第2話:世界が俺を見つけた日
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## 第2話:世界が俺を見つけた日
「……あ、ありえない。Bランクを、物理攻撃だけで……?」
爆炎が収まった後の静寂の中、カイトの震える声が響いた。
彼らエリートパーティーが束になっても傷一つ負わせられなかった大蜘蛛が、今は塵も残っていない。
俺はゆっくりと腰のレバーを逆方向に回した。
**『――OFFLINE――』**
プシュッ、と蒸気が噴き出し、赤い装甲が粒子となって消えていく。
そこに現れたのは、どこにでもいる「無能」の探索者、一条レンの姿だ。
「一条、お前……今のは一体……」
カイトが這い寄るように近づいてくる。その目は驚きと、そして隠しきれない強欲さに満ちていた。
「そのベルト、どこで手に入れた? それさえあれば俺たちはもっと稼げる。おい、それを貸せ。リーダーの命令だ」
さっきまで俺を見捨てようとしていた男が、よくもまあそんなことが言える。
俺は冷めた視線をカイトに向けた。
「断る。これは俺にしか使えない」
「なっ……! お前、立場をわかってるのか!? 魔法も使えない底辺が、俺たちに逆らって――」
その時。
空中に浮かんでいた俺のドローンが、激しく発光した。
「おい、カイト。それ以上はやめとけ」
ドローンのスピーカーから声が漏れる。それは、配信の『運営サイド』から割り込んできた緊急連絡だった。
「……は? 誰だ?」
「新宿ダンジョン管理センターの責任者だ。一条レンさん、聞こえますか? 今のあなたの戦闘、世界中で同時視聴100万人を突破しました。現在、SNSのトレンド1位から10位まで、あなたの『変身』が独占しています」
カイトの顔が、一瞬で土色に変わった。
100万人。それはトップ探索者でも滅多に叩き出せない数字だ。
俺一人の「変身」が、魔法至上主義の常識をリアルタイムで破壊してしまったのだ。
『おいカイト、今さら貸せとかマジ?』
『さっき追放したシーンも全部録画されてるぞwww』
『一条さん、あいつら放っておいて地上に戻りましょう!』
ドローン越しに、数えきれないほどの応援コメントが降ってくる。
俺を「無能」と呼ぶ声は、もうどこにもなかった。
「……悪いな。俺はもう、あんたたちの荷物持ちじゃない」
俺は腰を抜かしたカイトの横を通り過ぎ、震えていた新人探索者の少女に手を貸して立たせた。
「……大丈夫?」
「は、はい……! あの、すっごく、かっこよかったです!」
少女の純粋な憧れの瞳。
昔、テレビの中のヒーローを見ていた俺と同じ目だ。
胸の奥のベルトが、共鳴するように少しだけ熱くなった。
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地上に戻ると、ギルドの入り口には黒塗りの車と、大量の記者が詰めかけていた。
現代ダンジョンにおける「スター」の誕生。
だが、俺にはそんな騒ぎよりも気になることがあった。
ベルトから脳内に、新しい情報がダウンロードされていたのだ。
**『――NEXT GADGET UNLOCKED: "STRIKER-WHEELER"(次なるガジェット:ストライカー・ウィーラー)――』**
「……バイク、か」
地下迷宮の広大なエリアを攻略するためには、足が必要だ。
どうやらこのベルト、魔物を倒して「データ」を蓄積するたびに、新しい武装を解放していくらしい。
「面白くなってきたな」
記者たちのフラッシュを浴びながら、俺はポケットの中でベルトの感触を確かめた。
俺の戦いは、まだ始まったばかりだ。
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