」
俺は走行中の列車の屋根へと飛び出した。
凄まじい風圧と、トンネルの壁面から火花を散らす電磁ノイズ。立っていることすら困難な極限状態。
「……お前の血が、世界を滅ぼした。その罪を、今ここで清算してやろう」
「血がどうした、罪がどうした! ……俺が今生きてるのは、200年前のデータのおかげじゃない。今日を生きる仲間の声のおかげだッ!!」
**『――REBEL DRIVE: IGNITION(反逆駆動:点火)!!――』**
反逆の赤を纏った俺の拳と、掃除人の黒い剣が激突する。
衝撃波で車両の装甲が剥がれ飛び、周囲の空間が火花で埋め尽くされる。
だが、今の俺には「沈黙のリスナー」たちが提供した秘匿サーバーのバフがかかっている。数値化できない「意志」の力が、システムの限界を押し上げていた。
「はあああああッ!!」
俺の回し蹴りが掃除人の仮面を捉え、その一部を砕く。
露わになった彼の素顔を見て、俺は息を呑んだ。……それは、以前ハルカに見せてもらった「若き日のプロフェッサー」に酷似していた。
「貴様……プロフェッサーの、何なんだ!?」
「……知る必要はない。お前はただ、父の作った箱庭の中で踊っていればいいのだ」
掃除人が不敵に笑い、自爆スイッチを起動させようとしたその時。
トンネルの壁面に設置された旧時代の「広報パネル」が、ノイズと共に一瞬だけ鮮明な映像を映し出した。
**『……聞こえるか、私の息子よ。』**
その声に、俺も掃除人も動きを止めた。
映像の中の男は、俺と同じ瞳をしていた。200年前の大罪人、ドクター・ストリクス。
**『このメッセージが再生されているなら、世界は再び「管理者」を求めているということだ。……レン、お前に刻んだのは滅びの種ではない。……それは、人類が「嘘」を乗り越えるための……』**
「……黙れ、亡霊がッ!!」
掃除人が叫び、映像パネルを斬り裂く。
だが、その一瞬の隙を見逃さなかった。
「海斗、今だッ!!」
「おうよ! 制御奪還成功! ……緊急停止だぁぁぁッ!!」
キィィィィィィィィィィィィィィィィィッ!!
火花がトンネルを埋め尽くし、強烈なGが俺たちを襲う。
掃除人は加速に耐えきれず、暗闇の奥へと吹き飛ばされていった。
列車が止まったのは、第51層。
そこは、管理局の記録にもない、白亜のドームに包まれた**『ストリクス私設シェルター』**の前だった。
「……父さん。あんた、何を隠してるんだ……?」
俺は壊れかけたドライバーの拍動を感じながら、閉ざされた扉に手をかけた。
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