平凡王はただ問題を切り出し対処するまで
「……」
ただただ唖然としているな、この若造は…
まぁ、どうでもいいんだがな。
俺は、俺の仕事をするだけだ。
「…すまんが、資源の活用は後回しにしてもらえるか?。先に話しておきたい事がある」
「ん…何や、あんたはんが話切り出すなんて珍しいねぇ」
「…普段は必要がないから黙っているだけだ」
「今回はあるっていうん?、それはそれは…ふふっ…平凡王はんがどないな話するんか楽しみやわぁ」
クスクスと、手を口に当てて笑う女狐。
本当に楽しみで笑ってるからたちがわるい…
「…平凡王?」
さっきまで、唖然としていた若造の声に力が戻ったみたいだ。
まぁ、平凡王なんてあだ名だからな。
自分より下の存在…
やられっぱなしだった自分が優位に立てる奴が現れたと思ったんだろうが…
正直、相手にするつもりなどないがな。
「先日、我が国の領地内…森の中でモンスターが暴れた。危ないところだったが、これらを無事討伐したが、この事で分かったことについて報告したい」
「…ふんっ、モンスターなんかに手こずるような王の報告に意味なんてあるのかねっ?」
案の定、チャチャを入れてきたが…まじでどうでもいいわ。
「そのモンスターに、そちらの国は多大なる被害をもたらされたと記憶しているが?」
「…ッ…」
「細かな部分は省くが、現れたモンスターは2種。直径2メートルを超える拳を持ったナックルコングと、そのナックルコングと手を組み、サポート役に徹していたナイトメアミストだ」
「「「…っ…!?」」」
「…はっ、それがなんだって言うんだ」
苦し紛れのセリフだが…
…もう少し、周りの王達の反応から理解してもらいたいのだな…
「では聞こう、ドマンド王国の王よ。ナックルコングの成体に当たる基準は?」
「はッ!?…えっ…えーとっ…」
いきなり話を振られて慌て出した…
…いや、動揺するなよ…
「……そっ…そんなの…」
…2メートルと言って周りが驚いておったのだから、分からずとも1メートルと言えばよかろうに…
「…そこの女王よ、わかるか?」
「基本は拳の大きさが1メートルぐらいで成体って言われとるね。何でかと言えば、誤差はあれど1メートル以上の成長は滅多に見られんかったから…やったかね?」
「あぁ、実際は少し異なるがな…ナックルコングの拳は、ナックルコング自体の体の大きさに影響する。1メートルで成体とされているのは、ナックルコングの基本的なサイズが1メートル程までしか拳を成長させないからだ」
「…なるほどねぇ」
「今回、現れたナックルコングの拳サイズは約2メートル…誤差なんてレベルではないのが明らかだ」
「た…たしかに珍しいかもしれないがっ…それでもいないというわけではないんじゃっ」
「…少なくとも、過去10年間の間にナックルコングの種において、拳のサイズが1メートルより大きくなったという記録はない」
「…かなり…いや、非常に珍しい個体が現れたというわけやな…」
「…確かに、我が国においても聞いたことありませんな…」
「…ルドラ王よ、ナックルコングよりナイトメアミストについてお聞きしたい……あのナイトメアミストがサポートを行っていたのですか?…」
「あぁ、その通りだ」
「……具体的には…?」
「防御役に徹していた。ナックルコングに攻撃面を任せ、自分はナックルコングに害をなそうとする者に対して、恐怖の霧を浴びせて妨害していた」
「…何と…っ…」
「…確か、其方の国の周りには…」
「…えぇ、ゴースト系の多くのモンスターが生息しています…」
「…その様子から察するに…やはり、ナイトメアミストも特殊な個体だったみたいだな…」
「……おそらくは…」
「なっ…何が特殊だとっ……別種のモンスターだろうと、互いに役割分担するなどありえない話ではっ」
「…これが、同種のナックルコング同士でしたらあり得る話でしょう……他のモンスターも、可能性は低いでしょうが……ですが、ゴースト系のモンスターなのはおかしいっ…」
「…何がおかしいとっ…?…モンスターはモンスターだろっ」
…発言する姿勢は認めんこともないが…
こうも他国の王を前にして、無知を曝け出すとは…
「…ゴースト系のモンスターはなぁ、生きてる生き物に対して好戦的や。そりゃぁ、生きてる立場が羨ましゅうてしかたないんやろね…そんな犬猿の仲な存在が強力しあってた…」
「…さらには、ナイトメアミストは上位のモンスターだが、知能レベルは低いとされている…元々、生物とは言い難い魔力と負の感情の塊ですからね……そんな存在が、ナックルコングと手を組んだ方がいいと判断した……にわかに信じがたいですが…」
「どれだけの異常事態か、理解できたか?。ドマンド王国の王よ」
「…っ…」
「…で、平凡王はん。原因はわかっとるん?」
「…明確な理由は調査中だ。だが、心当たりならある」
「…心当たり?」
「…この話を進めるには確認が必要だな…なぁ、ドマンド王国の王よ?」
「…えっ…?」
「…原因を調査するべくナックルコングたちがどこからきたか調べた…結果、ドマンド王国方面から来た事が判明した」
「なッ!?」
「まぁコレだけなら普通のことだろう。生態系を完全に把握などできんしな……だが、そちらの地域付近で生まれたのは確かだ。だからこそ、付近に何らかの発生原因がないか調べたが……不可解な状況を確認した……問おう、ドマンド王国の王よ。何故、ドマンド王国周辺のモンスターの数が少ない?」
「「「ッ…!?」」」
「…そ…それは…安全にするために討伐を…」
…赤か…
「何と嘆かわしいっ…先代の王は何を教えていたのだっ…」
「…まさか生息数を意図的に減らすとはッ…」
あまりの無知ぶりに他王達も頭を抱え出す。
何故頭を抱えているのか分かっておらんな…
「…更に聞きたい事としては、勇者…いや、元勇者の事についてだ。どうして、元勇者が犯した愚考により壊滅した村跡付近に、供養のための墓地を作っていない?」
「…そ…それはっ…」
「…さらに疑問点もある。如何に勇者といえど、国付近の村壊滅や国の大切な物資を長年好きに使われていたというのは国のレベルを疑われることだっ!。さらにっ、多くの民の命が失われたのに供養せねば、どれだけのゴーストが生まれるかわかるものであろう!」
「…わ…私は王だっ…全て大臣達に任せていたことで、私はしらなっ…」
……赤…つくづく情けない若造よ。
「…平凡王はん、もうまわりくどいんは止めたらどないどす?。もう、十分なんでっしゃろ?」
…やはり気がつくか…
「…ぁぁ、さらに叩けば出てきそうではあるがな…」
「…なっ…何がっ…」
「…平凡王はん、さっきからずぅぅっと気になってたんやけど。その光アイテム何なん?」
女狐が、テーブルの上に置いた瞳型の手鏡を指さした。
「…これは、最近手に入れたアイテムでな。真偽がわかるアイテムだ」
「ほぉ〜、真偽が」
「真実を言っていれば青くなるが、嘘を言えば赤く光る代物だ」
「そういえば…確かにさっきから青や赤で光っておりましたな」
「あぁ、元勇者の罪や我関せずといった内容の時は赤く光っていたな…ドマンド王国の王よ?」
「…ッ!?」
「つまり、貴様は元勇者に対して嘘の報告を行っておると言うことになるが…」
「…でッ…出鱈目だッ!私は嘘などッ…」
「ならば、問わせてもらおう!!。勇者ユーリが多くの民の命を奪ったのは事実かッ!?」
「…ッ…あっ…あぁっ、その通りだっ」
真実の瞳は青く光る。
「そんな大量殺害を、最近まで全く知らなかったのかっ!?」
「…し…知らないっ…!」
真実の瞳は赤く光る。
「勇者ユーリに、非道な行いをするよう命じた者がいたっ、そうではないのかッ!?」
「しッ知らないと言っているだろう!何をもってそんなことをっ…」
真実の瞳は赤く光る。
「その命令を行なったのは貴様ではないのかッ、ナーレス王!!」
「ちッ違うッ、私は命じてなんかいないッ…!」
真実の瞳は赤く光る。
完全に黒…
というか、この態度が既に答えになっているな…
「…かつて、ドマンド王国は多額の借金があったんやけど、その借りた相手国が戦を始めた際、これを踏み倒した…これ真実」
いきなり女狐が話しだす。
その言葉に反応し、真実の瞳は青く光った。
「…どうやら、本物みたいやね」
「鑑定魔法を使用してもかまわんぞ?」
「いらへんよ。他ならぬ平凡王はんが用意したもんやからね…皆はんもかまへんね?」
一斉にコクリとうなづく。
他の王達も異論はないらしい。
パンパンっと、女狐が手を叩くと何処となく現れた衛兵達がナーレスを押さえつけた。
「はッ…放せッ!私を誰だとッ!?」
「少し黙り?」
「…ひッ…!?」
女狐から浴びせられる膨大な魔力にびびるナーレス。
思わず俺も身構えてしまうほどだっ…
「…ええか?、うちらは聖人やない…清く正しくなんて真っ当な生き方ができんくらいの謀略蔓延る世界におる……腹ん中にドス黒いもん抱えててもおかしくあらへんよ?……でもなぁ、自国の民を蔑ろにするのはあかんわなぁ」
「……ッッ…」
「新参者やからねぇ。少しくらい生意気な態度には目を瞑るつもりではおったけど……民の暮らしや命を第一にするっていううちらの決め事……いや、民を導く王として当たり前の事を理解できてへん……いくら新参者でも、知りませんでしたなんて通じんからね…覚悟出来とるなぁ?…連れてき」
鋭い目つきで兵達に指示を出す。
あまりの恐怖から、声を出せず失禁した哀れな王はそのまま連行されていった。
「…ふぅ、これでひと段落やねぇ〜」
「…もう少し荒れるかと思っていたがな…ドマンド王国の兵達は?」
いくらあんなのでも王なのだから助けにきそうだが…まさかそこまで嫌われているのか?
タイミングよく、他の兵士が入ってきては自分の王に対して報告を行なっていた。
「…ふむ…どうやら、この事態を見越した者がおったようだな」
部下の兵から事情を聞いた他王が答えた。
「ほぅ…なかなかの切れ者がいたようだな」
「…だが残念だな…あんなトップでは…」
「どうやら、先のオークとの戦いにより軍と新しい勇者が深く傷ついた事で、かなり責められておったらしい……この会議で、良き結果を出そうと必死になっていたから問題を起こすのではと予感していたらしい」
「なるほど…だからあの演劇のような話し方をしていたわけか……」
「何、事の次第が明らかになれば、あの王家は終わりであろう。そこからどうなるかは、国民次第だが…」
「あっ、その事でやけど…ドマンド王国はウチがもらってもええかいな?」
「…はぁ?」
「漁夫の利って言われたらなんとも返せんねんけどねぇ…あの国には、過去にだいぶ迷惑をかけられたから、そのカリを返してもらおうと思ってね」
「…まさか…さっきのドマンド王国が踏み倒したって話は…」
「ふふっ…まぁご想像にお任せするわ。とりあえず、酷い目に合わせる気はあらへんし、新たな指導者が現れれば潔く身を引くつもりや」
「…まぁ……支援国として活動していただけるなら…でもいいんですかな?」
「ウチとしても、真っ当な国になってくれれば利益になるし…それに、ウチの国としても何処かで一区切りさせな納得できんからねぇ」
…嘘つけ、国家を形作る段階から潜り込めるなど、どれだけ自国にとって有利な状態にできるか理解しておるくせに…
「それに、勇者はん…あっ…この場合、元勇者はん?…ややこしいなぁ…とにかく、名誉回復のためにも見つけてあげんとなぁ」
「…それなら問題はない」
俺は追求のために用意していた道具の一つ、折れた勇者ユーリの聖剣を机の上に置いた。
「…それ…」
「…勇者ユーリはもうこの世におらん。俺が断罪した」
「…どゆことっ?」
「…簡単にまとめるが…ある時、勇者ユーリはこの真実の眼というアイテムにより、無実の民に手をかけたことを知ったのだ…その後、パーティーを離れ俺の国に来た……そして、ナックルコングとナイトメアミスト討伐に尽力し、死を望んだ」
「…それは……」
「…子供らを助けてくれたが……自分の罪は消えないから、褒美に断罪してくれと言われてはな……まさか俺も、恩賞として死を与える事になるとは思わなかったがな……」
「…説得はできなかったのか?」
「…出来たかも知れん。だが、その闇は深かったからな…生半可な言葉では救えなかったであろうよ」
「……」
重苦しい空気が会議室内に漂う。
「…なんともやりきれへん結果やなぁ…」
「仕方あるまいよ……とにかく、俺の話は終わりだ。緊急事態の話がなければ俺はこれで失礼する」
「…あらっ…資材については?」
「好きに話し合えば良い。俺はいらんからな……むしろ、有り余る材など争いの的だ」
「…相変わらずやねぇ…あんたはんは…」
「あいにく、俺は平凡王なんでな…自国のことだけで精一杯だ。他国の事など知らん」
それだけ言えば俺は会議室を後にした。
「…まったく…掴めそうで掴めんお人やわぁ……でもまぁ…いずれは…」




