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【100話で完結】ぼくのホーム オフィスには 人間きぶんの 猫が2匹いる  作者: 華奢 素数


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【8/26】続:異物混入に猫を放つ、夜八時

うちには猫が二匹。のしのしと近くにやって来て、僕の表情をじっと観察し、ここぞというところで甘い声で鳴いてオヤツをねだる姉猫(大柄・茶色)。コソコソと俊敏に立ち回り、部屋に落ちてるカリカリのフードを見つけてはボリボリと食べる妹猫(小柄・白黒)。どちらも元保護猫で、ご縁があってうちのメンバーに加入した。


猫の特権は、「働かなくていい」ことである。そこにいるだけで、あなたは素晴らしいのよ、と無条件の愛情を注いでばかりいる。アレコレと予定をビッチり埋めて、隙あらばバイトに励む勤労大学生の息子と比較はしない。


平穏な暮らしのなかにも、ネコ騒動というものもきちんと組み込まれていて、インターフォンが鳴ると姉猫・妹猫ともに逃げ回る。その様子が面白くて、妻が帰宅時にインターフォンを鳴らして驚かせようと試みた。だが、二匹ともインターフォンモニターに映る顔を見るなり、「フン」と警戒心を解く。知恵をつけすぎていて、恐ろしくなることもあるのだ。


昨日・2026年・8月25日の朝8時、妻の靴下(左)からカナブンが現れた。異物である。猫姉妹は、我々夫婦の寝室をわが物顔で占拠し、この異物混入事件を知らずにいた。ただただ、妻の「ぎゃああああぁぁ」という叫び声が寝室にまで届いてはいたが、何食わぬ顔で寝ていたようである(息子談)。


さて、その日の午後12時。お昼時である。ベランダの洗濯物を眺めながら、そろそろ大学生の息子に昼飯だな、と座りっぱなしの鉛のような腰をあげた。ダイニングテーブルに置いているノートパソコンを端に寄せ、カーテンを開け、網戸にする。洗濯物が目に入る。


え?


なに?


いるの?


いるやん!


帰って来てるやないか!


ジェイソンか!




ベランダに飛び出る。網戸をすぐ閉める。シャツにくっついているカナブン。洗濯物がミツの味でもするのか?


僕は虫が嫌いではない。だからといって好きだとは言っていない。嫌いじゃないだけで、特に歓迎しているわけでもない。だけど、求められたら対峙できるだけの胆力はある。


えいっ、と掴んで、でぁあああ、と空に投げる。朝と同じ光景。カナブンは、ゆらゆらと軌道が定まらぬまま空に再びテイクオフした。(朝妻の靴下に入ってたカナブン、投げ捨てたからね・二回目)


さて、夜八時前。


姉猫(ちゃめ)のうんちをビニール袋に入れ、猫用ゴミ箱に捨てようとベランダに。窓を開けて、すぐ閉めたのに、ぶぅうううんとカナブンが一匹侵入!朝と昼と同一個体である(ぜったい)。



部屋に侵入した、カナブン。益虫ではあるが、招かれざる客人ならぬ客虫。速やかにお引き取りいただかねばならない。仕事がいそがしすぎて、正気ではない妻がより一層狂気に、ダークサイドに落ちてしまうのは目に見えている。


排除だ!ただし、生け捕りだ!そこで、普段は働かない警備員姉妹ペアを呼び寄せる。


猫2匹をスタンバイさせる。報酬のモンプチ・カリカリを約束し、警備にあたらせた。


観察眼に長け、視野の広い姉は、上空を。好奇心に溢れ、勇ましく俊敏な妹は、地上を。


それぞれ持ち場を固める。部屋の電灯を一つだけにして、明るい方へと誘き寄せる作戦だ。人間にできることはこれくらいだ。暗がりでも目が効く猫姉妹なら、どおってことないだろうに。


五分後、カサカサと不吉な音が聞こえる。ここでまさかのゴキブリなんてことはないだろうな。ジョーカーの来訪に怯える。


地上担当の妹猫が一直線に走る。何かを見つけたようだった。つられて白壁を見回していた姉猫もあとに続く。


カサカサ音が消えた。かわりにジョリジョリと妙な音がする。


部屋の明かりをつける。


妹猫と目が合った。おかしい。悪いことをした時の赦しを請う顔つきだ。そう、あれは


盗み食いをしたときの顔


妹猫が部屋の隅へと逃げる。やはり口もとが怪しい。ダイニングテーブルの下に潜り込み、その様子を確認する。


まさか……そんなことが!


小さな口に、何かが動いている。金色と翠色のグラデーションが小刻みに揺れる。震えているといってもいい。


咥えているのだ! カナブンを!


「ダメ!」と部屋中に響く怒声で一喝すると、妹猫は目を見開いて、口からポロリと望まれない来客を落とした。


床に仰向けに転がった侵入者カナブン、足が2本もげていた。動くことはなかった。


棚に逃げ込んだ妹猫、くちゃくちゃと音が聞こえる。


くってるのか?食ってるのか?喰ってるのか?ウソだと言ってくれ!


喰ってた!




姉猫はその様子をじっと見ていた。殺生したカナブンは、ティッシュに包んでベランダの猫用ゴミ箱に。合掌。ベランダの壁面には二匹まだカナブンがいた。異常発生なのか? それとも仲間なのか。悪いことをした。


カナブンが再び侵入しないように、辺りを見回してから部屋に戻る。


猫姉妹がソファー付近をウロウロしている。


私たち仕事はやり遂げたわ。標的は死なせてしまったけど、場合によっては仕方のないこと。なにより、母様(妻のこと)が帰って来るまでに、カナブンの野郎を排除したのは事実。報酬はいただくわよ。


と、交渉上手の姉猫が僕の足にすりすりして要求した。妹猫は喰った足のことなどどこ吹く風の顔で、ゴロゴロと喉を鳴らしていた。


報酬のモンプチ・カリカリを与え、警備員たちの任を解いた。




みんな、カナブンは益虫やで。捕まえて、逃がしてあげてなー。(おわり)

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