凸る魔学者
「……」
「……」
“カリカリカリカリ…”
黙々と溜まった資料を処理していく。
未だにミランダと和解はできていない。
ぎこちなさは健在だ。
だが、それでも仕事に差し障りはない。
やはり彼女は有能だな…
これまでと同じペースで溜まった資料を処理していく…
…まったく…
これでは深く気にしているのが俺だけのようだな…
“コンコン”
「ん…?」
色んな想いに耽りながら書類の整理をしていると、扉をノックする音が鳴った。
「王様ー紅茶とお菓子をお持ちしましたー
」
どうやら、メイドのアーリャが来たようだ。
「構わん、入れ」
「失礼しますっ」
「…し…失礼しますっ」
…
…はぁ?
「おい、待てアーリャ」
「はっ…はいっ?」
「……何故、マーレもおるのだ?」
「ん…あっ…ぁぁー…ぇ…えぇとですねぇ…」
アーリャの様子から、どうやら見間違えでなかったと理解できた。
ふぅ…
見間違えでなくて良かったな……
また働きすぎだとシスターエボラに説教され…
いや、見間違えでも問題だったわ。
「あっ、それは私がお願いしましてっ…!」
庇うように前に出るマーレ。
「…何?」
「…その…ぉ…お仕事が溜まってしまったのは、私達が来た事も原因だと思いますので…その…お手伝いを…」
「「…」」
もじもじと、申し訳なさそうに話すマーレを前に、俺達は声を出せなかった。
…
…良い子すぎない?
「…ぇ…えぇとだな……確かに否定出来ん部分もあるが…その…結果、自国内の問題であって……マーレよ、其方が気にする事は何も」
「ッ…!」
「…ぅ…」
マーレの真剣な眼差しに思わず言葉に詰まる。
いや、忠臣すぎるだろ…
ルキアーナめ、良い従者を見つけよっ…ん?
「…そういえば、ルキアーナはどうした?」
「あっ、ルキアーナ様でしたらシスターエボラと一緒に」
「…ふむ…」
……なるほどなるほど…
「…あッ!?でも何もしていないとかではなくてですねッ!!」
ルキアーナが何もしていないわけではないと必死に弁護士出すマーレ。
…
…やれやれ、そんなつもりはないんだがな…
「…ふっ…落ち着け、マーレ。問題はない、彼奴の事ならよくわかっておる……シスターエボラと積もる話をしているだろうが…彼奴は彼奴なりに手伝っておるだろうよ」
久しぶりの再会だからな、積もる話もあるのは仕方ない。
それに、彼奴はじっと座ってるなんぞ性に合わない奴だからな。
「…ルドラ王は、ルキアーナ様の事をよく理解されておられるのですね」
「…古い付き合いだからな……根っこの部分を知っておるだけだ。時間は経ってるとはいえ、人の根っこはそう変わらん………しかし、客人である其方らを働かせるなど…」
…国として、あまり良くないんだがなぁ…
「…っ…!」
しかし、マーレの表情は変わらなかった。
「……引く気はない…といった感じ…だな」
どうしたものかと頭をかく。
そこへ、様子を見ていたミランダが発言した。
「…我が王よ、ボランティアと考えれば?。今回は事が事ですし…」
…確かに…
件の聖女絡みもある…
それに、彼奴にとって故郷でもあるからな…
多少の行為もなんとかなる…か…
「…………まぁ…そう言う事なら…」
「ありがとうございます!」
「良かったね、マーレちゃんっ」
「はいっ…!」
笑顔で言葉を交わすマーレとアーリャ。
…ふむ…
「…お前達、そんな仲が良かったのか?」
「いえっ、ついさっき会ったばかりでしてっ」
…すぐさま意気投合したと言うわけか…
…女……いや、子供の適応力は凄まじいな…
「…まぁ、邪魔にならなければよい…だが無理だけはするなよ?」
シスターエボラがいたら“どの口が言いますかっ”と言われそうだが、流石に言っておかねばなるまいて。
「「はーいっ!」」
と同時に返事をして、持ってきた茶菓子を綺麗に並べてくれるとそのまま一礼して部屋を後にする2人。
…ふむ、やはりマーレは優秀だな…
教会でも同じ事をしているのか、手つきが慣れていた。
メイドのアーリャと互角ぐらい…
…まったく…優秀な人材ばかりで羨ましいものだな…
…
…さて…
「…ミランダよ」
「はい、我が王」
「この場合なんだが……客人に手伝いを許可してしまったアーリャに、メイドとしての自覚が足りないと考えるべきか?…それとも、年相応の友が出来たと喜ぶべきか…」
「………注意は必要でしょうが、基本後者で良いと思います…普段から落ち着きがないとはいえ、アーリャはしっかり働いていますし………なにより、少し子供らしい生活をおくらせた方が良いのではと…悩んでおりましたので」
「…だな…」
アーリャもアーリャで“色々”あった。
…あぁも、子供らしい表情を見せるとは…
マーレには感謝だな…
「……さて、温かい紅茶だからな…冷めないうちに」
「おっ邪魔しまーすッ!」
「ぶふッ…!」
“ドンッ!”
紅茶を飲もうとカップに口をつけた瞬間、部屋の扉が乱暴に開かれた。
「ごほッごほッッ!?」
「わッ我が王ッ…!?」
変な場所に茶が入ってしまい思わず咳き込む俺と、慌てて駆け寄るミランダ。
「…ありゃ?、どうしたの王様っ?」
キョトンとした表情でこちらを見るマデーリア。
「ゴホッッ……ぁぁっ……貴様がいきなり入ってきたからむせたのだッ…」
「ありゃ、ごめんなしゃいっ」
素直に謝るマデーリア。
…普通の王なら不敬罪で殺されてるぞ…まったく…
「………はぁぁぁ……………ん?」
文句の1つでも言ってもバチは当たらないだろうと、一息ついてからマデーリアの方を見れば…何やら見慣れないものが…
「…」
「…おい…その脇に抱えてるのは…」
「あぁっ、ちょうど此処に来る途中の廊下で見かけてね〜、ついっ」
テヘッと舌を出すマデーリア。
俺は思わず、手で顔を覆った。
「…はぁぁぁぁぁ…」
ため息しか出ないとはまさにこの事だ。
次から次へとめんどくさい問題を持ってくるな此奴らはっ…
「…おい、大丈夫か?」
「…は…はぃ…」
何とか無事そうだな…
出来ればこうも早く再開はしたくなかったものだ…
何故なら、今抱えられているのは…
先程アーリャの手伝いに来たマーレなのだから…
「…とりあえず、マデーリア。説教するから正座だ」
「えぇ〜」
「えぇ〜ではないっ!」
…何度も言うが…何故、俺の周りには能力値が高くて一筋縄ではいかんやつばかりなのだ…まったく…




