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正暦保全者  作者: あまみ
エピソード名"埋葬される小さな魂"
32/64

保全記録"承天寺タカ丸"

「強そうなのがあっちに行ったか。何だよ…俺は子守でもしてろってか。」


敵は踵を返して俺らの方へ一度開いた間合いを詰めてくる。それに合わせて俺らも一歩ニ歩と後退する。


「儂が背を向けて離れたときは追ってこなかったくせに今度は距離を取るんだな。」


ニヤリと笑いながら自身の胸を右手で貫く。この雨にも負けない勢いで裂け目から血が流れ落ちる。裂け目から引き抜かれた手には端が鋭利に尖った骨刀が握られていた。


「老体には堪えるな。」


そう呟く奴の胸を見るとさっきの裂け目は黒い糸で縫合されて血はピタリと止まっていた。敵は転天に狙いを定めると間合いを一気に詰めその太い骨刀を振り下ろす。


「おい、タカ丸!早くしろって!!」


分かってる、分かってる。今やろうと思ってたトコ。


「"お前のモノは俺のモノ(ベストフレンド)"」


敵の骨刀を転天の手に握られた"斬波乱"が受け止める。代わりに俺の手には細っこい"呑楽喰楽千鳥"が握られていた。やっぱり斬波乱の"能力"は発動しないか…。それを見て笑みを浮かべるジザリ。


───っ!


肩に走る激痛。さっきの犬が飛びつき肩に牙を立てていた。クソっ。まだいたのかよ!追撃をかけるように敵が新たな骨格獣を放つ。


「マジ!?」


思わず漏れ出る心の声。さっきまでの犬とは違って太く大きなその体。獲物を刈り取る二本の鋭い牙。サーベルタイガーか?考える間もなくその骨格獣は襲い掛かってきた。


「まっ、関係ないけどね。」


重くて両手じゃないと支えきれない斬波乱を手放した俺の手に握られた呑楽喰楽千鳥が勢いよく空を駆け巡る。その太刀筋は迫る骨格獣と肩に噛み付いた獣を打ち消しその刀身に朱色の光を宿す。


「だいたい五回くらいかな?そんじゃあ…お返しっ!」


雨の中を駆け抜ける紅い斬撃。ジザリは新たに作り出した骨格獣を放ちガードしようとしたが防ぎきれずに再度斬撃を喰らった。傷口から滴る血の雨。だがさっきと同じように黒い糸で傷口は塞がれて血は流れ出るのをやめていた。


「…なるほどな。だいたい分かってきたわい。"響命鏡(キョウメイキョウ)"」


何だよこのジジイ。余裕ぶっこいて分かったふりしてんなよ。


俺の時の瓦礫(クロノデブリス)"斬波乱"は能力によって具現化された対象を切りつけたときにその斬撃が能力発動者へフィードバックされる能力。

具現化されたものを動かすとき、それと発動者は目に見えないトレイスの紐で繋がってる。その紐を伝って切断時の衝撃波が送られる仕組みだから置いておくだけで後は自動で発動するようなものを切ってもその時は効果が現れない。

しかも敵の10m以内に入っちゃうとその特殊能力は消えてただのデカい刀に成り下がる。


転天の"呑楽喰楽千鳥"は具現化された能力を切りつけたときにその物体に込められたトレイスを奪う能力。少し時間はかかるけど刀が呑み込んだトレイスを飛ぶ斬撃として放つことも出来る。50cm程度なら一太刀入れるだけで消滅させるれる。便利だけど本体はただの鈍ら刀だから純粋な斬り合いには向いてないんだよな。


斬波乱の能力のカラクリに気付いたかと思って、一度距離を取り骨格獣を切りつけ敵の様子を確認するが確かにダメージは伝わってる。いや…気付いていたとしても連携を解除出来ないタイプの能力なのかもな。


刀に残った光を再度放つがそれは俺の方に向かって飛んできた。ギリギリで何とか紅い千鳥を避ける。攻撃が放たれた先に視線を向けると俺の姿が映る。鏡…か?


ってやべっ!


鏡に気を取られているうちに距離を詰めていたジザリが鏡を割って骨刀を振り下ろす。転天と刀を入れ替え斬波乱でそれを受け止める。周囲を取り囲む唸声。さっきのサーベルタイガーが六体に増えて俺を狙っていた。


「どうした小僧?さっきみてェにお友達と武器の交換会はしないのか?」


何だこいつマジウゼェな!


「転天フォロー!」


へいへい分かってるよー、気の抜けた返事と共に骨格獣を仕留めていく転天。


クソっ。これだけ間合いを詰められちゃ能力どころか満足に刀も振れねぇ!


能力を使用し転天と刀を入れ替え、敵に向かって刀を振り抜いた。


「気でも狂ったか?そんな鈍らで…。」


相手の身体を穿つ一撃。俺の手には斬波乱が握られていた。敵は大きく吹き飛び元いた場所へと濡れた芝生を滑っていく。


"お前のモノは俺のモノ(ベストフレンド)"は交換する前の物が持つ力を、交換後の物と置き換えて交換する。何秒前の動きから交換するか考えなくちゃいけないから難しくて上手くいかないことが多いけど今回は上手くいったな。


「おいおい。小さい成りして頭使うことも覚えてるようだな。」


弾き飛ばした先から届く声。その身体を見ると恐竜の頭骨らしきものが胸のあたりで形を崩しているところだった。


「いくら傷を治せる儂だって真っ二つにされたもんじゃあ治せんよ。」


危機感など感じないかのように卑しく笑い俺らを見る。やっぱあの回復能力は無限じゃないのか。


「転天行けるか?」


「当たり前じゃーん。」


「まだそんな目をしてやがんのか。気に入らねェな。儂はお前らの子守はもう飽きた。ほらよ、こいつらに遊んで貰いな。ガキは動物好きだろ?」


放たれたのは恐竜にもイルカにも見える左右のヒレを動かし宙を泳ぐ水生生物三匹、サーベルタイガー十匹だった。


「じゃあな。儂はガキはガキでもお前らみたいな生意気なガキには用はねェんだよ。」


そう言ってジザリは俺らに背を向けてフラフラと歩いていく。クソっ。あの子も師匠も危ねェ!早く行かねぇと!


「タカ丸、いつもみたいに泣いて駄々こねなくても動物園なら後で俺が連れてってやるからここは早く済まそうぜ。」


転天はそう言って悪戯な笑顔を見せる。こいつこんな時までふざけやがって…。口喧嘩で俺に勝てると思うなよ?


「無理すんなよ転天。泣いて駄々こねなくても後で博物館行って恐竜の化石見せてあげるっての。お兄ちゃんが付いてるから安心しろよな。」


泣いてねぇしテメェ俺の兄ちゃんじゃねぇだろ!


そんなツッコミを笑い飛ばし襲いかかる獣達を迎え撃った。

時の瓦礫の(クロノデブリス)保管箱(ファイル)


【曲名】

斬波乱(ザンバラ)

【創造地点】現位置換算済

正暦分岐点 1485.11.18

モンゴル アルハンガイ県 チョロート郡 "ツォグト・ハイルハニイ・ドゥガン地区"

エピソード名 "疾風怒濤"

【所有者】

承天寺タカ丸

【効果】

刃長3尺3寸(約100cm)の大太刀を具現化させる。具現化された対象を攻撃した際、その斬撃が能力発動者へフィードバックされる特殊能力を有する。具現化されたものと能力発動者を繋ぐトレイスの紐を介して切断時の衝撃波が送られる仕組みのため、自律発動型の対象を攻撃しても伝播効果は現れない。敵の10m以内に入ると特殊能力は消滅する。


【曲名】

呑良喰楽千鳥(ノラクラチドリ)

【創造地点】現位置換算処理済

正暦分岐点 0811.09.17

日本 京都市 左京区来迎院町 “三千院”

エピソード名 “仮面を付けた参拝者”

【所有者】

髙ノ宮転天

【効果】

刃長1尺7寸(約51cm)の寂れた小太刀を具現化させる。その刃長を基準とし、時の瓦礫の能力により具現化されたものを切断した際、それに込められたトレイスを刃身に吸収させ切りつけた対象を消滅させる。溜めたトレイスは柄から切先にかけて刀身を淡く白い色へと染めていく。その刃長を基準とし、具現化された物がそれと同じ程度のものであれば一太刀で消滅させることが可能。大きくなるに連れ消滅までに必要な太刀筋の数も増加する。一太刀の基準もまたその刃長を元としそれを超えなければ一太刀と数えられない。


裏面解錠(リメンカイジョウ) “朱朱翔千鳥(アシカケチドリ)

溜めたトレイスが刀身を切先まで白く染めると刀身が赤く変化し、そのトレイスを鳥型のエネルギー弾として放つ。攻撃を放つほど刀身を染める赤いトレイスが目減りしていき、全て打ち終わると始まりの状態へと戻る。刀身が赤く染まっている間は対象を切ってもその物のトレイスを吸収することは出来ない。


【曲名】

お前のモノは俺のモノ(ベストフレンド)

【創造地点】現位置換算済

正暦分岐点 2007.07.17

オーストリア ニーダーエスターライヒ州 シュヴェヒャート "ウィーン国際空港"

エピソード名 "16:30発パリ行き"

【所有者】

承天寺タカ丸

【効果】

自身が持っている物と、認識した物の位置を入れ替える能力。交換前の物が持つ運動エネルギーを、交換後の物が持つ運動エネルギーに置き換えて交換する。(木の枝を地面へ向かって振り下ろして地表まで1cmの時点で能力を発動し大矛へ交換した場合、最初から大矛を振り下ろしたものとして運動エネルギーが変換される。)


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