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『ダンジョン配信中に「変身!」と叫んでみた。〜魔法使いばかりの世の中で、重装甲のバイク乗りがソロ攻略で無双する〜』  作者: じょんどぅ


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第17話:白銀の檻と、温かな手のひら


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## 第17話:白銀の檻と、温かな手のひら


ハデスは消えた。第15層を支配していた重苦しい魔圧も、今はもうない。

だが、その静寂の中で、俺の心臓は機械的なリズムを刻み続けていた。


「レン、さん……? もう、敵はいないわ。変身を解いて……」


ハルカがおずおずと、数歩距離を置いて俺を呼ぶ。

俺はレバーに手をかけた。だが、指先が鋼鉄のように固まって動かない。


**『――SYSTEM UNAVAILABLE: DEEP SYNCHRO(システム拒否:深層同調中)――』**


「……外れないんだ。ドライバーが、俺を放さない」


バイザー越しに見える世界は、もはや色彩を失っていた。

熱源反応、構造の脆弱点、敵対可能性。

全ての情報が数字として処理され、かつて感じていた「恐怖」も「喜び」も、ノイズとして切り捨てられていく。


『……今のレン、マジで機械みたいだ』

『これ、パワーアップじゃなくて呪いだろ』

『管理局の時の方がまだ人間味があったよ……』


配信のコメントが、冷ややかな視線となって俺を刺す。

1,000万人の観衆が見守る中で、俺は「救世主」から「理解不能な兵器」へと変わり果てていた。


「どいてろ、ハルカ。……俺は、このまま第16層へ向かう」


俺は感情を排した声で告げ、ストライカー・ウィーラーに跨ろうとした。

だが、その瞬間。

小さな、しかし確かな「温もり」が、俺の白銀の籠手に触れた。


「……ダメ。行かせない」


ハルカだった。

彼女は、俺から放たれるエボルブ・フォームの放電――触れるだけで火傷するような高エネルギー体――に構わず、俺の腕を両手で抱きしめていた。


「ハルカ、離せ! お前が焼かれるぞ!」


「焼かれたっていい! レンさんが……レンさんが『モノ』になっちゃうくらいなら、痛い方がマシよ!!」


彼女の手から、ジッと皮膚が焼ける嫌な音がする。

その痛みが、網膜ディスプレイの「ノイズ」としてではなく、俺の「心」にダイレクトに突き刺さった。


「……っ、あ……ああああッ!!」


俺の叫びに呼応するように、ドライバーが激しく明滅する。

『排除優先度』の文字が乱れ、ハルカのデータが『最優先保護対象:ハルカ』へと書き換わっていく。


**『――FORCE LOGOUT: EMOTIONAL OVERLOAD(強制ログアウト:感情過負荷)――』**


プシュゥゥゥ……ッ!!


全身から白銀の蒸気が噴き出し、装甲が砂のように崩れ落ちた。

俺はそのまま、膝から崩れ落ちる。

そこには、汗と涙でぐちゃぐちゃになった、ただの人間――一条レンがいた。


「……ハルカ。お前……バカか……」


俺は震える手で、彼女の焼けた掌を取った。

ハルカは痛みに顔を歪めながらも、ふにゃりと力なく笑った。


「おかえりなさい、レンさん。……やっぱり、こっちの顔の方が、ずっといいわ」


その様子を、海斗がドローンのカメラを切り替えながら、少しだけ鼻をすすって中継していた。


『……戻った。一条レンが、戻ってきたぞ!!』

『ハルカちゃん、ナイス根性……泣けるわ』

『力に飲み込まれないヒーロー、これが見たかったんだ!』


世界中の「熱狂」が、今度は俺を拒絶するエネルギーではなく、俺を支える温かな魔力へと変わっていくのが分かった。


だが、そんな感動的な光景を、はるか上空のモニターで眺めるプロフェッサーは、楽しげに肩を揺らした。


「……ラブ、か。実に古風で、計算不可能な変数だ。……いいだろう、次のステージでは、その『絆』がどれほどの重圧に耐えられるか、試させてもらおう」


プロフェッサーの手元のスイッチが押される。

地上――管理局の総本部から、世界中に向けて新たな特報が流された。


**『――一条レンの協力者リスナーをすべて、魔導犯罪の共犯とみなし、資産を凍結する。彼を支持する者は、明日からこの世界の市民ではない。』**


世界を敵に回す。

その言葉が、今度は比喩ではなく、現実の「痛み」となって俺たちの前に立ちはだかろうとしていた。


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