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正暦保全者  作者: あまみ
エピソード名"緋色の感触"
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茨の道

───っ!


私は渦巻く寵愛(ウロボロス)ごと建物壁際まで先輩に突き飛ばされる。"グラ=ボロス"には穴が空きそこを中心に一部凍り付いている。割れた防壁から入ってきた何かが私の脇腹を掠め取っていた。


辺りを隠していた水蒸気が晴れ何が起こったのかを知る。こちらへ伸びる氷女(ヒメ)の腕が蔓へと変化し、その先にはかぼちゃの様な見た目の茶色い植物が生っていた。伊伏さんは借火尽鬼でそれを焼き払い後方へ下がりながら思念受胎種(シークシード)で警告を飛ばす。


(あの種は"爆発"する。あんまり近付かねぇほうが良さそうだ。俺みたいに腹を抉られたくなかったらな。)


そう言う伊伏さんを見ると脇腹と太腿にさっきの攻撃を受けて深く負傷していた。中の肉を露見させる傷口を借火尽鬼の炎で焼き塞ぐと、これまでで一番の炎を纏わせたその刀を敵へと振り抜く。それは差し迫る植物達を全て焼き払って一直線に進んでいたが、敵の前に現れた氷の障壁によって僅かに逸れる。


土煙が晴れた先にはそれぞれ左手首と右肩から先を失ったローズと氷女が立っていた。女の方は足にも深い傷を負っていた。男が自身の手首から流れる血を眺めながら口を開く。


「フフ…。"逆"だったら少し危なかったね。"色欲色の仮面ハイヒールマスカレード"」


その声を合図に敵二人へその目元を隠す半仮面が具現化される。男の方は黒を基調に金の縁取りが、女の方は白を基調に金の縁取りがされたデザインをしている。失われた身体を補うようにそれぞれの仮面の色に応じた部位が生成されると、モノクロの身体は元の肌と同じ色へと変化する。


招かれざる客(ヒールマスカレード)は僕に似て女性贔屓なところがあってね。持ち主である僕を差し置いて女の子の方をより多く回復させようとするんだよ。


その借火尽鬼(D:C)以外の能力を見せてくれないようだし、これ以上姫を退屈させるわけにもいかないからもう終わらせようかな。おいで、"小さな巨人(リトルマンイーター)"。」


ローズの肩には口を大きく開けた子供の姿をしたブリキ人形が立っていた。不規則に歯を噛み合わせる音が辺りに響く。


「この子は可愛らしい見かけによらずかなりの食いしん坊でね。僕が選んだ敵の能力を"食べ尽くす"。つまりは完全に無効化するってこと。勿論デメリットもあるけど…それを君に教えてあげる義務はないよね?選んだのはもちろん君の借火尽鬼。もう一人の女の子の方は何とかなりそうだしね。」


圧倒的に不利な状況のはずだが、伊伏さんの瞳から闘志の炎は消えていなかった。借火尽鬼の刃が溶け柄から先が無くなると、刀身から立ち昇っていた煙霧が刀の形を成して留まる。


「ハッ。そのくだらない幻想ごと叩き切ってやるよ。(リン)、"障害物"は任せたぞ。」


私達を狙って全方位から蔓が伸びる。それを食らうかのように渦巻く寵愛(ウロボロス)お喋り渡り鳥(スクリーマルート)が空を駆ける。伊伏さんが地面を踏み込み、仕立て上げた道の先で待つ敵の元へと一瞬にして加速する。氷女が蔓に変化させた腕を伸ばして止めようとするが難なく交わしローズの元へ辿り着く。


借火尽鬼の刃があった部分に留まっている煙霧が敵の肩に乗った人形に纏わりつくと、柄から伸びるように緋色の刃が生えて人形諸共ローズを焼き払った。叫びと共にその体は溶けていく。


(リン)!逃げろ!」


伊伏さんからの警告とほぼ同時に私を取り囲む無数のダイナマイトプランツ。その場を離れようにも地中から生えた蔓が脚にまとわりつきそれを許さない。左右からの攻撃に気を取られて足元の確認が疎かになっていた。ディア=ボロス状態からグラ=ボロス状態へと切り替えて防壁を作るが、一つだけ爆散したその植物の種が防壁を難なく突き破り脚を掠めていく。グラ=ボロスはたった一つの攻撃で壊されてしまった。残る種は十個以上。


今にも爆発せんと膨らむ全てのダイナマイトプランツを業火が包み灰と化す。先輩かローズを屠った後直ぐに切り替えし借火尽鬼の炎の刃をこちらに向けて飛ばしていた。焼けた断面から何事もなかったかのように再びあの種を作り上げていく。その隙に逃げたかったが足に絡みつく蔓が腰のあたりまで上がってきて抜け出すことは困難となっていた。こんなことならトレイス体をもっと鍛えておくんだった。


その間にも伊伏さんは植物を焼きながら距離を詰めていて、身動きの取れない私に手を伸ばす。その手を掴んだ瞬間に"私達"の身体は繋がった手の先から順に凍り付いていく。


「チッ。やっぱりそういうことか。」


何が起こったのかを理解するよりも早く全身を氷が巡る最中、伊伏さんのその言葉だけが耳に残ったまま意識は永久凍土の中へと閉じ込められた。

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