第27話:奈落の使者、禁断のアップデート
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## 第27話:奈落の使者、禁断のアップデート
「……ッ、ハァ、ハァ……!」
第30層。かつては美しい水晶に彩られていた階層も、今は50層から逆流してきた「漆黒の霧」に侵食され、見るも無惨な死の街と化していた。
霧に触れた魔物たちは異形化し、より凶暴な『アビス・モンスター』へと変貌を遂げている。
俺と海斗、サキの三人は、絶え間なく襲い来る怪物の群れを退けながら、一歩ずつ下層へと足を進めていた。
「レンさん、もう無理よ! 体が限界を超えてる!」
ハルカが叫ぶ。
俺のバイザーには、絶えず**『VITAL DANGER(生命維持危機)』**の警告が点滅していた。前回の『オーバーライブ』の負荷が、俺の神経系を内側から焼き続けている。
その時、霧の向こうからカチ、カチと規則正しい靴音が響いた。
「……誰だ!?」
海斗がアクセル・ガンを構える。
霧を割って現れたのは、これまでの配信にも声だけで登場していた、あの白衣の男。
**プロフェッサー**だ。
「やあ、絶望の味はどうかな? 一条レン、そして若き協力者諸君」
彼はホログラムではなく、実体としてそこに立っていた。その顔には、虚無的な笑みを湛えた仮面が着けられている。
「……プロフェッサー! 貴様、この状況を笑いに来たのか!?」
「まさか。私は君たちに『選択肢』を与えに来た。……このまま塵として消えるか、あるいは、人間であることを捨てて『神』の領域に足を踏み入れるかだ」
プロフェッサーが差し出したのは、脈動する漆黒のコア――**『ヴォイド・トリガー』**。
それはアーク・ドライバーの全機能を強制的に解放する一方で、使用者の精神を虚無へ引きずり込む「禁断の毒薬」だった。
「これを使えば、50層の門を閉じる力が手に入る。……だが、君の記憶も、感情も、すべてがシステムの燃料として消費されるだろう。それでも、世界を救いたいか?」
「レンさん、ダメよ! そんなの、もう『レンさん』じゃなくなっちゃう!」
ハルカが俺の前に立ちはだかる。
だが、その時。
ドローンの向こう側、地上で霧に襲われ、泣き叫ぶ子供たちの映像が俺のバイザーに映り込んだ。
俺を信じ、応援し、ここまで連れてきてくれた数億人の人々の「願い」。
「……ハルカ。俺はさ、元々『無能』だったんだ。空っぽだった俺に、このベルトが、みんなの声が、……お前たちが、『意味』をくれたんだ」
俺は、ハルカの肩にそっと手を置き、プロフェッサーの手にある黒いコアを掴み取った。
「……俺が俺でなくなっても、この拳が世界を救うなら……安いもんだ」
**『――VOID TRIGGER: ATTACHED(ヴォイド・トリガー装着)――』**
世界から音が消えた。
俺の周りだけ、時間が停止したかのような錯覚。
ドライバーから溢れ出したのは、光すら飲み込む「絶対的な闇」のエネルギーだった。
「……変、身……」
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