第26話:黒い余韻と、深層の咆哮
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## 第26話:黒い余韻と、深層の咆哮
地上の喧騒が遠のいていく。
サキの家族を無事に第20層の拠点へと送り届けた後、俺はストライカー・ウィーラーから転げ落ちるようにして地面に伏した。
「レンさん!!」
駆け寄るハルカの手が、俺の身体に触れた瞬間、彼女は悲鳴を上げて手を引っ込めた。
俺の全身からは、まだ漆黒の火花が散り、装甲を解いた後の肌には、回路のような赤黒い紋様が浮かび上がっていた。
「……バカよ、本当にバカ。外部出力を遮断して、自分の生命維持エネルギー(エーテル)を直接システムに流し込むなんて……一歩間違えれば、身体が内側から燃え尽きていたわ」
ハルカが涙を浮かべながら、懸命に冷却用の魔導剤を塗り込む。
俺は意識を朦朧とさせながら、自分の掌を見つめた。
あの『掃除人』を退けた黒い力。それは確かに強大だったが、今まで感じたことのない「空虚」が胸に残っている。
「……でもさ、レンさん。地上のSNSや掲示板、今すごいことになってるよ」
海斗が端末を見せる。
管理局の非道を暴いた第24話、そして絶望的な静寂を拳一つでぶち破った第25話。
今や一条レンの名は、単なる配信者の枠を超え、抑圧された人々にとっての**「解放のシンボル」**となっていた。
だが、そんな勝利の余韻を、地底の底から響く「地鳴り」が打ち消した。
**――ズ、ズズズ……ッ!!**
「地震……? いや、違う。これは……『叫び』だわ」
ハルカが計測器に目を落とし、顔を真っ青にする。
第20層の拠点に設置された全センサーが、振り切れるほどの異常数値を叩き出していた。
震源地は、さらに下。第50層。
「管理局の……ゼノスの仕業か……!」
その時、拠点の大型モニターが強制的に切り替わった。
映し出されたのは、管理局の最深部、狂気に満ちた笑みを浮かべる次長ゼノスの姿。
彼の背後には、第50層の巨大な門『地獄の門』が、無数の鎖を引き千切って開こうとしている。
『……ハハハ! 愚かな民衆よ、そして一条レン。権力も信用も、もはやどうでもいい。……この世界が私の望む形にならないのであれば、すべてを「無」に帰すのみだ!』
門の隙間から溢れ出すのは、第22話で現れたアビス・ウォーカーを遥かに凌ぐ、純粋な**「終焉の霧」**。
『第50層の封印を完全に解いた。……さあ、一条レン。君が「正義の味方」だと言うなら、この溢れ出した絶望を止めてみせたまえ!』
通信が切れると同時に、第20層の通路の至る所から、異形の怪物の咆哮が響き始めた。
先遣隊ではない。今度は「本軍」の侵攻だ。
俺はハルカの制止を振り切り、重い身体を引きずって立ち上がった。
ドライバーを腰に巻く。その振動が、今の俺には「死へのカウントダウン」のように聞こえる。
「……行くぞ、海斗。サキ。ここから先は、配信じゃない」
俺はバイザーを閉じ、暗闇の奥、さらに深層へと続く階段を指差した。
「人類の生存を懸けた、本当の『攻略』の始まりだ」
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