第22話:継承される意志、三号機の鼓動
---
## 第22話:継承される意志、三号機の鼓動
「……いいか、システムの基本は『同調』だ。力に振り回されるな、力を引き出すんだ」
第20層のベースキャンプ。俺は、元管理局員の女性探索者・**サキ**に、即席の訓練を施していた。
彼女が手にしているのは、ハルカと海斗が共同開発した新型デバイス――『アーク・プロセッサ』。ストリクスの予備パーツと、サキが持ち出した管理局の魔導核を融合させた、**「三人目」**のための鍵だ。
「はい、レンさん! ……でも、私みたいな落ちこぼれが、本当にあなたたちのようになれるんでしょうか……」
「俺もかつては『無能』と呼ばれた。変身は、過去の肩書きなんて見ちゃいない。今の『意志』を見てるんだ」
その時、拠点の外周に設置されたセンサーが、かつてないほどの激しい警告音を鳴らした。
**『――WARNING: UNKNOWN ENTITY APPROACHING(警告:正体不明の個体が接近中)――』**
「何だ……!? 魔力反応じゃない。これは、もっとドロドロとした……『悪意』そのものか!?」
海斗がモニターを凝視する。
第21層へと続く通路から、漆黒の霧が溢れ出していた。その霧の中から現れたのは、管理局の騎士でも魔物でもない。
全身が腐り落ちたような黒い粘液で覆われ、不気味な「眼球」が至る所から突き出した、異形の存在――**『アビス・ウォーカー(深淵の歩行者)』**。
「ギャァァァァ……!!」
一瞬で隠蔽障壁が食い破られる。
アビス・ウォーカーが放つ黒い触手が、キャンプに逃げ込んできた人々に襲いかかった。
「海斗、ハルカ! みんなを奥へ避難させろ! ……変身!!」
**『――CONNECT GEAR: 00――』**
俺は紅蓮の炎を纏い、異形の怪物に殴りかかる。
だが、手応えがおかしい。拳が敵を貫通しても、粘液がすぐに再生し、逆に俺の腕を侵食し始める。
「レンさん、気をつけて! その霧、魔力やシステムを『腐敗』させる性質があるわ!」
「クソッ、燃えろ!!」
出力を上げようとしたその時、背後で悲鳴が上がった。
逃げ遅れた一般市民に向け、別の一体が牙を剥いている。
「あ……ああ……」
立ちすくむサキ。その手には、まだ未完成のデバイス。
「サキ、走れ!!」
海斗の叫びも間に合わない。
だが、サキは逃げなかった。彼女は震える手でデバイスを自らの胸にかざし、涙を拭って叫んだ。
「……もう、逃げたくない! 私も、誰かを守れる側に……変身ッ!!」
**『――SYNC RATIO: 95%... INSTALLING... "KAMEN RIDER VALKYRIE"(ヴァルキリー実装)!!――』**
青白い雷鳴が拠点を包み込んだ。
霧を切り裂き現れたのは、白とブルーのソリッドな装甲を纏った女性戦士――**『仮〇ラ☓ダーヴァルキリー』**。
彼女の両腕に装着された電磁カッターが、アビス・ウォーカーの再生を上回る速度で、黒い粘液を細切れに切り刻んでいく。
「……できた。三人目のラダーだ」
海斗が感嘆の声を上げる。
サキ――ヴァルキリーの参戦により、戦局は一気に逆転した。
三人のライダーが背中を合わせ、拠点を侵食する黒い霧を押し返していく。
しかし、俺は見てしまった。
霧の向こう側、第21層の闇の中で、こちらをじっと観察している**「巨大な単眼」**を。
「……第50層の封印が解けたわけじゃない。これは、ただの『先遣隊』だぞ」
勝利の歓声に沸くキャンプの中で、俺は言い知れぬ不安に震えていた。
管理局が解き放ったのは、ただのモンスターではない。
世界を「無」に帰す、真の終焉の一端だった。
---




