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『ダンジョン配信中に「変身!」と叫んでみた。〜魔法使いばかりの世の中で、重装甲のバイク乗りがソロ攻略で無双する〜』  作者: じょんどぅ


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第1話:変身。それは世界を塗り替える音。

ありがとうスーパー戦隊


---


## 第1話:変身。それは世界を塗り替える音。


「悪いな一条。……お前、もうクビだ」


新宿ダンジョン、地下3層。

湿った空気の中、パーティーリーダーの魔術師・カイトが冷たく言い放った。


「……え?」

「え、じゃない。お前、魔法使えないだろ。この先はDランクモンスターがゴロゴロ出るんだ。無能を連れて歩くほど俺たちはボランティアじゃない」


周囲のメンバーも、憐れみと蔑みが混ざった視線を俺、一条レンに向ける。

この世界は10年前の「大崩落」以来、魔力を持つ者が正義となった。

杖を振り、呪文を唱え、華やかに魔物を倒す。それが「探索者」のステータスだ。


魔力ゼロの俺にできるのは、彼らの戦闘を撮影するドローンの操作と、荷物持ちだけ。


「これは手切金だ。ガラクタ置き場で拾ったんだろ、これ」


カイトが俺の足元に投げ捨てたのは、俺が先日、ダンジョンの深部で拾った**奇妙な金属製のベルト**だった。

重厚な歯車と、色褪せた赤い宝玉が埋め込まれた、時代錯誤な骨董品。


「そんなゴミがお似合いだよ。じゃあな、無能」


笑いながら去っていく彼らの背中を、俺はただ見つめることしかできなかった。


---


一人のこされた俺は、トボトボと地上へ向かう。

自律浮遊する撮影ドローンだけが、俺の情けない姿を映し出していた。

一応、配信は付けっぱなしだ。視聴者はわずか5人。


『あーあ、追放されちゃった』

『魔法使えないと人権ないよな、この時代』

『そのベルト何? ダサすぎワロタ』


流れるコメントを無視して、俺は拾い上げたベルトの泥を払う。

なぜだろう。初めてこれを見た時から、胸の奥が熱くなるような、懐かしい感覚があった。


その時だった。


**――グオオオオオオオオオオ!**


鼓膜を突き刺すような咆哮。

地響きと共に、前方から数人の探索者が転げるように走ってきた。


「助けてくれ! イレギュラーだ!」

「Dランクの層に、なんでBランクの『大蜘蛛グレート・アラクネ』が!?」


見れば、先ほど俺を追い出したカイトたちのパーティーだった。

その後ろには、家の屋根ほどもある巨大な蜘蛛が、漆黒の脚を動かしながら迫っている。


「ひ、火炎球ファイアボール!」


カイトが必死に魔法を放つが、大蜘蛛の硬質な外殻に弾かれ、火花が散るだけだ。

魔法抵抗力が異常に高い個体。魔法使いだけのパーティーには、最悪の天敵。


「ああ……あああ……」


カイトが腰を抜かす。大蜘蛛の鋭い鎌のような脚が、彼を貫こうと振り上げられた。

ドローンのカメラが、その絶望的な瞬間を捉える。


『うわ、これ死んだわ』

『魔法が効かないとか詰んでる』

『逃げろよ撮影者!』


コメント欄が加速する。

俺の足は震えていた。逃げるなら今だ。魔法使いが殺されている間に、反対側に走れば助かる。


だが。

俺の視界の端で、カイトの影に隠れて震えている新人探索者の女の子が見えた。

彼女は、俺が荷物持ちをしていた時に唯一「お疲れ様です」と言ってくれた子だ。


「……クソっ!」


考えるより先に、体が動いていた。

俺はカイトたちの前に飛び出すと、拾ったばかりの「ベルト」を腰に押し当てた。


その瞬間。


**ジャキィィィィィィィン!**


ベルトから金属の帯が伸び、俺の腰をガッチリと固定した。


「え……?」

カイトが呆然と見上げる。


俺の脳内に、使い方が、言葉が、奔流となって流れ込んでくる。

これは魔法じゃない。

かつて失われた、あるいは未来から来た――**「意思を力に変える」**システム。


俺はベルトの右側にある、無骨なスターターレバーを握り込んだ。

世界から音が消える。心臓の鼓動だけが高鳴る。


「……やってやる。魔法がなきゃ救えないなんて、誰が決めた」


思い切り、レバーを引く。


**『――CONNECT GEAR: 00(コネクト・ギア:ゼロゼロ)――』**


重厚な機械音が、ダンジョンの空気を震わせた。

ベルトの中央にある宝玉が、太陽のような真紅に輝く。


「変身!!」


一気に溢れ出した光の粒子が、俺の全身を包み込んだ。

筋肉を、骨格を、魂を。

超硬チタンの装甲が、しなやかなインナースーツが、一瞬で俺を作り替えていく。


光が弾けた。


そこに立っていたのは、魔法使いのローブではない。

紅蓮のバイザー、鋭角な装甲、そして背中で静かにたなびく真っ赤なマフラー。


『な……何だ、あの姿……!?』

『魔法じゃない……鎧? 装備を換装したのか!?』

『待て、今の声……「変身」って言ったのか!?』


コメント欄が爆発する。

だが、俺には聞こえない。


拳を握る。力が、溢れてくる。

大蜘蛛が苛立ったように、巨大な脚を振り下ろしてきた。


「遅いな」


俺はそれを、左手一本で受け止めた。

ズゥゥゥン! と衝撃が走るが、装甲は傷一つ付かない。


「ここからは、俺のターンだ」


俺は加速装置を起動させ、爆音と共に踏み込んだ。


---


大蜘蛛の脚を掴んだまま、俺は再びベルトのレバーを深く叩き込んだ。


『――CRITICAL CHARGEクリティカル・チャージ!!――』


ベルトの中央から、心臓の鼓動のような重低音が響き渡る。 赤い粒子が右脚に集束し、バチバチと深紅の稲妻が空間を削り取った。


「な、なんだあのエネルギー量は……!? 魔法じゃない、あんな密度の魔力、見たことがないぞ!」


後ろで腰を抜かしていたカイトが驚愕の声を上げる。 だが、これは魔力じゃない。俺の「戦う」という意思が、ベルトを介して物質化した純粋なエネルギーだ。


大蜘蛛が恐怖を感じたのか、糸を吐き出しながら後退しようとする。


「逃がさない」


俺は地面を蹴った。 チタンの装甲が空気抵抗を切り裂き、一瞬で大蜘蛛の頭上へと跳ね上がる。 洞窟の天井近くまで達した俺の背後で、真っ赤なマフラーが炎のように揺れた。


『――STRIKE ENDストライク・エンド!!――』


空中。右脚に集まったエネルギーが、巨大なドリル状の光へと形を変える。 俺はそのまま、重力と加速を味方につけて急降下した。


「はぁぁぁぁぁっ!!」


一閃。 紅蓮の光が、大蜘蛛の脳頂を真っ向から貫いた。


魔法すら弾く漆黒の外殻が、ガラスのように脆く砕け散る。 俺が着地し、背を向けた直後――。


――ドォォォォォォン!!


背後で巨大な火柱が上がった。 大蜘蛛は断末魔を上げる暇もなく、文字通り「爆散」したのだ。 残ったのは、焦げた地面と、舞い上がる火の粉だけ。


静寂が訪れる。 俺はゆっくりと立ち上がり、親指を立てて背後の爆炎を指し示した。 特撮ヒーローが、いつだってそうしていたように。


ふと視界の端に浮かぶ、配信画面のコメント欄。


『……え?』 『今、何が起きた?』 『物理攻撃でBランクを即死させた……!?』 『同接が……10万を越えたぞ!!おい!!』


通知が止まらない。 俺を馬鹿にしていたカイトたちは、口をパクパクとさせて言葉を失っている。


俺はカメラドローンの方を向き、バイザーを光らせて告げた。


「……一条レンだ。これからは俺が、このダンジョンの『ルール』を書き換える」


その日、世界に新しい「ヒーロー」が誕生した。 魔法が全ての世界を、たった一撃のキックで粉砕する、孤独で最強の戦士。


後に『深紅の騎士』と呼ばれる伝説の、これが最初の一歩だった。

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