【9/7】ホンマは好きやん
喫茶店に足しげく通っている。もう、常連扱いしてもらっている。「いつものですね」と言われる。あまのじゃくなので、違うメニューで切り返してマスターに適度な緊張感を提供している。
当の喫茶店、メイン顧客は60歳オーバーのシニアたちだ。もしくはもう少し上の65歳。とにかく僕が昼間から喫茶店に行くと、いる。朝からモーニング狙いに行くと、いる。夕方、ケーキセットを食べに行くと、いる。
常にいるのだ、シニアたちは。
そのなかでも、遭遇率の高いシニアがいる。頑固そうだったので、源五郎(仮名)と呼ぼう。
僕は奥まった二人席を陣取り、読書。源五郎はカウンターでマスターにあれこれ野球やら政治やら、中東情勢やら、芸能ゴシップやらとりとめなく話し続けている。おかげで、そのあたりのニュースにもうとくなくなった。
源五郎は犬好きらしい。犬好きを強烈にアピールしている。ドッグランのデビュー話やら、保護した時の話やら、家の中でそそうした話やら、体重が増えた話やら、とにかく時系列はメタメタだが、聞いていて悪い気はしない。
ウチは以前犬と猫を飼っていたが、いまは猫二匹体制。どっちも好きだが、敢えて言うなら猫という具合だ。
源五郎は、対立による論点整理を好む。政治も野球もアイドルも戦争も、アッチとコッチを極端に対立軸を明らかにして、自身の立ち位置を表明するのだ。政治は自民党、野球は阪神とドジャース、Juice=Juiceを推し、ウクライナ支持。もちろんその対立相手も明確にする、自民党なら中道とか、阪神なら巨人とかそう言った具合だ。 そして、猫よりも「犬」派なのだ。
犬のすばらしさを語る時に、猫についていかに「すばらしくないか」を語るのだと思って、耳をそばだてて聞いていた。
「マスター、ワシ、猫あかんねん。犬一本や」――ほう、聴かせてもらおうか、その理由とやらを。
「犬は散歩できるやろ? せやけど猫はなぁ、散歩できんしな」――お世話の手間省けるやないか。
「それにな、猫はすぐ膝の上に来るやろ、ワシ膝悪いねん」――かわいいやん。膝悪いなら、散歩しなくていい猫の方がいいやろ。
「トイレもな、猫は砂がかさ高いやろ」――犬みたいにトイレのしつけほとんどいらんぞ。
「猫、風呂嫌がるしな」――入る必要がないから。犬みたいに臭くならないから。
とここまで、聴いて、心の中でツッコんでいると、ある仮説にぶちあたる。
源五郎、猫飼ったことあるな、と。猫のメリットわかっとるやん! と。
本人は気づいていない、相手の良さ。弱点や欠点を探すほどに、いつしかそれは自分にとって長所だったりするんだね、と冷めたコーヒーを啜り、読書に戻った。




